著者
田村 誠朗 北野 将康 東 幸太 壷井 和幸 安部 武生 荻田 千愛 横山 雄一 古川 哲也 吉川 卓宏 斎藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 角田 慎一郎 細野 祐司 中嶋 蘭 大村 浩一郎 松井 聖 三森 経世 佐野 統
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.450-455, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.
著者
三森 経世 細野 祐司 中嶋 蘭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.488-494, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

多発性筋炎および皮膚筋炎(PM/DM)患者には種々の細胞内・核内抗原を対応抗原とする多彩な筋炎特異的自己抗体が検出される.PM/DMにおける自己抗体の検査は,筋炎の診断のみならず臨床特徴・経過・予後を予測し,治療方針の決定において極めて有力な情報となる.特に抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体および抗CADM-140抗体は間質性肺炎の合併が極めて高率である.PM/DMに合併する間質性肺炎は頻度も高く,筋炎とともに治療介入の対象となることが多いが,その予後はこれらの特異自己抗体の種類によって大きく異なるため,治療介入前にできる限り自己抗体を測定することが望ましい.抗Jo-1抗体以外の筋炎特異的自己抗体は,現在のところ一部の研究室レベルでしか測定することができないが,ルーチンの測定法の開発がわが国で進行中である.