著者
色川 俊也 黒澤 一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「化学物質過敏症」の病因を解明する目的で、気道の先天的生体防御反応である気道分泌との関連から検討を行った。気道での曝露刺激感受性部位と推定されるTRPV-1受容体を介した気道分泌物に注目して、可視的定量法を用いMCS患者の気道分泌による防御機構を検討した。 我々の実験結果から、TRPV1のアゴニストであるカプサイシン(10uM)の粘膜側添加は、軽度の分泌更新をもたらすこと、また、粘膜面をホルマリン(20ppm30-60分)に暴露した気道では分泌が一時的に亢進していルことが示された。これらのデータは、MCS患者の気道分泌が一時的に亢進している可能性を示唆している。
著者
色川 俊也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2186-2192, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
14

環境中の物質が人体に侵入する主たる経路である呼吸器では,吸入された10 μm以下のエアロゾルは気管・気管支に沈着し,さまざまな呼吸器疾患を誘発する要因となり得る.職場環境での吸入曝露によって発症する職業性呼吸器疾患は,喘息や過敏性肺炎のように,初回曝露から発症までの期間が比較的短いもの,じん肺や中皮腫のように,曝露から発症まで数十年を要するものがある.いずれも,曝露防止により発症を防ぎ得る疾患ではあるが,近年は,新たな化学物質や工業材料の開発によって,これまでの曝露対策では対応困難な例も発生している.職業性呼吸器疾患の予防には,労働者の啓発・教育はもちろん,有害性の高い物質の使用回避(代替),適正な作業環境や作業態様の管理を行い,曝露対策を徹底することが重要である.また,労働者の健康管理を継続的に展開することも重要である.