著者
佐野 統
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.2888-2901, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

NSAIDsは関節リウマチ(RA)治療において,早期から疼痛緩和のため補助的に使用される.関節破壊抑制作用はないが,ADL(activities of daily living)およびQOL(quality of life)を改善・維持させる.抗リウマチ薬や生物学的製剤などの効果が発現するまでの橋渡し,DMARDsの効果が不十分な場合の補助薬として使用される.疾患活動性が抑えられれば,長期連用はできるだけ避け,減量,中止することが大切である.消化管障害,腎障害,心血管障害などの多彩な副作用が存在する.COX-2阻害薬は消化管障害が有意に少ない.NSAIDsの特徴,薬物相互作用などを勘案して症例に応じた適切な薬剤を選択する.
著者
田村 誠朗 北野 将康 東 幸太 壷井 和幸 安部 武生 荻田 千愛 横山 雄一 古川 哲也 吉川 卓宏 斎藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 角田 慎一郎 細野 祐司 中嶋 蘭 大村 浩一郎 松井 聖 三森 経世 佐野 統
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.450-455, 2017 (Released:2018-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.
著者
芝本 真季 東 直人 谷 名 松井 聖 東 幸太 槙野 秀彦 北野 将康 佐野 統
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.211-216, 2019-09-30 (Released:2019-11-02)
参考文献数
13

68歳,女性.全身性強皮症(SSc)に伴う偽性腸閉塞で入退院を繰り返していた.メトロニダゾールで偽性腸閉塞の症状,X線所見は改善したが,約3ヶ月後,呂律困難や小脳失調症状が出現し,MRI所見などからメトロニダゾール脳症と診断された.SScに伴う偽性腸閉塞に対して抗菌薬による腸内細菌の過剰増殖の制御が有効とされるが,メトロニダゾール使用時は脳症を発症する可能性があることを念頭に置かなければならない.
著者
佐野 統
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

慢性関節リウマチ(RA)の病態における視床下部-下垂体-副腎(HPA)系の異常を調べるため、RA患者およびモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎を用いてcorticotropin-releasing hormone(CRH)やβ-endorphinの役割を検討した。1)RA患者滑膜(表層細胞、炎症性単核球、フィブロブラスト様細胞、血管内皮細胞)においてCRHとβ-endorphin蛋白の著明な発現を免疫染色法を用いて証明した。2)RA患者滑膜ではCRH及びβ-endorphin蛋白は変形性関節症(OA)患者に比べ、有意に強い発現(P<0.01)がみられた。3)RA患者滑膜ではCRHmRNAが滑膜表層細胞、炎症性単核球、フィブロブラスト様細胞、血管内皮細胞において強く発現していた。一方、OA患者滑膜では表層細胞において弱い発現がみられるのみであった。4)RAのモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎でも炎症の増強に伴い滑膜、軟骨、周囲皮膚においてCRH及びβ-endorphinの発現増強がみられた。5)グルココルチコイド投与によりモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎と同時にCRH及びβ-endorphinの発現も軽度抑制された。6)抗CRHまたは抗β-endorphin抗血清をAlzetポンプを用いて2週間雌Lewisラット腹腔へ投与するとアジュバント関節炎が抑えられた(約40-50%)。7)抗CRH抗体投与により、免疫染色では関節滑膜や軟骨におけるCRHの発現は抑制されていた。8)抗β-endorphin抗体投与により、同様に関節滑膜や軟骨におけるβ-endorphinの発現は抑制されていた。以上より、CRHやβ-endorphinは様々な免疫作用と同時に、炎症惹起作用を有すると考えられ、RAの病態に強く関与している可能性がある。今後、RAにおけるHPA系の機能異常の解析が進むとともに、その機能修復によるRA治療という新しいアプローチが試みられるものと考えられる。
著者
佐野 統
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2214-2219, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

リウマチ性多発筋痛症(PMR)は高齢者に発症する体幹近位部の上肢帯,下肢帯,こわばりを主訴とする原因不明の炎症性疾患である.側頭動脈炎(TA)を合併することがしばしばある.特異的な臨床所見に乏しいため,鑑別診断に苦慮することも多いが,TAの合併がない場合は低用量のステロイドが著効する予後良好な疾患である.赤沈値の高度の亢進とCRPの上昇がみられ,自己抗体は陰性である.筋電図や筋生検像に異常はみられない.TA合併例では大量のステロイドが必要である.ステロイド抵抗例には免疫抑制薬やTNF-α阻害薬が有用である.
著者
常徳 千夏 松井 聖 斉藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 北野 将康 橋本 尚明 角田 慎一郎 岩崎 剛 佐野 統
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.189-197, 2015-09-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:関節リウマチ(RA)の治療は近年大きく変化しており,抗リウマチ薬に加え生物学的製剤が7種類使用できるようになった.このため,相互作用や副作用管理が急務となり.医療師全体で取り組む事が重要となってきている.今回,調剤薬局薬剤師の関わりの実情と問題点を把握し,今後の薬剤師の役割の方向性を考えるためアンケート調査を実施した. 対象:兵庫医科大学病院外来通院中RA患者のうち,平成25年3月~5月に当薬局に来局,本調査への参加に同意した70名を対象にアンケート調査を実施した. 方法:日常診療実態下における非介入試験 ①日常生活動作 ②関節リウマチ治療状況 ③精神的影響に関する状況のアンケートを実施した. 結果:メソトレキサート(MTX)に関しては,効果の理解度は86%と高かったが,用法の不便さを訴える回答がみられた.生物学的製剤については,注射へのストレスを感じないが67%で,効果を実感している回答も62%と半数を超えた.しかしながら,副作用への不安や,高額の医療費の負担の不安もあった. 結論:調剤薬局薬剤師として,MTXや生物学的製剤などの積極的な治療が必要な患者さんには,積極的に関わることで,個々の状況を聞き取り不安や問題の解決を目指すことにより,アドヒアランスの向上及び治療成功へのサポートを行って行くことが重要であると考える.
著者
松井 聖 吉川 卓宏 佐野 統
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.155-161, 2019-06-30 (Released:2019-08-22)
参考文献数
11

