著者
古川 朋靖 渡辺 道隆 山川 卓也 正木 義男 加納 昭彦 市川 銀一郎
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.480-486, 1998 (Released:2009-10-13)
参考文献数
15

IntroductionFor transcranial magnetic stimulation of the facial nerve, a magnetic coil is fixed to the temporal region over the nerve. It has been reported that the facial nerve can be stimulated at the distal part of the auditory canal, and it is expected that the peripheral vestibular organs are included in the time-varying magnetic field. We examined the influence of magnetic stimulation on the peripheral vestibular organs using a stabilometer.MethodsExperiments were carried out on 10 healthy adults. Magnetic stimulation was administered to the temporal region including the peripheral vestibular organs and stabilometry was performed before and after stimulation. We used a G5500 system stabilometer (Anima Co.) with a sampling time of 20 msec. and recorded body sway for 60 sec. A Mag lite (Dantec Co.) was used for magnetic stimulation and a Synax ER 1100 (NEC-Sanei Co.) was used as the trigger. The stimulus was set at 4 Hz and stimulation was done 60 times. The output was set at about 40% of 1.9 Tesla (maximum output).ResultsWe analyzed the body sway length, 8-directional body sway velocities, and the power spectrum of the lateral body sway velocity. The total length of body sway and the velocity of lateral sway increased significantly after magnetic stimulation.
著者
市川 銀一郎
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.635-641, 2012 (Released:2013-03-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1

リアルタイムで情報が双方向性に交錯し, 人々のコミュニケーションがこの最新情報をもとになされることが多くなった。老若男女を問わずそのQuality of Lifeはコミュニケーションの内容の充実度により大きく左右される。本稿では, 聴覚障害者が受ける可能性のあるハンディキャップについて考え聴覚障害者のバリアフリーに寄与する具体的な可能性を論じ, 聴覚障害を専門分野とする我々が臨床の場で行ないうる難聴者のバリアフリー獲得に寄与しうる実際的な方法の一端について論ずる。また, 東日本大震災における聴覚障害者の問題点にも触れてみたい。高齢化社会で増加している聴覚障害者のQOLを高めるよう努力することが我々にとりさらに大きな課題となっている。補聴器や人工内耳などの純粋な医療機器以外のいわゆる “補聴支援機器” について適格な情報を共有し, 臨床の場で役立てることが望まれる。
著者
正木 義男 古川 朋靖 渡辺 道隆 市川 銀一郎
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.891-897, 1999-07-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

はじめに: 鼻副鼻腔手術後のガーゼ抜去時に患者が失神様の発作を起こすことがある. この状態は神経原性失神の1つである三叉・迷走神経反射が原因と言われている. 三叉神経が刺激されることにより, 迷走神経が反応して心拍数, 血圧が急激に低下する現象であるが, 我々は疼痛や緊張で上昇するアドレナリン (Adrenaline, 以下Adr. と略す) に着目し, ネコ10匹を使用して迷走神経反射におけるAdr. の効果を調べた.目的: 迷走神経刺激時にAdr. が脳血流に及ぼす影響を調べる.対象と方法: 実験には成猫10匹を用いた. 頸部で迷走神経を露出し, 末梢側に白金電極を装着した. さらに頭部を30度挙上した. コントロール群 (迷走神経を1分間電気刺激). Adr. +神経刺激群 (Adr. を30秒間静注した後, 迷走神経を1分間電気刺激) の2群に分け, 刺激前後の前庭神経核, 下オリーブ核, 小脳室頂核の脳血流量, 及び心拍数, 動脈圧を比較した. 脳血流の測定には水素クリアランス法を使用した.結果: コントロール群, Adr. +神経刺激群ともに刺激前と比較し, 刺激後は有意に脳血流量が低下した. さらに, 両群の脳血流量の変化を比較したところ, いずれの部位においてもAdr. +神経刺激群の方が, コントロール群と比較し有意に脳血流量が低下していた. 心拍数, 動脈圧についてはコントロール群は刺激後有意に低下したが, Adr. +神経刺激群では, より大きな脳血流量低下があったにもかかわらず有意な変化はなかった.考察: Adr. +神経刺激群ではAdr. のβ2作用で末梢欠陥抵抗が低下し, 迷走神経を電気刺激した際に, より大きな脳血流量低下が起きたのではないかと考えられた. この結果より疼痛や緊張で上昇したAdr.が, 三叉・迷走神経反射による脳血流量低下を増強しているのではないかと考えられた.
著者
山川 卓也 芳川 洋 飯村 尚子 都丸 香織 市川 銀一郎
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.261-270, 1998-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

