著者
武村 雪絵
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.446, 2018-05-10

まるで講義を受けているような奥深さ 統計解析の解説本・指南本はこれまでにたくさん購入してきました。自分が研究をする際に,理解不足のまま多変量解析をして見当はずれな結論を導くのは怖いと思っていましたし,論文を読む際も,図表を読み取れず書かれていることを鵜呑みにするのは避けたいと思っていたからです。 多くの書籍を購入してきましたが,書店で本書を見つけてパラパラとページをめくった瞬間に購入を決意しました。感想を一言で言えば,「買ってよかった!」「読んでよかった!」。本書は,変数の種類と組み合わせで機械的に正しい解析方法を選ぶといった,従来の入門書とは全く違います。著者の講義を受けるかのように,丁寧により深く,しかも面白く多変量解析を学ぶことができます。
著者
美代 賢吾
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.908-916, 2005-11-10

はじめに 個人情報保護法が今年4月から全面施行され,個人情報保護に対する関心が高まっている。これまでも,企業,行政機関,医療機関などでは,それぞれの組織の判断によって,個人情報を保護するために必要な対策がなされてきたが,法律の後押しもあり一層強化されるようになってきている。にもかかわらず,昨今の報道や発表などでもみられるように,電子保存された個人情報の流出があとを絶たないばかりでなく,むしろこれまでよりも増加しているような印象さえ受ける。 医事会計システムから始まった病院の電子化も,オーダエントリシステムを経て電子カルテへとその広がりをみせている。単に診療報酬請求に必要な情報だけをコンピュータで扱っていた時代から,病名や疾病の転帰はもちろんのこと,外来・入院を問わず病院に受診した際のすべての記録が電子的に記録され管理される時代になってきた。さらに,病院の電子化だけでなく,多くの医療従事者が個人でパソコンを所有し,それを利用して研究や一部の業務を行なう状況にもなりつつある。 電子保存された情報の流出が相次ぐなか,医療スタッフは,電子化された患者情報に対して,これまで以上の慎重な取り扱いと情報保護のための知識と技術を身に付けなければならない。同時に,これからの病院管理者や看護管理者は,単に患者情報保護のための規則や規定を定めてその遵守を呼びかけるだけでなく,スタッフに対するより具体的な情報教育にも注力する必要があろう。 すでに,個人情報保護法の概要やその精神,日常の医療への適用などについては,いくつかの文献が発表されている1-4)。したがって本稿では,法そのものの解釈ではなく,「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない(20条)」という法の精神に応えるには,今日から,我々医療スタッフは個人として何ができ何をすべきか,そして看護管理者は,スタッフに対して,何をどのように指示すべきなのかということに焦点をあてて述べていきたい。
著者
岡野 晶子
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.981-984, 2011-10-10

米国の医療は複雑化する医療制度や国民の健康問題,医療技術の高度化,医師不足,研修医の勤務時間の制限,診療報酬の削減,入院期間の短縮化,安全対策の強化のために,従来の医師中心の体制からNurse Practitioner(NP)やPhysician Assistant(PA)を含めた多職種チームによる体制へ移行しつつある。 そのなかでNPは主要なチームメンバーであり,裁量権をもち,従来の医師の業務を行なうことが多い。本稿では筆者がNPとして所属する大腸直腸外科における多職種チームの介入の例を紹介し,米国におけるNPの効果をケアの質,コスト,医療アクセスの面から考察する。 そして最後に,日本の特定看護師(仮称)の導入にあたり,医療施設における管理や教育の課題について触れる。
著者
福留 はるみ
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.790-796, 2003-10-10

