著者
荻野 竜也
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3+4, pp.133-143, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
19

【要旨】実行機能を中心に、神経心理学的検査の発達的研究と、発達障害を対象とした神経心理学的研究の知見をいくつか紹介した。発達的研究では、多くの検査得点に明瞭な発達的変化が認められ、しかも特に強い変化を示す年齢域は検査得点によって異なることが示された。特定の検査得点と他の検査得点の相関を検討すると、被験者の年齢群によって相関を示すかどうかが異なる場合があり、検査結果の解釈に注意が必要である。ADHDとPDDを対象とした研究では、多くの検査得点が対照群との差を示すだけではなく、そのプロフィールは病型によって異なっていた。就学前の複数の検査得点を用いて就学後の読字能力を予測でき、発達性読字障害のリスクを早期に判断できる可能性が示された。年齢に応じた標準得点を揃えることが難しく、また年齢ごとの各検査得点が反映する認知機能が十分に明らかにされていないことが今後の課題である。また、発達障害の諸病型に関して検査の感受性や特異性に多くを期待できず、臨床上の重要性は限られそうである。
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 三宅 馨 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.421-426, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
14

6~14歳のIQを統制した無投薬の注意欠陥/多動性障害児23名と, 年齢および性を一致させた健常児69名を対象に改訂版Stroopテストを行った. 全注意欠陥/多動性障害群は, 干渉効果を評価するIncongruent Color Naming (ICN) およびICN-Color Naming (CN) の課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認めた. さらに, サブタイプ別の検討でも, 学習障害併存症例を除外した15名での分析の結果, 不注意優勢型群と多動性-衝動性優勢型および混合型合併群ともに, ICN-CNの課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認め, 不注意に関わる要因の干渉課題成績への影響が示唆された.
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.426-430, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
19

改訂版Stroopテストにおける年齢別の標準値を得るとともに, 干渉効果に関する指標の発達的変化について検討することを目的とし, 6~20歳までの健常児 (者) 281名を対象に検査を行った. Incongruent Color Naming (ICN), ICN - Color Naming (CN), ICN/CNなどの干渉効果に関する各指標の年齢による変化について単回帰分析を行った. その結果, 各指標において年齢による変化を認め, 各指標成績が示す最良値は16~17歳台であることが示され, 干渉課題の遂行には, 発達の完了が遅い脳局在や機能システムが関与していることが示唆された.
著者
荻野 竜也
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.56-61, 2007 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20

【要旨】広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、発達性言語障害などの内、知能障害が無いか軽いものを軽度発達障害と呼ぶ。発達障害は基本的には行動特徴によって定義されている。したがって、詳細な行動の観察や病歴の聴取が重要であり、幅広く情報を収集する必要がある。診断の補助ツールとして種々の質問紙や構造化面接法が考案されているが、日本語に翻訳された感受性と特異性が高いものはない。多くの患者では何らかの共存症を認めることに留意する必要がある。診断には必須ではないが、療育や教育の計画に神経心理検査は有用である。障害毎のWISC-III得点プロフィールの特徴はある程度は認められるが、個人差が大きい。