耳鳴は患者の心理的な要素が強く, 客観的な評価を行うことは難しい。このため耳鳴研究会により, 耳鳴に関する患者の訴えと医師側にとって重要な情報が十分客観的に得られる事を目的として, 標準耳鳴検査法1993が作成され, 臨床で利用されている。今回我々は, この耳鳴検査法と臨床的な利点, 問題点につき検討を加えた。対象は耳鳴を主訴として当科を受診した症例で男性: 55名, 女性: 52名の107名を対象として, まず標準純音聴力検査から聴力型 (無難聴型・高音漸傾型・高音急墜型・低音障害型・水平型・山型・Dip型・聾型・分類不能型) に分類した上で, 臨床的な有用性について検討した。結果として, 本検査法により患者の耳鳴をかなり的確に, かつ客観的に捉えることが可能であった。聴力型別に分けて検討することで, 耳鳴の特徴が捉えやすくなり, 耳鳴を医師がより正確に認識するのに役立ち, 本検査法の有用性を再確認した。
著者
福田 正弘 市川 銀一郎 原田 克己 芳川 洋
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.654-658, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

The influence of the sleep stage upon the morphology and the response threshold of the acoustically evoked 40Hz ERP (Event Related Potential) was studied. The results were as follows:(1) The amplitude of the 40Hz ERP was most prominent when the subjects were awake, and during their sleep state, the amplitude of the response dicreased as they fall into the deep stage.(2) The response threshold of the 40Hz ERP in the awake state was 10±5.5dB and in the sleep stage, 24±4.6dB. These facts suggested that the threshold discrepancy was approximately 13dB and it seemed quite stable among subjects.(3) These data drow our attention to apply the 40Hz ERP for screening test of hearing evaluation.
著者
市川 銀一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.65-84, 1972-01-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
34

骨導音を頭蓋半球の或る部位に与えると, その音を反対側の耳で知覚することがある.この現象を骨導における交叉感覚といい, 1864年にLucaeにより始めて明らかにされた現象である. この交叉感覚について, 臨床的に正常聴力を有する症例, また, 一側性, あるいは両側性に伝音障害のある症例等につき, いかなる状態にあるかを検討した. さらに, 動物実験的に, 蝸牛電位を指標としてこの現象を客観的にとらえてみた.方法: まづ臨床的に, 被検者67名について, 各頭蓋半球を一定の基線のもとに, 各々54に区分し, 各々の部位に250Hz, 800Hz共域値上10dB, 20dB, 時に30dBの骨導音を与え, その音を左右いずれの耳にて知覚するかを調べ, 交叉感覚を示す頭蓋骨上の部位を検討した.また, 動物実験においては, 成熟描を用い, 正円窓窩より, 一側性または両側性に蝸牛電位を導出しつつ, 頭蓋骨上の各部位に与えた骨導音刺激に対する蝸牛電位の変化を観察記録した.結果: 臨床的には, 両側聴力正常者では, 左右半球いずれにも交叉感覚を有する部位が一定の範囲に認められること, 個人差がかなり有ること. また, 左右半球にて必ずしも対称的でないこと, 周波数により交叉感覚を有する部位が異ること, などを認めた. 次に, 一側または両側の伝音障害が認められる症例にては, 原則として聴力良好なる半球ではほとんどの部位で交叉感覚が認められるのに対し, 聴力の悪い半球では交叉感覚を有する部位はあまり認められなかった.動物実験では, 両側伝音器が正常な場合, 両側耳介後上部に蝸牛電位上の交叉現象陽性部位が認められた. また, 鼓膜, 耳小骨を順次破壊することにより伝音器障害を起させると, 伝音器の正常側から障害側えの交叉が, より大きな電位差として現われ, 障害側から正常側えの交叉は認められなくなった.
著者
横井 尚子 石川 正治 加納 章子 芳川 洋 市川 銀一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.185-193, 2003-07-31
参考文献数
9

