著者
色川 俊也 黒澤 一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「化学物質過敏症」の病因を解明する目的で、気道の先天的生体防御反応である気道分泌との関連から検討を行った。気道での曝露刺激感受性部位と推定されるTRPV-1受容体を介した気道分泌物に注目して、可視的定量法を用いMCS患者の気道分泌による防御機構を検討した。 我々の実験結果から、TRPV1のアゴニストであるカプサイシン(10uM)の粘膜側添加は、軽度の分泌更新をもたらすこと、また、粘膜面をホルマリン(20ppm30-60分)に暴露した気道では分泌が一時的に亢進していルことが示された。これらのデータは、MCS患者の気道分泌が一時的に亢進している可能性を示唆している。
著者
植木 純 神津 玲 大平 徹郎 桂 秀樹 黒澤 一 安藤 守秀 佐野 裕子 佐野 恵美香 石川 朗 高橋 仁美 北川 知佳 玉木 彰 関川 清一 吉川 雅則 津田 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.95-114, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
115
被引用文献数
10

呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.
著者
黒澤 一
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.98-103, 2021-04-10 (Released:2021-04-25)
参考文献数
20

COPDは代表的なたばこ疾患で,知らず知らずのうちに肺機能が低下する。高血圧,糖尿病,心疾患のなかに潜むことがあり,疑わしい症例には呼吸機能検査が必要である。一方,喘息は気道過敏性に抗原,運動,寒冷刺激,微粒子などが加わり,慢性の気道炎症を背景に平滑筋の収縮を伴う気道閉塞をきたす。現在世界中で流行している新型コロナウイルス感染症は,飲酒を伴う懇親会など5つの場面で感染リスクが高まることが指摘され,その重症化にCOPDが重要視され,重症化した患者では血管系の悪化が報告されている。また喘息患者は罹患しにくいという報告があるが,罹患時の重症化が指摘されており,COPD同様に注意が必要である。感染症の重症化を防ぐためには,禁煙のうえCOPDや喘息の治療を適切に行うことと,身体活動や規則正しい生活を維持して気道粘膜の自然免疫を高めることが肝要と考えられる。
著者
黒澤 一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-88, 2007-08-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
8

呼吸理学療法の効果に関して生理的な検証を目的とし,用手的呼吸介助手技を慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に行った.呼吸苦は緩和され,すべての肺気量は有意に減少したが,双方の変化量間の相関に有意性はみられなかった.口すぼめ呼吸時の呼吸抵抗を測定したところ,COPD重症者ほど抵抗が低下することがわかった.口すぼめ呼吸時に軟口蓋が鼻腔を塞ぐことを確かめた.呼吸理学療法の検証作業は今後も重要と考える.