- 著者
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緒方 修
- 出版者
- 沖縄大学地域研究所
- 雑誌
- 地域研究 (ISSN:18812082)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.63-69, 2012-03
沖縄は日本の人口のわずか1% (137万人)が住む最南端の島々である。そこに世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(2000年登録)がある。琉球王国はかつて東アジア世界と独自の交易を繰り広げた。その文化的・精神的影響は今に及んでいる。音楽や踊り、空手、衣服や焼物など独特の発展を遂げてきた。2010年には「組踊」がユネスコより無形文化遺産に登録された。講座「沖縄・世界遺産巡り」は、3年前から始まった集中講義である。タイトルの「巡り」には「巡礼」の意味を込めている。沖縄の世界遺産は9地域に散在している。北部が4カ所の城(グスク)、南部が首里城および近くの遺跡合わせて3カ所、および識名園(庭園)と斎場御嶽である。遠隔講義として約4時間の教材を作成した。学生はその講義をインターネット経由で見た後、教室での講義、そして各遺跡への視察と続く。講義が約4日、現地視察は最低でも3日間かかる。講師はオムニバスで世界遺産登録に直接携わった考古学者が中心だ。講座の背景となる文化について述べる。15世紀頃に始まった東御廻り(アガリウマーイ=東を廻る)は「巡礼」の始まりと言っても良いだろう。「朝の太陽は東の太陽の穴から出て、<太陽の道>を昇り、昼には天頂に達し、午後は太陽の道を下って西の穴に入る」これは東アジアの山地民の宇宙観だ。同じように古代の沖縄人は、太陽が昇る東の海の彼方に<ニライカナイ>という楽土がある、と考えた。太陽神への信仰だ。沖縄南部の東にある久高島こそ、ニライカナイに最も近い島ではないか。そう信じた歴代の琉球国王も島へ渡って祈った。沖縄本島で久高島に最も近い霊場が斎場御嶽(セーファーウタキ)である。現在では世界遺産の一つに登録されている。ここは琉球国第一の聖地として聞得大君(キコエオオキミ=国王の姉妹で最高の神女)が参拝し、さらに近隣の聖地を巡った。これらの場所には湧水や大木、川や岩がある。原初の信仰であるアニミズムに近い。ある所には水が湧き出し稲が育っている。そこは鶴が稲穂をくちばしにくわえて飛んできて落としたとされている。稲作の始まりと言い伝えられている土地だ。東南アジアにも同じような伝説がある。稲作がしやすいモンスーン地帯に共通する話だろう。久高島や沖縄南部には野生の稲が生えていた。最初に沖縄に漂着した人々はきれいな水が湧き出し、そしておそらくは野生の稲や果物が溢れていたこの土地に定着したのだろう。Okinawa was historically an independent nation called the Ryukyu Kingdom before 1879, which advocated proudly strong political, economic and cultural ties with China and Asian Continent. People in Okinawa, descendants of the Ryukyu Kingdom, have maintained its spirit. They have fostered its traditional music, dance, Karate, clothes, pottery and so on as outstanding culture. The World Heritage of the "Gusuku Sites and Related Properties of the Kingdom of Ryukyu" certified by UNESCO in 2000 and the Intangible Cultural Heritage of Humanity Kumiodori, traditional Okinawan musical theater, in 2010 are one of those regional properties developed through historical background of Okinawa prefecture. People in Okinawa have been confronted with political injustice for a long time. It may be a means of their living to cherish their own history and culture against such situation. The utilization of the World Heritage as regional properties could be a way to the approach toward regional revitalization. Okinawa University affirms its new declaration of the philosophy in the 50th anniversary of establishment in 2008, called "Advancing toward a future with local community". As the commits to pursuing the philosophy, the university offers several forums to students and citizens, such as "World Heritage Tour in Okinawa".