目的:音響外傷による急性感音難聴の薬物治療には,ビタミン剤・循環改善剤等とともに,ステロイドホルモンの投与が多く行われており,特にステロイドホルモンで高い臨床効果が得られている.ステロイドホルモンは鼓室内投与によって内耳障害に治療効果を示すと報告されている.そこでわれわれは急性音響外傷モデルを作成し,デキサメタゾンの鼓室内投与の効果を聴性脳幹反応(以下ABR)および蝸牛神経複合電位(以下CAP)を指標に検討した.対象:鼓膜正常,プライエル反射正常のハートレー系モルモット(体重約400g) 方法:全身麻酔の後,局所麻酔下に気管切開し,筋弛緩剤を投与し人工呼吸管理下においた.両側の中耳骨胞を開放し,鼓室内に銀ボール電極を設置した.音響負荷としては,耳介側方3cmの位置より105dBSPL,4kHz純音を30分間与えた.音響負荷後同一個体の一側の鼓室内にデキサメタゾンを,対照として反対側の鼓室内に生理食塩水を鼓室内に充満するよう投与した.10分後薬液を除去した.音響負荷前,負荷直後,薬剤投与直後,音響負荷1時間後・2時間後のABRのI波潜時,蝸牛神経複合電位(CAP)のN1の潜時・振幅・閾値について検討した.結果:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.しかし各個体毎に検討するとABRのI波・CAP潜時の改善がより多く認められ,ステロイドの効果が示唆された.結論:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.
著者
山川 卓也 芳川 洋 安藤 一郎 市川 銀一郎
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.284-290, 1995
被引用文献数
1

剣道愛好家の中に, 難聴者が多いと言われている。我々は剣道難聴の原因を検討するために, 面打ち時の竹刀の打撃音, 頭部の衝撃 (振動加速度レベル), 及び両者の周波数分析を行った。また実験には当大学剣道部員 (三段) 2名の協力を得て, 竹刀の打撃時の強さ, 部位をなるべく一定にするよう練習をした後に行った。その結果, 竹刀の打撃音圧は面紐を強く縛った場合が120dB以上で最も大きく, エアークッションをいれるとやや小さくなった。また振動加速度レベルも面紐を通常よりも強く縛った場合が77dB以上で最も大きく, エアーや羽毛のクッションをいれた場合に振動の抑制が著明であった。以上より, 竹刀による打撃により難聴が発症する可能性が十分に示唆され, 今回我々の推奨した緩和材を用いれば打撃音圧と衝撃が減少させることが可能であった。
著者
市川 銀一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.145-156, 2003-07-31
被引用文献数
1

