著者
山野 良一
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.24, pp.117-123, 2021-03-31

乳幼児を持つ世帯の保育利用および共働き割合の所得格差について、国民生活基礎調査の2 次データを活用し分析を行った。1998 年、2007 年、2016 年の3 年間の継時分析とし、乳幼児全体と3 歳未満児のいる世帯で分析した。結果として、かつて見られていた、低所得層と高所得層が中所得層と比べ、高い割合で保育を利用するというU 字型の傾向は、乳幼児全体でも3 歳未満児でもすでに見られなくなっていた。また、共働きの割合は、増加の割合に階層差が見られ、特に3 歳未満児では、低所得層が中高所得層に比べ、増加傾向が低いことが推察できた。3 歳未満児では、共働きの傾向と経済状況との間には、右肩上がりの直線的な関係が生じ、低所得層では共働きをする割合が中高所得層に比べ相対的に低くなっているという可能性を示唆していた。
著者
玉木 千賀子 たまき ちかこ Tamaki Chikako 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.19, pp.81-92, 2017-03-24

本研究の目的は,ヴァルネラビリティに対する意向確認のとらえ方を社会福祉制度の動向に沿って考察することである.生活保護法をはじめとする戦後の社会福祉に導入された申請・措置方式,社会福祉基礎構造改革以降,福祉サービスの提供方式として用いられている契約方式の下では,自らの社会生活課題に対する認識の乏しい人や申請・契約の能力が十分に備わっていない人が支援から取り残されるという課題が生じた.そのようなヴァルネラビリティに対する支援上の課題は,申請・措置方式の時から指摘されていたが,生活困窮者自立支援法の施行によって漸くヴァルネラビリティに対する支援システムが制度化され,意向確認とそれに基づく支援の取り組みがはじめられたところである.また,障害者福祉の領域では,障害者権利条約の批准,障害者差別解消法の施行等を契機に,障害の状態にある人の意思決定支援のあり方の検討が進められている.社会福祉はヴァルネラビリティに対する支援に本格的に取り組みはじめており,そのような状態にある人に対する意向確認のあり方の検討は,個人を尊厳するというソーシャルワークの価値の具現という意味においてとりわけ重要な検討課題である.
著者
玉木 千賀子 たまき ちかこ 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.18, pp.91-98, 2016-03-07

本論は,個人を固有の存在として捉えるというソーシャルワークの価値(個人の尊厳)に依拠したケアマネジメントのありかたを検討するための予備的研究である。ソーシャルワークのアプローチにおいて人を中心としたアプローチとして位置づけられるPerlman の問題解決アプローチの構造と支援過程を整理し,個人の尊厳に関係するソーシャルワークの概念に関連づけて考察をした。その結果,その人の成長を一義的な目標に位置づける,問題解決力を涵養するための問題の部分化,リハーサル体験の反復,情緒的・知的・身体的側面からの対処能力向上等,支援を必要とする人の尊厳に結びつくと考えられる視点を見い出すことができた。一方で,自己決定の考え方,日本の文化的特徴の自己決定への影響,言語的コミュニケーションを用いることによる対象の限定,問題解決の認識が乏しい場合等の本アプローチの適用上の検討課題が示唆された。
著者
吉川 麻衣子 よしかわ まいこ Yoshikawa Maiko 人文学部福祉文化学科准教授
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-16, 2018-01

本研究では,トランスジェンダー青年が,思春期・青年期の発達過程においてどのような行為や心情を経験し,自らの生き方をどのように模索するのかを複線径路・等至性モデル(TEM)を用い質的に分析した。4 名の研究参加者がサポート・グループで語った内容から作成したTEM 図を基に分析したところ,①「自分らしさ」を模索する過程で自己を過剰抑制して自傷行為等に及び,②「性同一性障害(性別違和)」という用語を知って自らの性別違和感を理解し,③サポート・グループに参加することで他者と類似した経験を語り合えることの安心感を得て,④高校に進学することを選択し,⑤ジェンダークリニックを受診し,⑥大学・専門学校に進学することを選択していた。それらの経験に至る径路は多様であり,親や教師の理解が得られるかどうか,診断を受けて治療を開始できるかどうかが,トランスジェンダー青年が思春期・青年期を生きる上で重要な岐路となることが示唆された。Using the Trajectory Equifinality Model (TEM), this study has conducted that transmen youth experienced what kind of act and feelings in adolescence and groped for how I should live. The TEM was created based on the narratives of four transmen who participates in the support group. As the results, six important points were clear: for example, knowing the word"Gender Identity Disorder / Gender Dysphoria," finding the support group that can talk about oneself in peace, and having parents and teachers understand oneself. Their aspects were the complex and diversity of life.
著者
見城 育夫 けんじょう いくお Kenjo Ikuo 沖縄大学人文学部福祉文化学科
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.22, pp.51-59, 2019-03

