著者
有吉 慶介 脇田 昌英 美山 透 吉田 聡
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

平成29年度の貫通観測に関して,観測準備として,気象センサーの防水防爆対策として既成のプラスチックケースからアルミケースへの差し替え,ソーラーパネルの独立固定方式への変更,表層連続観測用のドラム,UWTVへのCTD取付工具などを購入した.GNSS-Rの観測については,当初の計画には盛り込まれていなかったが,海面高度の精密観測をする上で必要なため,九州大学からの協力を得て実施することにした.これらの観測機器を用いた他,GNSS-Rや表層連続観測装置などを借用手配することにより,地球深部探査船「ちきゅう」が清水港に停泊している期間を狙って,2017年11月30日~12月1日に気象センサー,海水の表層・鉛直のCTD装置,GNSS-Rの設置,2018年1月10日~12日に鉛直CTDと表層連続観測の電池交換を兼ねた動作確認,2018年2月27日に観測機器の撤収を行った.回収データを解析した結果,どのセンサーも,動作環境などで問題があったものの,きちんと設定すれば同時連続観測が出来ることを確認した.これらの成果は, Ocean Sciences Meeting, Blue Earth Science Technology 等で発表した他,マサチューセッツ工科大学(MIT),カーネギー研究所,ハーバード大学,アメリカ海洋大気庁 (NOAA) などでもセミナーとして発表した.また,来年度に開催する国際学会(JpGU, AOGS) でもセッションを提案し,採択された.さらに,上記の学会の場を通じて,貫通観測に関して,国際学術誌での特集号も組まれることとなるなど,国内外での反響も得られた.
著者
美山 透 宮澤 泰正 MIYAMA Toru MIYAZAWA Yasumasa
出版者
Springer-Verlag
雑誌
Ocean dynamics : theoretical computational and observational oceanography (ISSN:16167341)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.265-281, 2013-01-17 (Released:2013-05-08)
被引用文献数
10

A sudden acceleration of the Kuroshio jet appears off Cape Shionomisaki in the high-resolution (horizontal resolution of 1/36°) JCOPE 2 ocean reanalysis data. Using this dataset, we investigated the structure of the Kuroshio acceleration. The increase in the velocity of the current is accompanied by a downstream flow separation from the coast and an outcrop of cold temperature inshore. The acceleration of Kuroshio appears when it takes a near-shore path. Cape Shionomisaki amplifies the responses to the Kuroshio flow by creating the zonal velocity acceleration toward the downstream region when the Kuroshio flows closer to the coast. The Kuroshio acceleration coincided with the topographic ridge on the continental shelf near Cape Shionomisaki. This relation suggests that the dynamics of the acceleration is linked to the topographic feature. We proposed an explanation of the Kuroshio acceleration using a hydraulic control theory. An analytical solution was applied to the coastal topography around the Kii Peninsula. The solution captured some aspects of the Kuroshio acceleration.
著者
美山 透
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

教育の中で海洋が取り扱われる意義は、生活をとりまく環境の認識、各国と共有される資源への意識(漁業、海洋汚染など)、自然災害への理解(津波、高波、エルニーニョ、地球温暖化など)などが挙げられる。ここでは、これらの話題が高校教育に取り上がられているか、適切に説明されているかについて、「地理A」(6冊)、「地理B」(3冊)、「科学と人間生活」(5冊)、「地学基礎」(5冊)、「地学」(2冊)レビューした。講演者は専門が海洋物理学であり、その視点が中心になる。同じ教科でも出版社により個性があるものの、要旨では教科毎の概観を記す。 「地理B」は上記した話題を多かれ少なかれ網羅している。全教科書に海流図とともに、海流に関する概説がされている。海流の成因についても説明が試みられているが、その説明は危うい。例えば、3冊中の2冊で「吹送流」という言葉が出てくるが、いずれも誤用である(誤例、「親潮や黒潮も吹送流の一つである」)。「吹送流」は高度な内容と考えられているのか「地学基礎」では導入されておらず、「地学」になって正しく導入されている。地理では特有の用語が使われる例があり、黒潮に「日本海流」という別名があるのはその例である(2冊で例、1冊にはないが同じ出版社の地図帳に例)。地学の教科書では「地学基礎」の1冊の例外を除けば「日本海流」は使われていない。 「地理A」は「地理B」に比べると海洋への記述が少なく、海流の紹介はほぼ西岸海洋性気候に関連づけるだけのためにある。世界の漁業に関する記述も無くなる。「地理B」では全教科書にエルニーニョが取り上げられているが、「地理A」では6冊中2冊のみである。 「科学と人間生活」は海の取り扱いは小さく、海流図が載っている教科書は5冊中で全球海流図が1冊、日本付近の海流図が1冊のみに取り上げられている。エルニーニョが取り上げられている教科書はない。地球温暖化は扱い自体が他科目に比べて比較的消極的で、1冊のみに海面上昇の可能性が触れられていた。 「地学基礎」は、海流を取り上がるだけでなく、その成因の説明が求められるが、「地学」ほど高度な概念を使えないという制約のある教科である。そのためか、説明の質が教科書ごとに大きく違う。同じ出版社でも、「地学」では「地球の自転による転向力のため海水の流れは風の向きとは一致せず」から解説を始めているにもかかわらず、「地学基礎」では(海流は「平均的に見ると風の向きとよく対応する」という解説にしている例も見られた。 「地学」の2冊は、渦度などの概念が使えない中で、海流の成因やエルニーニョの説明にベストを尽くしている。その中でも、海流図や、海流の成因の説明のアプローチ、地球温暖化の積極性に違いがあり、2冊には個性の違いがある。
著者
飯塚 聡 万田 敦昌 安永 数明 佐藤 友徳 川瀬 宏明 美山 透
出版者
国立研究開発法人防災科学技術研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

最近の研究から、梅雨末期に豪雨が頻発する背景として季節的な海面水温の上昇が影響していることが示されている。日本周辺の海面水温は、黒潮・親潮や対馬暖流の影響で複雑な空間構造を持ち、また長期的には他の海域に比べ上昇率が大きい。本研究では、様々な時空間スケールの変動を有する日本周辺の海面水温が、数値モデルで予測される豪雨や豪雪などに与える影響を、高分解能海洋再解析データや観測データも活用しながら明らかにし、極端気象の予測可能性を探求する。これにより、将来の地域気候の影響評価や極端気象の予報の信頼度向上に対して有益な知見を与えることが期待される。

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著者
美山 透
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.893-894, 2011-10-31
参考文献数
7