著者
永野 昌博 足利 由紀子
出版者
大分大学教育福祉科学部
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.257-269, 2015-10

干潟は高い生物多様性や生態系サービスを有す一方,様々な開発圧に曝されている。また,干潟は地元住民,漁師,行政,開発業者など様々な立場の人たちの利害関係とも深く関わっている。そのため,保全か開発かの二者択一の議論では干潟の諸問題を解決することは困難である。本研究は,このような複雑な問題を題材とした持続可能な社会(開発と保全)の在り方を考える授業プログラムの開発を行った。授業プログラムは,大学生12 名を対象に,事前調べ学習,干潟での自然観察(遊び)と生物多様性調査,ワークショップの3 つの構成で行った。構成それぞれで干潟への関心や知識に関するアンケート調査を実施し,それらの効果を検証した。生物多様性調査の結果,19 種の絶滅危惧種を含む47 種の生物を採集することができた。アンケート調査の結果,受講者は,授業の進行に連れて,干潟の知識の向上,干潟を必要と思う気持ちの向上などがみられた。また,ワークショップを通じ,干潟に対する自分の考えを見つめ直し,他者の考えを受け入れ,議論を重ねたことで,干潟の景観や生物のことだけなく,干潟を取り巻く社会情勢や干潟の価値や役割など様々なことを多角的,俯瞰的,総合的に思考し,理解する機会が得られたと考えられた。Although mudflats have many ecological functions and high biodiversity, they are exposed to the pressure of development. Such a situation provides suitable materials for education for sustainable development (ESD). As there has been no practical study of ESD on mudflats, we have therefore created the learning program of ESD on mudflats. The program is divided into three parts: investigative learning, nature observation meetings and field research on mudflats, and workshops in the classroom. Students were answered a questionnaire after each part. The results of field research, 47 species of animals, including 19 species of endangered species were collected. The results of the questionnaire showed that, as the program progressed, so the knowledge and interest of students in mudflats increased. Furthermore, through the workshop, students were able to share various ideas regarding mudflats.
著者
酒井 和也 宇多 高明 足利 由紀子 清野 聡子 山本 真哉 三原 博起 沖 靖弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1075-I_1080, 2011

大分県中津干潟の三百間地区の砂州においては、隣接する蛎瀬川の河口閉塞が著しいことから、対策として河口前面の堆積土砂を除去する一方、その砂を三百間砂州の西部へ運んで養浜するというサンドリサイクルの計画が立てられた。養浜砂は、三百間砂州の頂部から3600m<sup>3</sup>浚渫され、西端の斜路前に投入された。その際、投入砂が先端部へと急速に戻るのを防止するために、砂州の中央部に袋詰め石製の長さ24mの突堤が設置された。本研究では、この間、2007年から2010年までに4回の空中写真撮影と縦断形測量を行って海浜状況の変化を調べ、サンドリサイクルの効果と沿岸漂砂の制御を目的とした袋詰め石突堤の効果を調べた。この結果、袋詰め石突堤は延長が短く天端高も低いことから、既存の突堤と比較して、緩やかな汀線変化をおこすことがわかった。
著者
清野 聡子 足利 由紀子 山下 博由 土屋 康文 花輪 伸一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1136-1140, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
10

生物相や環境変遷の自然史文献がない海域では, 環境の基礎情報が決定的に不足しており, 管理や保全の計画の立案のための基礎情報がない. 瀬戸内海西部周防灘は豊かな生態系に恵まれているが自然史情報が欠落している. 大分県中津干潟では市民が中心となり研究者が支援する環境調査活動が行われている. その結果にもとづき, 無堤地区の海岸環境保全策の提言が行われた. 港湾開発時の環境アセスメント結果は広く公開されなかったため, 干潟の広域的な情報が含まれていたが活用され得なかった. 地域住民の主体的な調査は, 地元での環境学習や永続的環境管理の動機付けとなる. 今後は官学民の調査の各々の特性を活かした補間関係による情報の重層化と活用が不可欠である.