2018 年度介護保険制度改正に伴う自立支援・重度化防止に向けた取り組みについては,ここに至る過程において様々な議論が行われてきた。今改正のこれまでの議論の整理及び改正の論点と今後の課題について文献分析を基に考察することにしたい。
著者
劉 剛
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.26, pp.121-140, 2023-03-17

琉球王国では、中国福建から渡来人によって豆腐乳が伝えられると、転身して王府の保護食品となり、王宮では珍味に格上げされたという。つまり、在地化されて文化的変容と受容により再現した。それは、薫り高いチーズのような、そしてチーズよりもコクのある、素晴らしきキューブ状の「東洋のチーズ」といい、栄養食品として王府に認定された秘蔵物である。その後、琉球王国の滅亡とともに、その運命は波乱に満ち、戦争によってほとんど消滅してしまった。しかし、戦争によって王室の保護もなくなり、民衆の食卓に降りてくるようになった。今、普及と革新の過程で、新たな問題や出会いに直面している、と筆者は提言したい。
著者
玉木 千賀子
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.24, pp.125-135, 2021-03-31

教育活動の一環として取り組んでいる「聞き書き」の研究動向の確認と活動の可能性を考察した.「聞き書き」は多岐の領域で取り組まれているものの,理論的研究,方法の有効性に焦点化した研究蓄積は限られている.しかしながら「聞き書き」には,多様なつながり・新たな地域のストーリーの構築をはじめとする効果があることが確認された.これらの効果は,地域共生社会づくりという今日の社会福祉の方向性と一致する.そのため他者の話を聞くことの意味を問い直し,「聞き書き」の視点・方法をこれからの社会福祉の支援に活かすことが求められる.
著者
緒方 修
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.3, pp.67-73, 2002-03

1994年以来、筆者は世界各地で開かれる客家大会に参加している。94年12月中国・広東省梅州、96年11月シンガポール、98年10月台北、99年11月マレーシア・クアラルンプール、2000年中国・福建省龍岩。毎回、世界各地の30~70を数える客家団体が、代表団を送り込んでくる。開会式は多い時で2500人を超える。参加者は想像もつかない数に膨れ上がることもある。特に中国大陸で開かれた2回の大会(94年12月広東省梅州、2000年福建省龍岩)は街をあげての歓迎だった。当局の発表で約20万人と記憶しているが、おおげさな数字ではなかろう。小中高生が動員され、歓迎行事やマスゲームに欠かさず出演する。警察も役所も全てが期間中はかかりきりになる。なにしろこの大会のために道路や競技場が新設され、文化会館やその他の施設が出来るほどだ。中国にとっては世界中から人を迎える大事な大会なのだ。今回参加した台湾・新竹の客家大会は、世界大会ほどの規模ではない。だが新竹は台湾の中でも客家人の多い地域として知られている。県知事も客家人だ。本来アメリカで開かれている大会をわざわざ今回台湾で開くことにも興味を持った。新竹の観光名所にもなっている義民廟は客家の「聖地」ともなっている。歴代の台湾総統が必ず就任後訪れる所でもある。台湾客家の心の拠り所になっている「廟」の略史の翻訳を付した。
著者
吉井 美知子 よしい みちこ Yoshii Michiko 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-24, 2016-03-07

