著者
高橋 康夫 後藤 晋 笠原 久臣 犬飼 雅子 高田 功一 井口 和信 芝野 伸策
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, 2001
参考文献数
29

東京大学北海道演習林 (富良野市) において, 北海道の渓畔林の主要構成種で雌雄異株性の高木であるヤチダモ (<I>Fraxinus mandshurica</I> var. <I>japonica</I>) の性表現とサイズ構造を調査した。天然林に設定された岩魚沢大型試験地 (18.75ha) に存在する胸高直径5cm以上のヤチダモの場合, 個体数は未開花個体135 (19.6%),雌性個体293 (42.6%), 雄性個体260 (37.8%) であり, 開花個体の性比に1:1からの有意な偏りは認められなかった。未開花個体のサイズは開花個体よりも小さく, 開花個体のサイズ構造に雌雄差は認められなかった。27年生と50年生のヤチダモ人工林では, それぞれ525個体中4個体 (0.8%), 558個体中272個体 (48.7%) が開花していた。50年生人工林における未開花と開花個体あるいは雌雄ごとのサイズ構造は, 天然林と同様の傾向を示した。成長および形質が優れた優良木98個体の性比では, 雄性個体が有意に多いことが明らかとなった。ヤチダモは材質や通直性に優れた有用広葉樹であり,林業において性の取り扱いを検討する必要が示唆された。