著者
加戸 陽子
出版者
関西大学人権問題研究室
雑誌
関西大学人権問題研究室紀要 (ISSN:09119507)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.61-82, 2022-03-31

書字の問題は限局性学習症以外の神経発達症をともなう子どもにおいても指摘されている。そこで書字技能および各神経発達症における書字のつまずきに関する論文のレビューを行い、書字技能の発達過程と技能の諸側面に関連する認知・運動機能および、つまずきの特徴と背景要因についての研究動向を整理した。自閉スペクトラム症(ASD)では、部分に対する知覚・認知が優勢であるとする報告や、実行機能の状態、ASD症状および不注意症状の程度が文字の大きさや判読性のみならず書字速度や協調運動にも影響をおよぼすことが指摘されており注目された。注意欠如・多動症では、判読性の問題に関する指摘が多く、ワーキングメモリーや不注意症状との関連が示されている。また、発達性読み書き障害では書字困難の背景に視覚認知の問題の影響を指摘する報告が散見され、視覚認知に関するアセスメントによる確認が重要と考えられた。発達性協調運動症では書字のつまずきの背景に運動パターン形成の困難が推測されている。書字のつまずきの背景要因は各神経発達症によって異なり、併存症状がある場合にはこれらの要素が単独もしくは複合的に影響することも推測される。これらの報告は従来から特別支援教育で指摘されている、つまずきの特徴を明確化し、個に適した支援につなげることの重要性を裏付けるものと考えられる。
著者
加戸 陽子
出版者
関西大学
雑誌
關西大學文學論集 (ISSN:04214706)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.93-106, 2007-07

注意欠陥/多動性障害や広汎性発達障害などの発達障害をともなう子どもへの適切な教育を行う特別支援教育のための個々のニーズの適切な実態把握が必要とされている。本論文では客観的な評価手法の1つとして子どもへの適用が検討されているウィスコンシンカード分類テストやストループテストなどの各種神経心理学的検査について,その諸特性と本邦での動向を概観した。わが国の各検査の子どもにおける標準化は未だ十分ではなく,臨床応用には発達的変化の検討や標準値の作成が進められることが課題と考えられた。
著者
加戸 陽子 松田 真正 眞田 敏
出版者
岡山大学教育学部学術研究委員会
雑誌
岡山大学教育学部研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.35-42, 2004-03-10

ウィスコンシンカード分類テスト(WCST)には種々の手法があり,これらの異なる手法に基づく研究成績の解釈は必ずしも容易ではない。そこで,本研究はWCSTの諸手法の変遷を整理するとともに,脳機能画像研究によるWCST遂行中の脳機能局在の解明に関する研究および発達障害への臨床応用に関する研究動向についても展望することを目的とした。WCSTは1948年のBergによる最初の報告以降,反応カード数や教示法,評価手続きなどの違いによる種々の異なる手法が存在し,さらにコンピューターによる新たな形式が開発されており,従来の手法との検査成績の異同の解明は未だ不十分である。画像検査では前頭連合野の背外側部における活性化が示され,ワーキングメモリーや抑制系との関連が推測された。発達障害児・者を対象とした臨床応用では,障害種および亜型による成績の相違や発達的変化などに関する知見が報告されているが,手法の違いに基づく違いについても考慮する必要性が指摘された。
著者
加戸 陽子 眞田 敏 齋藤 公輔 眞田 敏
出版者
関西大学人権問題研究室
雑誌
関西大学人権問題研究室紀要 (ISSN:09119507)
巻号頁・発行日
no.66, pp.1-21, 2013-09

Aspergerが自閉的特徴に関する最初の報告を行った人物であるという認識は広まりつつある。本論文では、1930年代のオーストリアにおいて治療教育の拠点となり、Asperger自身も主任を務めたウィーン大学小児病院治療教育部門への、Michaelsによる視察の報告を中心にその取り組みを概観した。また、1938年のAspergerの講演論文中の自閉的精神病質と思われる1症例に関する記述部分を邦訳し、その臨床像の解釈を行った。さらに、米国で最初に自閉症に関する報告を行ったKannerの見解に対するAspergerの論文の影響についても論じた。
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 三宅 馨 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.421-426, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
14

6~14歳のIQを統制した無投薬の注意欠陥/多動性障害児23名と, 年齢および性を一致させた健常児69名を対象に改訂版Stroopテストを行った. 全注意欠陥/多動性障害群は, 干渉効果を評価するIncongruent Color Naming (ICN) およびICN-Color Naming (CN) の課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認めた. さらに, サブタイプ別の検討でも, 学習障害併存症例を除外した15名での分析の結果, 不注意優勢型群と多動性-衝動性優勢型および混合型合併群ともに, ICN-CNの課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認め, 不注意に関わる要因の干渉課題成績への影響が示唆された.
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.426-430, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
19

改訂版Stroopテストにおける年齢別の標準値を得るとともに, 干渉効果に関する指標の発達的変化について検討することを目的とし, 6~20歳までの健常児 (者) 281名を対象に検査を行った. Incongruent Color Naming (ICN), ICN - Color Naming (CN), ICN/CNなどの干渉効果に関する各指標の年齢による変化について単回帰分析を行った. その結果, 各指標において年齢による変化を認め, 各指標成績が示す最良値は16~17歳台であることが示され, 干渉課題の遂行には, 発達の完了が遅い脳局在や機能システムが関与していることが示唆された.
著者
加戸 陽子 齋藤 公輔 Johannes Plan 眞田 敏
出版者
関西大学人権問題研究室
雑誌
関西大学人権問題研究室紀要 (ISSN:09119507)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.1-21, 2013-09-30

Aspergerが自閉的特徴に関する最初の報告を行った人物であるという認識は広まりつつある。本論文では、1930年代のオーストリアにおいて治療教育の拠点となり、Asperger自身も主任を務めたウィーン大学小児病院治療教育部門への、Michaelsによる視察の報告を中心にその取り組みを概観した。また、1938年のAspergerの講演論文中の自閉的精神病質と思われる1症例に関する記述部分を邦訳し、その臨床像の解釈を行った。さらに、米国で最初に自閉症に関する報告を行ったKannerの見解に対するAspergerの論文の影響についても論じた。