ベトナムでは初の原発建設計画が進められている。南部のニントゥアン第一原発をロシアが、第二原発を日本が受注し、着工は2022 年以降とっている。原発に関する世論調査等は一切行われていない。外国人による現地取材や調査も非常に難しい。そこで本研究では立地地元ではなく、国内外の離れた場所で暮らす地元出身者への聴き取り調査を実施した。これにより現地出身者の意見を明らかにする。調査の結果、学歴が中卒以下の人々の多くは、フクシマ事故や故郷に建つ原発の計画を知らず、意見も持たないことがわかった。また高卒以上の人々は放射能への不安、人材不足の懸念からの反対が多く、日本には原発ではなく再生可能エネルギーへの支援をという声が集まった。立地地元に情報が行き渡らず、高学歴者の間で計画への反対意見が多いなか誰ひとり意見発信ができない。言論の自由のない国を狙って原発を輸出する日本の、道義的責任が問われている。Vietnam prepares to build its first nuclear power plants (NPP) in Ninh Thuan Province, Russia andJapan as the suppliers.This study conducted interviews with the locals of Ninh Thuan and nearby areas who temporarily stayand work in major Vietnamese cities or overseas to acquire their opinions on the NPP.Results showed that those with low-level education lack knowledge of and opinions about nuclearproject. Those with higher-level education oppose the project and have concerns about nuclear disaster, butlack the ability to express their opinions.Japan's targeting of countries without freedom of expression for NPP project places its moralresponsibility in question.
著者
桜井 国俊 Sakurai Kunitoshi 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.16, pp.29-39, 2014-03-05

沖縄では嘉手納以南の米軍基地が返還されることとなっているが、返還基地の円滑な環境回復をいかに実現するかは極めて重要な地域課題である。日米地位協定第4条第1項は汚染者の米国政府に対し環境回復の責任を免除しているとされる。しかし韓米地位協定は同様の条項を含むにも関わらず韓米両国政府は米国に環境回復の責任が一定程度あると解釈している。この日米・韓米地位協定の解釈における差異を検討しつつ、今後予定される返還米軍基地においていかに円滑に環境回復を実現するかについて、韓国での先行事例を踏まえた提言を行う。Although the schedule is not fixed yet, US military bases south of Kadena are planned to be returned to Okinawa, and their smooth environmental restoration is a very important local issue. Article IV, paragraph 1, of US-Japan SOFA (Status of Forces Agreement)is said to exempt the polluter, namely the US Government, from the responsibility of environmental restoration. Although US-ROK SOFA has the same article, both the US and the Republic of Korea (ROK) Governments understand that the US Government has the responsibility of environmental restoration to some extent. This paper examines thisdifference between Japan and Korea in the interpretation of SOFA and tries to make some recommendations for smooth environmental restoration of US military bases in Okinawa based on the preceding experiences in Korea.
著者
竹沢 昌子
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.2, pp.67-82, 2001-03

1987(昭和62)年に社会福祉士が制度化されて以来、12年が経過した。この間、国民の社会福祉ニーズが変化する中で、社会福祉従事者の人材養成が緊急の課題として取り上げられるようになってきている。社会福祉士の教育課程見直しもその一つであり、なかでも実習指導の充実や実習指導者の養成が提言されている。同時期に、日本社会福祉士会は実習指導者養成研究会を発足させ、後進の育成に自ら積極的に関わる姿勢を見せている。そこで筆者は、社会福祉士(沖縄県)を対象として、実習指導における社会福祉士の役割に関する意識調査を行なった。調査結果によれば、社会福祉士として実習教育に積極的に関わりたいというグループと、社会福祉士としての意識の希薄さから実習教育への関わりに消極的なグループとに大きく分類された。本稿においては、近年の社会福祉士養成教育に関する施策と実習指導の現状を分析するとともに、上述の調査結果を紹介、考察する。It has been twelve years since a social work license became nationally certified in 1987 in Japan. This paper focuses on a discussion of who are to be leading field instructors for students who wish to be certified social workers (CSWs). The author conducted the study in Okinawa, Japan. The author surveyed CSWs, asking them how they perceive their roles in field placement education. Of the 136 questionnaires sent out, 48 were returned. The results reveal two different perspectives on field placement education. One group (approximately 60-70% of the respondents) believes they should positively become involved as field instructors since they recognize they are most qualified to teach the unique knowledge, skills, values and perspectives of social work professionals. These respondents identify teaching social work students as one of their professional roles and commitments. Another group (approximately 20-30% of the respondents) remains uncertain about their roles and uninterested in becoming involved in the education.
著者
盛口 満
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
こども文化学科紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.35-39, 2014-03

