著者
金 貞姫 菊地 良介 鈴木 敦夫 度會 理佳 横山 覚 森瀬 昌宏 八木 哲也 松下 正
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-561, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
5
被引用文献数
3

新型コロナウイルス感染症に対する抗体検査試薬は,SARS-CoV-2のnucleocapsid protein(N)あるいはspike protein S1 domain(S)を抗原として用いた2種類に大別される。本研究では,抗SARS-CoV-2抗体検査について,5社7種類のイムノクロマト法キットと3社4種類の自動分析装置用試薬による比較検討を行った。対象のイムノクロマト法キットとして,Kurabo社,RayBiotech社,Innovita Biological Technology社,LumiQuick Diagnostics社およびLepu Medical Technology社のキットを使用した。自動分析装置用試薬はAbbot社,Roche Diagnostics社,Ortho-Clinical Diagnostics社の測定試薬を用いた。対象試料には,COVID-19と診断された患者2例の検査後残血清を使用した。その結果,N 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬ではIgG抗体はIgM抗体に比して早期に陽性を示し,S 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬はIgM,IgG抗体両方が感染早期より検出可能であった。以上より,COVID-19のスクリーニング検査としてはS蛋白を標的とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬が有用である可能性が示唆された。
著者
菊地 良介 金 貞姫 鈴木 敦夫 度會 理佳 横山 覚 齋藤 尚二 八木 哲也 松下 正
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.546-553, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の補助診断法として血清学的診断法が期待されている。抗SARS-CoV-2抗体試薬は,SARS-CoV-2のspike protein S1 domain(S)とnucleocapsid protein(N)に対する抗体を検出する2種類に大別される。今回我々は,COVID-19と診断された症例の経時的試料を用いて,SとN抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬の検証を行った。S抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は,EUROIMMUN S-IgA,IgG試薬とVITROS S-total,IgG試薬を使用した。N抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は,ARCHITECT N-試薬とcobas N-試薬を使用した。その結果,来院時点(第X病日)からEUROIMMUN S-IgA試薬によるIgA抗体は陽性であった。第X + 5病日よりVITROS S-total試薬による抗SARS-CoV-2抗体は陽性となり,第X + 8病日よりARCHITECT N-試薬によるIgG抗体は陽性であった。本症例において,S抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は早期より抗SARS-CoV-2抗体が陽転化した。特に,抗SARS-CoV-2 S-IgA抗体はCOVID-19の早期補助診断に有用な可能性が示唆された。
著者
山本 晃士 西脇 公俊 加藤 千秋 花井 慶子 菊地 良介 柴山 修司 梛野 正人 木内 哲也 上田 裕一 高松 純樹
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.36-42, 2010 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10
被引用文献数
14 17

<背景・目的>手術関連死亡の最大原因は術中の大量出血であるが,その背景には外科的手技による止血が不可能な希釈性凝固障害という病態が存在する.したがって術中の大量出血を未然に防ぐには止血のための輸血治療が必要であり,その治療指針の確立が急務である.<方法・結果>術中の大量出血・大量輸血症例を後方視的に調査した結果,その60%強を胸部大動脈瘤手術,肝臓移植術,肝臓癌・肝門部癌切除術が占めていた.術中大量出血の背景にある止血不全の主要因は,出血量の増加にともなう凝固因子(特にフィブリノゲン)の喪失,枯渇であると考えられた.そこで上記症例の手術中に起こった低フィブリノゲン血症に対し,クリオプレシピテートおよびフィブリノゲン濃縮製剤の投与を行ったところ,速やかなフィブリノゲン値の上昇と止血の改善,および術中出血量・輸血量の顕著な減少(平均で30~40%減)を認めた.<結論>術中の出血量増加時には,フィブリノゲン値を確認した上で速やかにフィブリノゲン濃縮製剤を投与することが,大量出血・大量輸血を未然に防ぎ,手術患者の予後改善に大きく貢献するとともに,血液製剤の使用削減・有効利用につながると考えられた.