著者
羽田 匡宏
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1768-1772, 2006-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は25歳,男性.下痢と咽頭痛にて当院内科を初診したところ,甲状腺腫大および甲状腺機能亢進を認めバセドウ病と診断された.抗甲状腺療法を施行したところ甲状腺機能は速やかに改善された.経過中に前縦隔腫瘍が指摘され, MRIにて胸腺腫が否定できないため手術目的に当科紹介となり,腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は胸腺過形成であった.バセドウ病に合併する胸腺過形成は古くから報告されているが,臨床現場ではあまり知られていない.最近では甲状腺機能を正常化することで保存的に胸腺の縮小が得られるとされている.しかし,胸腺腫が否定できない場合には摘出術も考慮すべきと考えられた.
著者
林 憲吾 羽田 匡宏 大島 正寛 加藤 洋介 小竹 優範 原 拓央
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.532-535, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は7歳,女児.前日より増悪する腹痛と発熱を主訴に当院小児科を受診し,急性虫垂炎の診断で当科に紹介となった.腹部CTでは,腫大した虫垂内に歯牙様の形態をした石灰化を伴う構造物を認め,歯牙迷入による急性虫垂炎を疑い同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂に穿孔はなく蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,型通りの虫垂切除術を施行した.摘出標本を開放すると9mm程度の歯牙を内部に認め,病理学的には壊疽性虫垂炎の所見であった.術後経過は問題なく,術後4日目で退院となった.異物による急性虫垂炎は比較的稀であり,その頻度は0.2~0.75%と報告されている.異物としては魚骨や義歯,種子などが多く,乳歯が誘因となった報告は検索した範囲では認めなかった.義歯や歯牙による異物性虫垂炎は穿孔しやすいという報告もあり,本症のように誤飲した歯牙が原因と思われる小児虫垂炎症例は速やかな手術が望ましいと考えられた.