石垣島白保にておこなわれたしらほサンゴ村こどもクラブのキャンプにおいて,沖縄大学こども文化学科盛口ゼミの学生による授業を行った。その際,テーマのひとつとして「海に昆虫はいるのか?」というテーマの授業が行われた。この実践報告と,実践における改良点を探るべく行った教材研究から,昆虫と甲殻類を比較して扱う授業の可能性について考察する。
著者
王 志英
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.12, pp.71-82, 2010-03-31

本稿は中国語の四つの類義語動作動詞"扔"、"丢"、"摔"、"抛"の基本義とその用法について考察した。"扔"は遠くまで、近くまで対象物を「投げる」ことができるほかに、上向きと下向きへ対象物を「投げる」こともできる。"丢"は下へ向けて、対象物を「投げる」。"摔"は主体が力を入れ、対象物を上向きと下向きへ 「投げる」ことになる。また、"摔"は力が入っているため、対象物に付着してある物を「落とす」こともできる。主体の重力によって、主体自ら「落とす」こともありうる。"抛"は斜め上に向け、対象物を「投げる」。以上は四つの動作動詞の移動する軌道の違いにより、その間の意味の違いも見えてくる。@@@本论文考察了汉语的四个动作动词"扔"、"丢"、"摔"、"抛"的基本意思和其用法。"扔"除了能把物"扔"远、"扔"近外,还可把物向上或向下"扔"。"丢"主要是把物向下扔。"摔"时主体用力,可把物向上或向下"摔",并且因为用了力,可把物体上附带着的东西"摔"掉。"抛"主要是斜着向上"抛"物。以上四个动作动词由于移动轨道的不同,它们之间的意思也不同。
著者
髙良 沙哉
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.24, pp.101-108, 2021-03-31

旧優生保護法仙台地裁判決は、日本の裁判史上初めて「リプロダクティブ権」を承認し、憲法17 条に基づき救済法を制定することが必要不可欠であるとする一方で、民法724条の除斥期間を適用した。本稿では本判決について、旧優生保護法における強制不妊手術は人間の尊厳に関わること、「リプロダクティブ権」の議論の蓄積が憲法学においてなされてきたと指摘する。また、除斥期間を本件に適用することの問題性を指摘する。
著者
渡久山 幸功
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-16, 2012-03-10

本稿では、Ernest Hemingway(アーネスト・ヘミングウェイ)の中編小説 The Old Man and the Sea(『老人と海』1952年出版)をエコクリティシズム理論を援用して分析した。エコクリティシズム批評の重要な概念「センス・オブ・プレイス」や環境破壊の視座などが本作品に描かれていることを証明し、人間と自然(動物)の一体化・融合あるいは両者の関係の二項対立的な固定観念を解消することを信条とする老人サンティアゴの漁師としてのカリブ海特有の海洋生物・天候の知識が、彼の環境意識・哲学のバックボーンとなっていると考察した。海洋自然の「厳しさ」は、サンティアゴによって「自然の美しさ」及び「自然の摂理」として認識される。それは、小説の重要なメッセージとして提示され、環境文学の特徴である環境への意識を読者に喚起させることを促し、環境や自然に対する従来の価値観の転換を読者に希求する意図がある「環境文学テキスト」であると指摘した。This paper explores an environmental dimension of Hemingway's novella, The Old Man and the Sea (1952). Despite his reputation as a hunter/fisherman, there is no doubt that Hemingway was environmentally conscious as a nature writer as several of his works clearly suggest. The Old Man and the Sea is the best example among his nature-conscious texts. In perusing aspects of the marine environment and Santiago's personal philosophy of fishing for sustenance in the novella, I argue that the novel belongs to environmental literature in the American literary tradition, especially that of the American eco poet, Gary Snyder.
著者
渡久山 幸功
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-16, 2012-03-10

