著者
緒方 久美子 佐藤 禮子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.21-29, 2004-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, ICUに緊急入室した患者の家族員が表す情緒的反応を明らかにし, 家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方を検討することである. ICUに緊急入室した患者の家族員8名を対象に, 情緒的反応に関する内容について半構成的面接と参加観察による調査を行い,質的帰納的に分析し, 以下を明らかにした.ICU緊急入室患者の家族員の情緒的反応は,【先の見通しが立たない】,【医療者を信頼する】,【支えられている】,【負担に感じる】,【患者を守りたい】など, 17の主題にまとめられた. さらに, その意味の性質から,『回復の期待』,『医療への信頼』,『独りではない自分』,『課せられている自己』,『家族の絆』の5つの情緒的反応の本質が抽出された.家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方は, 家族員が回復の期待を持ち続けることができる援助, 家族員が医療への信頼を実感できる援助, 家族員が周囲の支援を効果的に使うことができる援助, 家族員が看病を長期的視野に入れることができる援助である.
著者
西尾 美登里 坂梨 左織 木村 裕美 久木原 博子 緒方 久美子 古賀 佳代子
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.23-28, 2018-05-19 (Released:2021-03-15)

福岡市の高齢者における地域の災害避難場所の認知について, 実態調査を行い, 独居高齢者への災害支援のありかたについて検討した. 地域包括ケアシステムと介護の啓発を目的とした集会の参加者258 名を分析対象とし, 基本属性, フォーマルな相談窓口の認知と活用の有無, 活用している相談窓口数, 地域の避難場所の認知, 楽しみの有無, 情緒的支援, 自尊感情尺度について調査した. 分析は同居群と独居群の2群の差のカテゴリ変数にはχ2 検定, 連続変数にはMann–Whitney U 検定行い群間差を検定した. その結果, 独居高齢者は同居者がいる高齢者より有意に高齢で, 公の相談窓口を知らず, 相談談窓口数が少なく, 避難場所を知らず, 楽しみを有さず, 情的支援を受けていなかった. 都市部における高齢者への災害支援を充実させるためには, 特に独居高齢者が情的な交流のある生活の中で, 楽しみながら社会活動ができる場づくりを行う必要がある. また, 災害支援の情報提供は,社会活動ができる場で行うことが有益であることが示唆された.
著者
緒方 久美 服部 朝子 杉浦 真希 森脇 典子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.116, 2007 (Released:2007-12-01)

〈緒言〉昨今、硝子体・黄班円孔の眼科手術において、SF6ガス及びairの浮力を利用し網膜の復位を目的に、術後3~7日間頭部安静をはかるために、腹臥位の保持が必要とされている。上記目的を受け、当病棟でも、眼科手術後はうつ伏せ枕(以下フェイスピローとする)を使用し安静保持に努めてきた。しかし、患者からは「息苦しい」「胸苦しい」「額の圧迫感がある」など苦痛の訴えが多く、安静保持の方法に問題を感じた。その為、看護師がうつ伏せ寝の実体験をすることで、患者の苦痛を実感した。そこで今回、フェイスピローの問題点を明確にし、改良型枕の作成と安楽物品の活用により、眼科手術後の安楽な体位を検討した為、ここに報告する。〈方法〉1)フェイスピロー(高さ7_cm_)使用後の意識調査 (対象:当病棟看護師11名、女性21~50歳、BMI18~23)2)フェイスピローによるうつ伏せ寝の場合の体圧測定(PREDIA 簡易体圧、ズレ測定器を使用)測定部位:額部、胸骨、右乳房、左乳房、腹臍高の5ヶ所で実施3)測定部位ごとに、夜勤の仮眠時間80分に1回ずつ体験する4)ベッドは患者と同じベッドを使用(パラマウントベッド KA―4150、マットレス KE-303厚さ80mm)5)改良型枕は従来の枕(フェイスピロー)の下に、通気目的のため網(30×40cm)をとりつけ、口元にあたる部分を一部カット、そこに籠を2つ結束帯で固定し高さ(籠の高さ6_cm_)を調整。また額部の圧迫を少なくするため、U字型(枕の厚さ6_cm_)で、スノービーズを入れた枕(以下U字型ビーズ枕とする)を使用。さらに、胸部にもU字型ビーズ枕(枕の厚さ9_cm_)を使用6)改良型枕とU字型ビーズ枕(額・胸部2ヶ所)の使用後、意識調査〈結果〉フェイスピローでは、息苦しさ、額部の圧迫感、胸部の圧迫感の順に苦痛があった。また、うつ伏せ寝ができたのは11名中10名、寝ることができたのは11名中3名であった。その理由としては「フェイスピローでは、頭の重さで枕が圧縮し、顔面がシーツについてしまい苦しかった」や、形はU字型を呈しているが「型くずれすることで口元が開き、顔が沈むために息苦しくなり眠れなかった」であった。改善点として、枕の高さ調整や、額への圧迫感の軽減が必要という意見があった。 改良型枕では11名中9名が使用感は、適当であり息苦しさなどの自覚症状はなかった。 改良型枕と安楽物品使用後に寝ることができたと自覚し、うつぶせ寝ができた時間は、15分以内2名、15~45分以内4名、45分以上5名であった。改良前後のうつぶせ寝には、苦痛の程度、体圧測定値、時間に差があった。〈考察〉フェイスピローの高さの調節による除圧と網と籠の工夫による通気性を考慮したこと、型崩れによる顔の沈みを軽減することで、息苦しさや圧迫による苦痛の軽減が図れたと考えられる。さらに、安楽物品として、額部・胸部にU字型ビーズ枕を使用することで「圧の分散」ができ自覚症状の軽減が図れたと考えられる。以上のことから、改良型枕とU字型ビーズ枕は、眼科手術後の安静保持における安楽な体位には有効であると考えられる。手術後の安静保持は、治療の効果を高め早期回復を促すためには不可欠である。今回の研究結果を日々の看護実践に活かし、今後も研鑽を積んでいきたいと思う。