著者
永竹 翔太 尾張 敏章 福士 憲司 笠原 久臣 渡邉 良広 井口 和信 犬飼 浩
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.215, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

ウイスキー樽用資材として国産ミズナラ材の需要が近年高まっている。樽材生産に適した径級や形質を持つミズナラ立木は、天然林内にごく少数が点在して生育する。熟練した森林技術者が樹幹の外観を観察し、長年の経験をもとに樽材適性を評価・判定した上で収穫木を選定している。これまで、天然生ミズナラ立木の樽材適性評価は技術者個人の暗黙知にとどまり、客観的な選木基準は明らかでなかった。そこで本研究では、熟練技術者によるミズナラ樽材候補木選定調査のデータを分析し、ウイスキー樽材適性評価に関する暗黙知の表出化を試みた。調査は東京大学北海道演習林の57林班で行った。胸高直径40 cm以上のミズナラ立木計744本のうち、95本が樽材適性有りと判定された。胸高直径と枝下高、樹幹外観の特徴(ねじれ、曲がり、傷、腐れ、コブ、枝・節)が樽材適性の有無に及ぼす影響を一般化線形モデルにより解析した。解析の結果、枝下高が高く、ねじれのないミズナラを樽材候補木として選定する傾向が認められた。一方、胸高直径および曲がり、コブ、傷、枝・節については、樽材適性の判定において有意な効果が検出されなかった。
著者
高橋 康夫 後藤 晋 笠原 久臣 犬飼 雅子 高田 功一 井口 和信 芝野 伸策
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, 2001
参考文献数
29

東京大学北海道演習林 (富良野市) において, 北海道の渓畔林の主要構成種で雌雄異株性の高木であるヤチダモ (<I>Fraxinus mandshurica</I> var. <I>japonica</I>) の性表現とサイズ構造を調査した。天然林に設定された岩魚沢大型試験地 (18.75ha) に存在する胸高直径5cm以上のヤチダモの場合, 個体数は未開花個体135 (19.6%),雌性個体293 (42.6%), 雄性個体260 (37.8%) であり, 開花個体の性比に1:1からの有意な偏りは認められなかった。未開花個体のサイズは開花個体よりも小さく, 開花個体のサイズ構造に雌雄差は認められなかった。27年生と50年生のヤチダモ人工林では, それぞれ525個体中4個体 (0.8%), 558個体中272個体 (48.7%) が開花していた。50年生人工林における未開花と開花個体あるいは雌雄ごとのサイズ構造は, 天然林と同様の傾向を示した。成長および形質が優れた優良木98個体の性比では, 雄性個体が有意に多いことが明らかとなった。ヤチダモは材質や通直性に優れた有用広葉樹であり,林業において性の取り扱いを検討する必要が示唆された。
著者
春日 速水 井口 和信 松井 理生 富樫 一巳
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.174-179, 2010-10-31

シラフヨツボシヒゲナガカミキリ成虫の日周性を明らかにするために,北海道で7月下旬と8月下旬に日中約1時間ごとにトドマツとエゾマツの切株上の成虫数と行動を観察した.晴れた日と薄曇りの日には,成虫は午前中に切株に出現しはじめ,個体数は午後に最大となり,その後減少した.このことから,成虫は昼行性であることが示された.性比は雄に偏っていた.多くの成虫は単独またはマウントをしながら静止していた.雨天時に成虫は出現しなかった.25℃,16時間明期8時間暗期の条件下では,成虫の行動に明期と暗期の間で有意な差は見られなかった.これまでに研究されたヒゲナガカミキリ属3種の比較から,ある種が野外条件下で昼行性であるか夜行性であるかは光条件ではなく,活動に適した体温によって決まることが示唆された.