著者
美代 賢吾
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.908-916, 2005-11-10

はじめに 個人情報保護法が今年4月から全面施行され,個人情報保護に対する関心が高まっている。これまでも,企業,行政機関,医療機関などでは,それぞれの組織の判断によって,個人情報を保護するために必要な対策がなされてきたが,法律の後押しもあり一層強化されるようになってきている。にもかかわらず,昨今の報道や発表などでもみられるように,電子保存された個人情報の流出があとを絶たないばかりでなく,むしろこれまでよりも増加しているような印象さえ受ける。 医事会計システムから始まった病院の電子化も,オーダエントリシステムを経て電子カルテへとその広がりをみせている。単に診療報酬請求に必要な情報だけをコンピュータで扱っていた時代から,病名や疾病の転帰はもちろんのこと,外来・入院を問わず病院に受診した際のすべての記録が電子的に記録され管理される時代になってきた。さらに,病院の電子化だけでなく,多くの医療従事者が個人でパソコンを所有し,それを利用して研究や一部の業務を行なう状況にもなりつつある。 電子保存された情報の流出が相次ぐなか,医療スタッフは,電子化された患者情報に対して,これまで以上の慎重な取り扱いと情報保護のための知識と技術を身に付けなければならない。同時に,これからの病院管理者や看護管理者は,単に患者情報保護のための規則や規定を定めてその遵守を呼びかけるだけでなく,スタッフに対するより具体的な情報教育にも注力する必要があろう。 すでに,個人情報保護法の概要やその精神,日常の医療への適用などについては,いくつかの文献が発表されている1-4)。したがって本稿では,法そのものの解釈ではなく,「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない(20条)」という法の精神に応えるには,今日から,我々医療スタッフは個人として何ができ何をすべきか,そして看護管理者は,スタッフに対して,何をどのように指示すべきなのかということに焦点をあてて述べていきたい。
著者
柏木 聖代 水流 聡子 柏木 公一 美代 賢吾 西亀 正之
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.169-178, 2002 (Released:2017-08-14)
参考文献数
11

本研究の目的は,看護記録が電子化され,看護サマリー作成システムが導入された際,「看護サマリーデータ項目セット」を病院情報システムに適用できるかを明らかにすることである.そこで,今回は,看護サマリーネットワーク研究会が作成した「看護サマリーデータ項目セット」を用い,そのデータ項目の情報が病院の記録に記載されているかについて,大学病院と大学病院以外の病棟管理者295名に対し,自記式質問紙調査を実施した.243名から回答を得たうち,有効回答であった171名を分析対象とした.その結果,患者属性・診療情報に分類されるデータ項目の情報は80~90%記録に記載されていた.逆に,患者・家族への指導,福祉サービス等,在宅ケアを意識した情報の記載率は40%前後であった.さらに,大学病院群と大学病院以外の病院群にわけ,記載率との関連をみた結果,28項目に有意な差が認められ,すべて大学病院以外の病院群の記載率が高かった.
著者
尾崎 眞 美代 賢吾 平井 正明 河野 隆二 鎗田 勝 佐久間 一郎
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.2-27, 2005-01-01

佐久間(司会) きょうは大変お忙しいところ,お集まりいただきましてありがとうございます.今回,お集まりいただきましたのは,日本医科器械学会という医科器械のメーカがかなり参加されている学会で,医科器械学という学会誌があるのですが,そこでの座談会ということで企画されまして,どんなテーマがいいだろうかということで話し合った結果,編集委員の中から「医療機器の情報セキュリティ」という問題があるだろうということで,これは器械をっくる立場で結構,今後,重要な問題になるだろうということで,現状,どういう問題があるかということ,それから技術的にはどんな可能性があるものが存在しているか,そのあたりを含めてざっくばらんに意見を交換する形で会員に有用な情報を与えたいというのが目的です.申し遅れましたが,私は今回,まとめ役を仰せつかりました東大の佐久間と申します.よろしくお願いいたします.