- 著者
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横井 尚子
石川 正治
加納 章子
芳川 洋
市川 銀一郎
- 出版者
- 順天堂大学
- 雑誌
- 順天堂医学 (ISSN:00226769)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.2, pp.185-193, 2003-07-31
目的:音響外傷による急性感音難聴の薬物治療には,ビタミン剤・循環改善剤等とともに,ステロイドホルモンの投与が多く行われており,特にステロイドホルモンで高い臨床効果が得られている.ステロイドホルモンは鼓室内投与によって内耳障害に治療効果を示すと報告されている.そこでわれわれは急性音響外傷モデルを作成し,デキサメタゾンの鼓室内投与の効果を聴性脳幹反応(以下ABR)および蝸牛神経複合電位(以下CAP)を指標に検討した.対象:鼓膜正常,プライエル反射正常のハートレー系モルモット(体重約400g) 方法:全身麻酔の後,局所麻酔下に気管切開し,筋弛緩剤を投与し人工呼吸管理下においた.両側の中耳骨胞を開放し,鼓室内に銀ボール電極を設置した.音響負荷としては,耳介側方3cmの位置より105dBSPL,4kHz純音を30分間与えた.音響負荷後同一個体の一側の鼓室内にデキサメタゾンを,対照として反対側の鼓室内に生理食塩水を鼓室内に充満するよう投与した.10分後薬液を除去した.音響負荷前,負荷直後,薬剤投与直後,音響負荷1時間後・2時間後のABRのI波潜時,蝸牛神経複合電位(CAP)のN1の潜時・振幅・閾値について検討した.結果:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.しかし各個体毎に検討するとABRのI波・CAP潜時の改善がより多く認められ,ステロイドの効果が示唆された.結論:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.