日本全体で高齢化が進んでいるが,RA患者は治療がよくなり,寛解に持ち込むことができるようになったため,生命予後がよくなっている.このため,RA高齢者の治療においてどのように行っていくことがよいか急務の課題と考える. 一方,高齢者の腎機能は,日本腎臓病学会から慢性腎臓病(CKD)のガイドライン2012が出されている.このデータからは,年齢別のCKDの頻度をみてみると,eGFR<60mL/分/1.73m2の割合は男性の場合,60〜69歳で約17%,70〜79歳で約28%,80歳以上で約45%,女性の場合は,60〜69歳で約16%,70〜79歳で約32%,80歳以上で約47%となっている.つまり,70〜79歳では3人に1人,80歳以上では2人に1人の割合で腎機能低下があり,腎機能を悪化させる薬剤が使いにくい現状があることを十分認識した上で治療を行う必要がある. 日本腎臓病学会の腎機能の悪い時の薬物使用のためにCKDのガイドライン2012では,クレアチニンクリアランス(Ccr/分)が>50と10〜50,<10と透析(HD)をしている区分になっている.RA治療薬をみてみると,Ccr/分が10〜50,<10とHDの区分で,使用できる薬剤はアダリムマブ,インフリキシマブ,エタネルセプト,トシリズマブ,サラゾスルファピリジンであった.メトトレキサートはCcr>50で専門医に相談となっている.2012のガイドラインであるので現在,使われている生物学的製剤,JAK阻害薬は含まれていない. また,我々も参加しているNinJaデータベースからの今年度の日本リウマチ学会の発表では,2012,2013,2014年の3年間登録された関節リウマチ患者のeGFR<30mL/分/1.73m2の群ではeGFR<60~100mL/分/1.73m2の群, eGFR<30~60mL/分/1.73m2の群と比較して,DAS28-ESR,DAS28-CRP,CDAI,SDAIのRA活動性指標において有意な低下を認めなかった.つまり,ステージG4(eGFR<15~29mL/分/1.73m2),G5(eGFR<15mL/分/1.73m2)CKD合併RA患者は活動性コントロールが困難である可能生が示された. これらの既存の報告を踏まえて,当科のデータを示しつつ,RA高齢者の腎機能とRA治療の薬剤の選択について討論を行いたい.
著者
常徳 千夏 松井 聖 斉藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 北野 将康 橋本 尚明 角田 慎一郎 岩崎 剛 佐野 統
出版者
The Japanese Society for Clinical Rheumatology and Related Research
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.189-197, 2015

目的:関節リウマチ(RA)の治療は近年大きく変化しており,抗リウマチ薬に加え生物学的製剤が7種類使用できるようになった.このため,相互作用や副作用管理が急務となり.医療師全体で取り組む事が重要となってきている.今回,調剤薬局薬剤師の関わりの実情と問題点を把握し,今後の薬剤師の役割の方向性を考えるためアンケート調査を実施した.<br>対象:兵庫医科大学病院外来通院中RA患者のうち,平成25年3月~5月に当薬局に来局,本調査への参加に同意した70名を対象にアンケート調査を実施した.<br>方法:日常診療実態下における非介入試験 ①日常生活動作 ②関節リウマチ治療状況 ③精神的影響に関する状況のアンケートを実施した.<br>結果:メソトレキサート(MTX)に関しては,効果の理解度は86%と高かったが,用法の不便さを訴える回答がみられた.生物学的製剤については,注射へのストレスを感じないが67%で,効果を実感している回答も62%と半数を超えた.しかしながら,副作用への不安や,高額の医療費の負担の不安もあった.<br>結論:調剤薬局薬剤師として,MTXや生物学的製剤などの積極的な治療が必要な患者さんには,積極的に関わることで,個々の状況を聞き取り不安や問題の解決を目指すことにより,アドヒアランスの向上及び治療成功へのサポートを行って行くことが重要であると考える.