著者
高橋 康夫 後藤 晋 笠原 久臣 犬飼 雅子
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.184-187, 2002-08-16
被引用文献数
2

日林誌84:184〜187,2002北海道富良野市の東京大学北海道演習林において,人工的に凸・平・凹部の三つの微地形を設定した地はぎ処理を1979年8月に行い,各微地形におけるエゾマツ実生の発生定着を22年間にわたり調査した。地はぎ処理を行った翌年の秋までに発生定着したエゾマツ実生の数は微地形によって有意に異なり,他の微地形に比べて平部で少なかった。凹部では最初多くのエゾマツ実生が発生したが,その後急激に減少し,最終的な調査である22年目に残存していたのはごくわずかであった。この要因は,暗色雪腐れ病菌が多く存在するリター層が凹部に堆積し,エゾマツ実生が暗色雪腐れ病に感染したためであると考えられた。本調査地では,地はぎ処理から22年目の現在でも,十分な量のエゾマツ後継樹が確保されており,微地形を設定した地はぎ処理はエゾマツ天然更新の補助作業として有効であると考えられた。現在のエゾマツは,混交したタケカンバの被陰下にあるため,ダケカンバの密度管理が今後の課題である。
著者
永竹 翔太 尾張 敏章 福士 憲司 笠原 久臣 渡邉 良広 井口 和信 犬飼 浩
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.215, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

ウイスキー樽用資材として国産ミズナラ材の需要が近年高まっている。樽材生産に適した径級や形質を持つミズナラ立木は、天然林内にごく少数が点在して生育する。熟練した森林技術者が樹幹の外観を観察し、長年の経験をもとに樽材適性を評価・判定した上で収穫木を選定している。これまで、天然生ミズナラ立木の樽材適性評価は技術者個人の暗黙知にとどまり、客観的な選木基準は明らかでなかった。そこで本研究では、熟練技術者によるミズナラ樽材候補木選定調査のデータを分析し、ウイスキー樽材適性評価に関する暗黙知の表出化を試みた。調査は東京大学北海道演習林の57林班で行った。胸高直径40 cm以上のミズナラ立木計744本のうち、95本が樽材適性有りと判定された。胸高直径と枝下高、樹幹外観の特徴(ねじれ、曲がり、傷、腐れ、コブ、枝・節)が樽材適性の有無に及ぼす影響を一般化線形モデルにより解析した。解析の結果、枝下高が高く、ねじれのないミズナラを樽材候補木として選定する傾向が認められた。一方、胸高直径および曲がり、コブ、傷、枝・節については、樽材適性の判定において有意な効果が検出されなかった。
著者
高橋 康夫 後藤 晋 笠原 久臣 犬飼 雅子 高田 功一 井口 和信 芝野 伸策
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, 2001
参考文献数
29

東京大学北海道演習林 (富良野市) において, 北海道の渓畔林の主要構成種で雌雄異株性の高木であるヤチダモ (<I>Fraxinus mandshurica</I> var. <I>japonica</I>) の性表現とサイズ構造を調査した。天然林に設定された岩魚沢大型試験地 (18.75ha) に存在する胸高直径5cm以上のヤチダモの場合, 個体数は未開花個体135 (19.6%),雌性個体293 (42.6%), 雄性個体260 (37.8%) であり, 開花個体の性比に1:1からの有意な偏りは認められなかった。未開花個体のサイズは開花個体よりも小さく, 開花個体のサイズ構造に雌雄差は認められなかった。27年生と50年生のヤチダモ人工林では, それぞれ525個体中4個体 (0.8%), 558個体中272個体 (48.7%) が開花していた。50年生人工林における未開花と開花個体あるいは雌雄ごとのサイズ構造は, 天然林と同様の傾向を示した。成長および形質が優れた優良木98個体の性比では, 雄性個体が有意に多いことが明らかとなった。ヤチダモは材質や通直性に優れた有用広葉樹であり,林業において性の取り扱いを検討する必要が示唆された。
著者
小島 康夫 安井 洋介 折橋 健 寺沢 実 鴨田 重裕 笠原 久臣 高橋 康夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.337-341, 2006-10-01 (Released:2008-01-11)
参考文献数
38
被引用文献数
3 4

東京大学北海道演習林では, 積雪期にエゾシカによる激しい樹皮剥ぎが発生し, おもに小径の樹幹が剥皮される。この演習林では, イタヤカエデ, イチイ, イヌエンジュ, ウダイカンバ, エゾマツ, オヒョウ, シウリザクラ, シラカンバ, ハリギリ, ハルニレ, ミズナラ, ヤチダモが森林施業や保全の上で重要である。われわれは, これら12樹種小径樹幹の内樹皮成分を分析し, 各成分とエゾシカの樹皮嗜好性との関連を検討した。エゾシカはイヌエンジュに対して低嗜好性を示したが, この樹種はアルカロイドを含む唯一の種であった。他の11樹種に関しては, エゾシカの樹皮嗜好性に対して灰分含有割合が正の, 酸性ディタージェントリグニン含有割合が負の関係をそれぞれ示した。