著者
若生 謙二
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-12, 1982-07-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

本研究では, 最初に動物園史の時代区分を行い, 各時代の特性を個別に論及した。次に各時代の相互の関連性を動物園観を媒介としてとらえ, 歴史的全体像と動物園観の形成過程について論述した。その結果, 動物園の歴史的展開過程は遊園地型動物園の系譜と近代動物園を指向する系譜の2軸型の発展構造としてとらえられ, 従来の研究において欠落していた花鳥茶屋などの見世物園地と電鉄系の遊園地型動物園は前] 者の系譜に位置つくという歴史的な全体像を明らかにした。動物園を娯楽的施設とみる動物園観の形成過程は, このような2つの系譜を軸とする発展構造のなかから生み出されたものと考察された。
著者
若生 謙二
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.31-36, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

アメリカの動物園で生態的展示が発達してきた経緯を明らかにするために, アメリカの動物園史の時代区分を行い, その史的全体像の把握を試みた。 ハーゲンベックのパノラマ様式をとりいれることにより発達した生態的展示は, その後, 動物地理学的配列の制約と近代主義の影響をうけたが, バイオームの概念をとりいれることにより, 生息地別配列にもとづく生態主義の時代をむかえた。 その起源は, アメリカ自然史博物館のジオラマ展示にみることができた。またアメリカでは, 初期に移動動物園をともなったサーカスが人気を博していたため, 動物園をショーの世界と同一視する動物園観が永く定着していた。
著者
若生 謙二
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.473-476, 1998-05-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

近年, アメリカの動物園で展開されている生態的展示の動きは, 1976年に提唱されたランドスケープ・イマージョンの概念に大きな影響をうけている。本論では, この概念とこれを生み出したアメリ力社会における環境認識と動物観の変容過程の関係についての考察を行った。展示空間での観客と動物の相対的な位置関係は, 動物の価値を認識する上で重要であり, 従来の動物園展示では観客が優位で動物が劣位の位置に配されているのに対し, 生態的展示では逆の位置関係にある。それは動物の生息する権利や生息地の価値に対する理解を図ろうとするものであり, 人間中心主義から生命中心主義への環境認識の変化に裏づけられたものであった。
著者
石田 敢 亀山 章 高柳 敦 若生 謙二
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.19-24, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

日本人の動物観をとらえるために, 動物に対する態度の類型化を行った。 動物に対する態度は, 動物に関する職業や運動についている専門家が最も極端なものをもっていると考えられることから, 専門家に対するヒアリング調査とアンケート調査を実施することによって, 日本人の動物観の極限としての輪郭の把握を試みた。この調査はS. ケラートがアメリカ人に対して行った調査と同様の方法で行ったが, 審美的態度については日本人とアメリカ人とでは内容が異なることが明らかにされた。 また, 日本の専門家は自然主義的態度と生態学的態度を強くもっている者が多いことが明らかにされた。
著者
神吉 紀世子 若生 謙二 宗田 好史
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.483-488, 1999-03-30
参考文献数
18
被引用文献数
5 6

本研究では, 都市近郊の農漁村から日本有数の公害地域へと環境の激変した大阪市西淀川区を対象に, 居住者個人の記憶の蓄積に着目し, ヒアリング法により公害の被害の進展と自然環境・自然遊びの減少の関係をとらえ, 環境変容の過程とそれに対する意識の発掘を試みた。その結果, 遊びの変化と公害への意識の変化について, 昭和10年頃以前, 昭和10年代~30年代半ば, 昭和30年代後半~40年代, 昭和50年代以降, の4つの時代区分に応じた遊び場所や自然遊びにおける自然との関わりの変化, 公害被害への意識の違い, 地域環境の変容の契機に特徴がみられた。
著者
高柳 敦 若生 謙二 石田 敢 亀山 章
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.25-30, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1 3

日本人の動物観をとらえるために, 動物に対する態度の類型化の調査をもとにして, アンケートによる全国調査を行った。 アンケートの設問は, S.ケラートがアメリカ人に対して行った同様な調査の設問を日本人に適するような内容に改めて用いた。日本人の動物観の特徴を動物に対する態度からみると, 審美的態度がもっとも高く, ついで宿神論的態度と倫理的度が高い。 このことから動物に対して心理的・情緒的態度が強いことがわかる。 また, 自然主義的態度や生態学的態度などの客観的・論理的態度は相対的に少なく, 実用的態度や支配者的態度などの動物を即物的に扱おうとする態度は少ないことが明らかにされた。
著者
若生 謙二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-12, 1982-07-31
被引用文献数
1 1

本研究では,最初に動物園史の時代区分を行い,各時代の特性を個別に論及した。次に各時代の相互の関連性を動物園観を媒介としてとらえ,歴史的全体像と動物園観の形成過程について論述した。その結果,動物園の歴史的展開過程は遊園地型動物園の系譜と近代動物園を指向する系譜の2軸型の発展構造としてとらえられ,従来の研究において欠落していた花鳥茶屋などの見世物園地と電鉄系の遊園地型動物園は前者の系譜に位置づくという歴史的な全体像を明らかにした。動物園を娯楽的施設とみる動物園観の形成過程は,このような2つの系譜を軸とする発展構造のなかから生み出されたものと考察された。