著者
加藤 洋介 尾山 佳永子 村杉 桂子 奥田 俊之 太田 尚宏 原 拓央
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.923-926, 2013-07-31
参考文献数
13

要旨:右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術既往歴がある急性胆嚢炎を2例経験した。症例1は70歳男性。無石胆嚢炎穿孔による胆汁性腹膜炎と診断。造影CT検査でグラフト血管の走行を確認し,緊急開腹手術を施行した。症例2は72歳男性。急性胆嚢炎(中等症)と診断し,保存療法を行った。血管再構成3D-CT検査でグラフト血管の走行を確認し,待機的に腹腔鏡手術を施行した。いずれも術中にグラフト血管を損傷なく確認し,合併症なく退院した。開腹,腹腔鏡下いずれの術式においても胆嚢摘出術を施行可能であったが,低侵襲性と,安全にグラフト血管を確認し得る点から,腹腔鏡手術の利点は大きいと思われた。右胃大網動脈によるバイパス術既往歴がある急性胆嚢炎に対しては,でき得る限り緊急手術を避け,十分な術前計画のもとに手術を施行することで,より安全性が担保されるものと思われた。
著者
吉田 周平 奥田 俊之 出村 嘉隆 加藤 洋介 太田 尚宏 原 拓央
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2321-2324, 2013 (Released:2014-02-25)
参考文献数
11

Müller管遺残症候群とは,Müller管抑制因子の欠損・作用障害によりMüller管由来組織である卵管,子宮,腟上部が遺残する稀な症候群である.患者は68歳男性,CT検査にて左鼠径ヘルニアを指摘された.自覚症状は鼠径部の膨隆のみ.30歳台に右鼠径ヘルニア手術の既往あり.鼠径管を開放すると腹腔内より子宮に酷似した腫瘤が脱出していた.腫瘤を剥離挙上すると,近接した精管・精巣動静脈に牽引されて陰嚢内より精巣が脱出した.ヘルニア門は小さく腫瘤は還納不能であった.精管,精巣動静脈は温存可能で腫瘤切除の方針とした.子宮頸部~腟上部に相当する部分は膀胱背側に連続していた.切除後は通常通り後壁を補強した.切除標本は筋腫を伴う双角様腫瘤であり,卵管様構造も伴っていた.組織学的に子宮および卵管と診断された.
著者
林 憲吾 羽田 匡宏 大島 正寛 加藤 洋介 小竹 優範 原 拓央
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.532-535, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は7歳,女児.前日より増悪する腹痛と発熱を主訴に当院小児科を受診し,急性虫垂炎の診断で当科に紹介となった.腹部CTでは,腫大した虫垂内に歯牙様の形態をした石灰化を伴う構造物を認め,歯牙迷入による急性虫垂炎を疑い同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂に穿孔はなく蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,型通りの虫垂切除術を施行した.摘出標本を開放すると9mm程度の歯牙を内部に認め,病理学的には壊疽性虫垂炎の所見であった.術後経過は問題なく,術後4日目で退院となった.異物による急性虫垂炎は比較的稀であり,その頻度は0.2~0.75%と報告されている.異物としては魚骨や義歯,種子などが多く,乳歯が誘因となった報告は検索した範囲では認めなかった.義歯や歯牙による異物性虫垂炎は穿孔しやすいという報告もあり,本症のように誤飲した歯牙が原因と思われる小児虫垂炎症例は速やかな手術が望ましいと考えられた.