- 著者
-
芳本 信子
- 出版者
- 学校法人滝川学園 名古屋文理大学
- 雑誌
- 名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.141-149, 1996
近年, 日本の食文化は「飽食」「食の簡便化」「外食化」あるいは「食の外部化」などの流行語に左右されるような食生活の変容がみられる.この現象は, 1960年頃からの産業構造の高度化と家庭の幸せを重視したマイファミリー家族の誕生した時代に由来する.加工技術の進歩によって開発されたインスタント食品, また, 1985年秋から始まった肉類や乳製品の輸入枠の拡大による異食文化との接触やマス・メディアによる多彩な情報によって, 生活はますます豊かになった.そして, これらに深く関わっていると考えられるのが, 象徴的に増加を続ける動物性脂肪である.それは同時に潜在性疾患に続く, 慢性疾患(成人病)の増加を招き, 疫学的調査においても, それらは相関関係にあることが立証されるようになった.厚生省をはじめとする各省は危機感をもって, 日本国民全体の食生活の内容を指導する提言をまとめた.このような日本における食文化の変容の過程に介在する人間(特に母親)が環境と主体的にかかわる生活の中で, いかに食文化変容にかかわっているのかの検討を各種, 文献を用いて試みた.母親を通して, 好ましい食文化が, 各世代ごとに適切に認識されることは, 個人の健康のみならず, 社会全体の健康を約束することになるからである.