はじめに 先の横浜市立大学医学部附属病院患者取り違え手術事件判決は,個人の過失には組織における安全管理体制の不備が影響を与えるということを示唆する内容であった。事故発生当時,「安全」は空気のような存在で,失敗した人を責めるという責任追及型の懲罰モデル(失敗した人を罰する)の考え方が主流であり,マスコミだけでなく,医療界でもそのような風潮があった。 この事故が発生して4年を経たいま,医療法の一部改正,診療報酬上の未実施減算という行政主導の仕組みづくりが追い風となり,責任追及型の懲罰モデルから原因追求型の学習モデル(失敗から教訓を得る)へとシフトしているが,実際のところ医療現場の安全管理体制はどのようなプロセスを経て,どのように進展しているのだろうか。 医療安全の仕組みは,厚生労働省「医療安全推進総合対策―医療事故を未然に防止するために」や,厚生労働省国立病院部政策医療課「国立病院・療養所における医療安全管理のための指針」などで標準化されたものができている。この仕組みに対する評価は,今後,適宜見直されることになるだろう。 そうしたなかでいま,医療現場が直面している問題は,仕組みづくりはできたが,その仕組みを効果的に運用できず,事故防止を推進するプロセスに時間がかかり,思うようなアウトカムを出せず苦労しているということだ。また,医療安全対策の推進に伴うプロセス評価・アウトカム評価についてどのような視点をもち,マネジメントしていくかが看護管理者としての大きな役割であるが,ロールモデルがないため,各自で検討し試行錯誤しているのが現状である。しかし,看護部門では,医療安全については,従来より業務委員会などで質管理の一環として取り組んできたのである。このように看護部門だけでやってきた取り組みから,全職員対象へと拡充したという経緯から考えると,全く新たな未知の分野ではない。 そこで,本稿では,医療安全対策を実施する上でどのような見直しがいま必要なのか,よくありがちな陥りやすい失敗のポイントなどを挙げ,実質的な改革につながる医療安全対策について具体的に提案し,現場で感じているジレンマやストレス等の問題解決方法について検討する。
著者
林 陸郎 廣瀬 規代美 奥村 亮子
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.445-451, 2001-06
著者
岡谷 恵子 小野田 舞 柏木 聖代 角田 直枝 川添 高志 小西 美和子 斎藤 大輔 澤柳 ユカリ 重富 杏子 任 和子 橋本 幸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.559-563, 2021-07-10

救急外来を受診する高齢患者の約半数は入院に至らずに帰宅する患者である。これらの患者が再受診や予定外の入院をすることなく,住み慣れた場所で生活の質を維持しながら療養を継続するためには,初回受診時に帰宅後の生活を見据えた医療機関と地域・在宅での療養をつなぐ統合的な療養生活支援が必要である。 日本看護管理学会では,2022(令和4)年度の診療報酬改定に向けて,「救急外来における非入院帰宅患者に対する看護師による療養支援」への評価を要望する。これは上述の療養生活支援の役割を外来看護師が担うことへの診療報酬上の評価を求めるものである。救急医療の限られた資源を適切に活用することにもつながり,病院経営上,組織運営上の効果も大きいと思われる。 本稿では要望作成に当たった検討委員会の立場から,要望の目的と意義を述べる。
著者
坂木 孝輔 山口 庸子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.208, 2019-03-10

現場に相談できる人がいてほしい 現場では,「エビデンスに基づく実践がしたい」と思う一方で,日常業務に追われ,理想と現実のギャップを感じている看護師は少なくないと思います。臨床で分からないことがあったとき,いきなり原著論文を調べるという人は少ないでしょう。まず先輩や他職種に聞いてみたり,教科書や雑誌の特集を見たりするのではないでしょうか。 日常の実践から生じる疑問はあっても,それをPICOやFINERといった枠組みを使ってリサーチクエスチョンに落とし込むのはなかなか難しいものです。いざ,情熱を持って信頼できる仲間たちと研究しようと思っても,時間がなかったりメンターがいなかったりするのが現状ではないでしょうか。
著者
市瀬 博基
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.366-371, 2016-04-10

今回から3回にわたって慶應義塾大学病院看護部のEBP(Evidence-Based Practice:エビデンスに基づく実践)の導入について検討していきます。EBPとは,「臨床意思決定に向けた問題解決手法」であり,看護の文脈では,看護研究における最新の知見,現場の看護師の専門的知識と判断,そして患者のニーズや価値を統合するための仕組みをつくり,臨床実践に反映するための取り組みを指しています1)。 慶應義塾大学病院看護部では,看護の質保証をめざしたこれまでの取り組みを拡張する形で,2013年からEBP導入に取り組んでいます。看護ケアの「実践と並行して評価を行い,その評価を次のケアに活かす活動が体系的に行われる」ための組織的な支援体制を整備し,「実践レベルで(EBPが)浸透することによりPDCAサイクルが回り,エビデンスを活用できる組織に変えていく」ことが狙いです2)。