著者
杉原 辰哉 山陸 孝之 山本 美幸 藤田 和絵 門永 陽子 芦田 泰之
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.349-357, 2023-07-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
9

心電図について講義を行った救急救命士および救急隊員に対しアンケート調査を実施し,救急現場における疑問点や需要を明らかにした。対象は島根県内の消防本部に所属する救急救命士62名,救急隊員20名。病院前12誘導心電図(PH-ECG)の現状と重要性,モニターおよび12誘導心電図の装着方法とコツ,頻出する心電図の判読,急性心筋梗塞の心電図判読,頻脈性不整脈の心電図判読について講義を実施した。アンケート内容については,上記講義内容の理解度についての回答とST変化の評価,脚ブロックとの鑑別,鏡面現象の理解について回答を設定した。職種別の認知度と理解度の違いは,全ての質問項目において救急隊員に比べ救急救命士が有意に高値であった。項目別の認知度の違いは,ST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値であった。救急救命士と救急隊員は共通してST変化の評価は理解できているが,脚ブロックとの鑑別における知識は不十分な傾向にあり,救急現場で誤った判読をしてしまう可能性もある。理解度が低かった項目に重点を置いて講義内容を作成し,理解を深め,救急救命士および救急隊員と病院間における報告や連携の質の向上に繋げていく。
著者
芦田 泰之
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-15, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
17

平成24 年から28 年までの5 年間に,人口約20 万人の地方都市にある二次救急医療機関である当院に心肺停止を理由に搬送された院外心肺停止299 例を検討した.心拍再開率は27.4 %,1 ヵ月生存率は3.0 %,社会復帰率は1.7 %であった.病院到着後は平均25 分の心肺蘇生術が行われていた.病院到着時の心電図波形が心静止,心室細動,心室頻拍の症例では社会復帰例はなかった.一方,搬送中に心拍再開し,病院到着時に洞調律であった症例で社会復帰が認められた.病院到着時に心静止であることのみを心肺蘇生術を中止する理由としてはならないが,要因のひとつとはなると考えられた.
著者
芦田 泰之
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-10, 2014 (Released:2019-07-17)
参考文献数
8

平成19 年頃から救急搬送受入不応需,いわゆる「たらい回し」が社会問題となってきた.当院では平成20 年から救急搬送不応需に関する統計をとってきたが,この2 年で不応需例が急増した.そこで過去5 年間の不応需の不応需理由等について検討した.結果,「心肺停止(CPA)症例対応中を含む複数患者受入中」,「当該科医師対応不能」,「救急病棟・集中治療室(ICU)満床」の増加が主因であった.この結果は,当院に特異的なものでなく,日本全国の救急医療機関に共通するものであった.救急医療需要過多と供給不足の問題は,簡単に解決できるものではないが,それぞれの地区の事情に応じて,行政,医療機関,住民が一体となっての救急医療に取り組むことが必要であろう.