著者
東梅 貞義 佐藤 哲 前川 聡 花輪 伸一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.102-105, 2002-11-15

渡り鳥とその生息地の保全は、比較的長い国際的な歴史を持つ。本報告では渡り鳥の中でもっとも長距離の渡りを行う鳥類グループのひとつであるシギ・チドリ類の保全をケーススタディとして取り上げ、地球規模の環境問題解決の視点と地域レベルで取り組む視点の現状と保全を推進するために必要な条件の検証を行う。1995年にアジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略が提唱され、96年に東アジアオーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワークが新たな国際的渡り鳥保全の枠組みとして発足した。日豪政府とNGOである国際湿地保全連合(WI)が中心となり、発足当時から日本国内の研究者、政府機関、環境NGOの幅広い参加と支持を得てこれまで実施されてきた。シギ・チドリ類は、多国間にわたる広大な範囲の生息地を必要とし、特定の時期に特定の地域の生息地を利用する必要がある。例えばホウロクシギ(全長63cm)は3月中旬にオーストラリアを出発し、3、4月に中継地の日本などの干潟に渡来し休息と採食を行い、5月には繁殖地のロシア極東部に到達する。繁殖終了後の秋期になると、非繁殖期(越冬期)を過ごすため日本などを経由しながら南半球へと渡り、年間往復2万5千キロを超す長距離を移動する。
著者
清野 聡子 足利 由紀子 山下 博由 土屋 康文 花輪 伸一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1136-1140, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
10

生物相や環境変遷の自然史文献がない海域では, 環境の基礎情報が決定的に不足しており, 管理や保全の計画の立案のための基礎情報がない. 瀬戸内海西部周防灘は豊かな生態系に恵まれているが自然史情報が欠落している. 大分県中津干潟では市民が中心となり研究者が支援する環境調査活動が行われている. その結果にもとづき, 無堤地区の海岸環境保全策の提言が行われた. 港湾開発時の環境アセスメント結果は広く公開されなかったため, 干潟の広域的な情報が含まれていたが活用され得なかった. 地域住民の主体的な調査は, 地元での環境学習や永続的環境管理の動機付けとなる. 今後は官学民の調査の各々の特性を活かした補間関係による情報の重層化と活用が不可欠である.