著者
東 久美子 塚川 佳美 近藤 豊 Dallmayr Remi 平林 幹啓 尾形 純 北村 享太郎 川村 賢二 本山 秀明 的場 澄人 青木 輝夫 茂木 信宏 大畑 祥 森 樹大 小池 真 小室 悠紀 對馬 あかね 永塚 尚子 繁山 航 藤田 耕史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2014年春にグリーンランド氷床北西部のSIGMA-Dサイトで225メートルの深さまでのアイスコアが掘削された。積雪のアルベドに影響を及ぼす物質として注目されているブラックカーボン(BC)の変動を高時間分解能で復元するため、国立極地研究所で開発されたアイスコア連続融解析装置(CFA)を用いてこのコアの深度6~113mを高時間分解能分析した。CFAはアイスコアを融解しながら連続的に分析する方法であるが、融解部に接続したWide-Range SP2 (Single Soot Photometer)によりBCを分析した。コアの上部6mは空隙の多いフィルンであり、CFAを用いることができなかったため、約5cmの長さ毎に切り、試料表面の汚染を除去して融解した後、SP2で分析した。主としてナトリウムイオン濃度と酸素同位体比の季節変動を利用してこのコアの年代決定を行い、1年を12に分割して月毎の変化を調べた。ブラックカーボンの質量濃度と数濃度はともに1870年頃から増加し始め、1920~1930年頃にピークを迎えたが、その後減少に転じた。1870年頃からの濃度の増加は、化石燃料の燃焼によって発生する人為起源のブラックカーボンがグリーンランドに流入したためであると考えられる。化石燃料起源のBC濃度の増加に伴ってBCの粒径が大きくなる傾向が見られた。これはグリーンランドに到達する化石燃料起源のBCの粒径が森林火災起源のものよりも大きいことを示唆している。BC濃度の季節変動を調べたところ、BC濃度の増加は主に秋~冬に生じていることが分かった。また、人為起源のBCの影響がない時代にはBC濃度は夏にピークを示していたが、人為起源のBCが多量に流入した時代には冬にピークを示していたことも分かった。夏にはしばしばBCが短期間だけ50µg/Lを超える高濃度になることがあったが、これは森林火災によるものと考えられる。本発表では、SIGMA-Dコアの結果を他のグリーンランドコアと比較して議論する。
著者
茂木 信宏
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大気中の黒色炭素(BC)エアロゾル(微粒子)の形状の分析法の開発は、人為起源エアロゾルの気候影響や微粒子計測技術の分野では最先端かつ重要な研究課題である。本研究では微粒子から放出される熱輻射光の方位.偏光依存性を記述する一般理論(Rytov理論)を実験的に検証することにより、BCの形状分析が可能な新しい原理を提唱した。Rytov理論によって推定されるように、光波長よりも小さなサイズの微粒子についても放出される熱輻射光の方位依存性.偏光状態が粒子形状によって決定されることを実証した。
著者
茂木 信宏
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

平成19年4-8月雑誌論文(Journal of Aerosol Science)の執筆この論文では、レーザー光散乱法で従来では不可能であった、蒸発性粒子の散乱断面積を計測するための新たな手法を発表した。この方法を応用することにより、大気中のブラックカーボンの被覆状態を定量的に計測することを可能にした。平成19年9-11月学位論文(理学博士)の執筆平成19年12月-平成20年2月従来のレーザー白熱による煤エアロゾル測定器の信号処理回路、計測ソフトウェアを独自に発案、設計、製作し、従来よりも検出粒径範囲を大幅に拡張した。このことにより、レーザー白熱法による煤エアロゾルの検出粒径範囲の広さで世界一を達成した。平成19年3月上記の改良した世界最高性能の煤エアロゾル測定器がNASAの北極での航空機観測プロジェクトARCTASに採用されたため、この期間渡米し、NASAの航空機(DC-8)内において測定器のメンテナンス・オペレーションに携わった。この観測を通じて最先端の航空機観測技術、世界最大規模の共同観測研究がどのように進められるかを学んだ。また、この観測により、地球上で最も温暖化の著しい北極域における煤の気候影響を評価するための詳細なデータを取得した。