当教室では内耳から聴中枢に至る各種情報を電気生理学的,またそれに準ずる手法の内から,非侵襲的に得られる聴性誘発反応・脳電図・双極子追跡・fMRIなどを用い《聴え》を見ることにより,聴覚障害の精密な部位診断法確立を目的として検討を行ってきた.聴覚情報は聴器から聴覚中枢路を上行し,聴中枢を経て言語中枢などに情報を提供する.1970年代よりmedical electronicsの発展が聴覚情報についての微細な検討を可能にした.1997年には日本脳波・筋電図学会(現日本臨床神経生理学会)による各種の誘発電位測定指針作成に当たり,当教室は聴性誘発電位の測定指針の作成を担当した.現在,わが国で実施されている本反応検査はこの指針に従っている.われわれは聴覚情報が内耳から聴中枢に上行する過程を連続的に<見る>ため対数時間軸表示による記録を行い臨床応用している.脳電図(脳等電位図;Brain mapping)は頭皮上に投影される電位分布を見ることにより聴覚路の動態を知る手がかりとなり,当教室はわが国で最も早くその研究に着手した.双極子追跡(Dipole tracing)は音の情報が上行する過程につき連続的にその位置,方向などを<見る>ことができる.fMRIでは聴皮質近傍の情報に限られるが,純音と語音とでは優位半球が異なるなど感音難聴における語音明瞭度の低下に関する病態を<見る>方法としての可能性を秘めている.これらの手法は,いづれも利点・欠点を有するが中枢聴覚路の病態を論ずる場合,有用な情報を提供してくれる.一方,耳音響放射(Otoacousitic emission;OAE)は蝸電図と共に詳細な内耳機能を非観血的に<見る>ことができる安定した現象である.近年,急速に臨床応用が成されている.途半ばではあるが,聴覚障害の詳細な病態をreal timeで<見る>ことにより速やかな診断・治療が行われる時代が近づいている.《聴え》を見ることは生涯の夢である.
著者
深本 克彦 市川 銀一郎
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.773-779, 1995-06-01
被引用文献数
30 11

Advanced deep neck infection (ADNI) can spread into spaces and cause death rapidly. In 1990 we reported a case of ADNI secondary to tonsillitis, with general deterioration due to duodenal perforation and liver cirrhosis. Since then there have been also many case reports on ADNI, and which some patients have died.<br>To determine the rational treatment of ADNI, 55 cases were collected from the literature in Japan and were analyzed statistically.<br>It was conclusions that the most important point is the prevention of the spread of infection, especially downward into the mediastinum. Drainage by a vertical incision is useful, and effective antibiotics must be administered such as clindamycin, lincomycin, cefmetazole, sulbenicillin or imipenem/cilastacin. Special care is needed in the treatment of elderly patients and those with diabetes other diseases in which immunity is reduced.
著者
横井 尚子 石川 正治 加納 章子 芳川 洋 市川 銀一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.185-193, 2003-07-31

目的:音響外傷による急性感音難聴の薬物治療には,ビタミン剤・循環改善剤等とともに,ステロイドホルモンの投与が多く行われており,特にステロイドホルモンで高い臨床効果が得られている.ステロイドホルモンは鼓室内投与によって内耳障害に治療効果を示すと報告されている.そこでわれわれは急性音響外傷モデルを作成し,デキサメタゾンの鼓室内投与の効果を聴性脳幹反応(以下ABR)および蝸牛神経複合電位(以下CAP)を指標に検討した.対象:鼓膜正常,プライエル反射正常のハートレー系モルモット(体重約400g) 方法:全身麻酔の後,局所麻酔下に気管切開し,筋弛緩剤を投与し人工呼吸管理下においた.両側の中耳骨胞を開放し,鼓室内に銀ボール電極を設置した.音響負荷としては,耳介側方3cmの位置より105dBSPL,4kHz純音を30分間与えた.音響負荷後同一個体の一側の鼓室内にデキサメタゾンを,対照として反対側の鼓室内に生理食塩水を鼓室内に充満するよう投与した.10分後薬液を除去した.音響負荷前,負荷直後,薬剤投与直後,音響負荷1時間後・2時間後のABRのI波潜時,蝸牛神経複合電位(CAP)のN1の潜時・振幅・閾値について検討した.結果:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.しかし各個体毎に検討するとABRのI波・CAP潜時の改善がより多く認められ,ステロイドの効果が示唆された.結論:潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.