本稿では、Ernest Hemingway(アーネスト・ヘミングウェイ)の中編小説 The Old Man and the Sea(『老人と海』1952年出版)をエコクリティシズム理論を援用して分析した。エコクリティシズム批評の重要な概念「センス・オブ・プレイス」や環境破壊の視座などが本作品に描かれていることを証明し、人間と自然(動物)の一体化・融合あるいは両者の関係の二項対立的な固定観念を解消することを信条とする老人サンティアゴの漁師としてのカリブ海特有の海洋生物・天候の知識が、彼の環境意識・哲学のバックボーンとなっていると考察した。海洋自然の「厳しさ」は、サンティアゴによって「自然の美しさ」及び「自然の摂理」として認識される。それは、小説の重要なメッセージとして提示され、環境文学の特徴である環境への意識を読者に喚起させることを促し、環境や自然に対する従来の価値観の転換を読者に希求する意図がある「環境文学テキスト」であると指摘した。This paper explores an environmental dimension of Hemingway's novella, The Old Man and the Sea (1952). Despite his reputation as a hunter/fisherman, there is no doubt that Hemingway was environmentally conscious as a nature writer as several of his works clearly suggest. The Old Man and the Sea is the best example among his nature-conscious texts. In perusing aspects of the marine environment and Santiago's personal philosophy of fishing for sustenance in the novella, I argue that the novel belongs to environmental literature in the American literary tradition, especially that of the American eco poet, Gary Snyder.
著者
王 志英
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-10, 2013-03-15

本稿は中国語の形容詞“漂亮”、“美丽”、“美”、“好看”という類義語の違いについて考察した。この四つの類義語はともに視覚を通して、人間、物事を描写することができる。 しかし、“美丽”、“美” の描写する対象は色彩がなくてならないのに対して、“漂亮”、 “好看”の描写する物事が色彩がなくても使える。“漂亮”、“美丽”、“美”は聴覚を通して、物事を描写することができるが、“好看”は物事を聴覚による描写ができない。 “美丽”、“美”で描写している物事が「美しい」だけでなく、人間に精神的な快感をもたらすことができる。本篇论文对汉语的4个形容词“漂亮”、“美丽”、“美”、“好看”之间的意思的区别进行了探讨。这4个同义词翻译成日语都表示「美しい」、「きれい」的意思,因此对学汉语的外国人来讲,要掌握和使用好这4个词,很不容易。“漂亮”、“美丽”、“美”、“好看”这4个同义词都可以通过人的视觉来对人、物进行描写。但是,“美丽”、“美”所描写的对象必须具有色彩,没有色彩的对象一般不用“ 美丽”、“美”。“ 漂亮”、“好看”描写的事物没有色彩也可以说。“ 好看”不能用于听觉,用“美丽”、“美”时,不仅表示人或物的外观美,而且其事物还能给人带来精神上的快感。
著者
上地 幸市 嘉数 健悟
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.22, pp.69-76, 2019-03-31

本報告は,学校と大学の協働による「教職インターンシップ実践」において学生がどのようなことを学び,どのようなことを課題としているのかを明らかにし,学生の実践的指導力の基礎を培うための基礎資料を得ることを目的とした。その結果,以下の4 点が明らかになった.1)学生たちは「教職インターンシップ実践」における学校現場での継続的な教育活動において「各教科等の授業への指導補助及び教材・教具・掲示物等の制作」や「問題を抱える生徒や別室登校生徒等,個別の生徒への支援」についての成果や課題を認識する傾向にある。2)大学での事前指導の学びと学校現場における「体験的な学び」のつながりには,大学における教科指導の在り方や生徒指導の3 機能を生かした生徒との関わり方等があげられる。3)一部の学校にとどまっている教育活動について理解と協力を得る必要がある。4)「つなぐ・つながる力」の基礎を培う体験的な学びの機会が少ないため,地域資源や地域文化と生徒をつなぐ横断的なカリキュラムの事例提供など,大学における教職課程のカリキュラムの検討が求められる。