著者
石林 健一 崎村 祐介 俵 広樹 林 憲吾 加藤 嘉一郎 辻 敏克 山本 大輔 北村 祥貴 角谷 慎一 伴登 宏行
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.217-224, 2022-03-01 (Released:2022-03-31)
参考文献数
25

症例は45歳の女性で,20年前にくも膜下出血による水頭症に対して脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt;以下,VPSと略記)挿入術が施行された.意識障害があり当院を受診し頭部CTで脳室拡大を認め,脳室ドレナージが施行された.VPSの閉塞が疑われ施行した全身CTでVPSチューブが上行結腸を穿通しており,治療目的に当科紹介となった.開腹するとチューブ状の繊維性被膜が上行結腸に付着しており,繊維性被膜を全周性に剥離するとVPSチューブが同定できた.VPSチューブを結紮,離断し,腸管に穿通しているカテーテルは抵抗なく抜去できた.腸管の瘻孔は縫合閉鎖した.VPSチューブ腹側端は髄液漏出を確認し,繊維性被膜内から出さずに閉腹した.術後第9病日に脳室ドレーン感染からの髄膜炎を来し,VPSチューブの全抜去を施行した.まれなVPSの消化管穿通の1例を経験したので報告する.
著者
林 憲吾 羽田 匡宏 大島 正寛 加藤 洋介 小竹 優範 原 拓央
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.532-535, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は7歳,女児.前日より増悪する腹痛と発熱を主訴に当院小児科を受診し,急性虫垂炎の診断で当科に紹介となった.腹部CTでは,腫大した虫垂内に歯牙様の形態をした石灰化を伴う構造物を認め,歯牙迷入による急性虫垂炎を疑い同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂に穿孔はなく蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,型通りの虫垂切除術を施行した.摘出標本を開放すると9mm程度の歯牙を内部に認め,病理学的には壊疽性虫垂炎の所見であった.術後経過は問題なく,術後4日目で退院となった.異物による急性虫垂炎は比較的稀であり,その頻度は0.2~0.75%と報告されている.異物としては魚骨や義歯,種子などが多く,乳歯が誘因となった報告は検索した範囲では認めなかった.義歯や歯牙による異物性虫垂炎は穿孔しやすいという報告もあり,本症のように誤飲した歯牙が原因と思われる小児虫垂炎症例は速やかな手術が望ましいと考えられた.