著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.165-170, 2015

本研究は,九州地方におけるアイヌ語系地名の残存の可能性について,福岡県の「志登」地名を事例として,若干の考察を行うものである。具体的には,先行研究の成果を述べ,地図,景観写真,文献資料の情報をもとにアイヌ語系地名の可能性について検証した。志登は,アイヌ語地名の可能性が高いと考えられる。その理由として,アイヌ語説の意味となる「峰」や「舌状丘陵」の双方の可能性を含む点を挙げることができる。加えて,志登一帯は,交易地であり,他地域からの文化的要素を流入しやすい地理的環境も有していた。他方,日本語説で考えた場合,志登は,「湿地」や「川の下流」の意味としても一致する。よって,福岡県の志登は,語源をアイヌ語説から日本語説に転化となった地名の可能性がある。
著者
今野 洋子 尾形 良子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-10, 2009

本研究は,大学生が関わる動物介在教育(Animal Assisted Education,以下AAEと表記する)実践として,大学祭において実施した「猫カフェ」における体験が,来場者の気分に及ぼす影響を分析することを目的とした。大学祭における猫カフェに訪れた計114名(男性30名・女性84名,平均年齢21.0±6.83歳)を対象に質問紙調査を実施し,以下の諸点を把握した。1.来場者の86.0%に動物の飼育経験(26.5%に猫の飼育経験)があり,動物に興味関心のある者が猫カフェに訪れた。2.猫カフェでの体験は,「触った」(72,8%),「見た」(65.8%)が多く,「一緒に遊んだ」(19.3%)や「抱っこした」(7.0%)は少なく,「抱っこした」者には,猫の飼育経験を持つ者が多かった。3.来場者の感想の「かわいかった」(71.1%)から猫の愛らしさ,「癒された」(63.2%),「和んだ」(60.5%)等からリラクセーション効果,「ふわふわしていた」(50.9%)「やわらかかった」(44.7%)等からのリラクセーションに結びつく触感,「楽しかった」(34.2%)「うれしかった」(30.7%)から喜びが得られた。4.猫を「触った」「抱っこした」「一緒に遊んだ」者は,直接的な触感の心地よさやリラクセーション効果が得られたが,猫を「見た」だけでも,リラクセーション効果が得られた。5.「猫カフェ」という場で初めて出会った猫に対して,来場者はリラクセーション効果を得,喜びを感じていた。6.猫カフェで過ごしたことによって,動物を飼いたいと思う者が増加した。これらの結果から,「猫カフェ」滞在型AAEは,初めて会う猫であっても,来場者の気分に影響を及ぼし,リラクセーション効果につながること,および動物飼育に対する興味関心が高まることが示された。How people feel when they visit a cat caf? Students held a cat cafdesigned for AAE (animal assistededucation) at a university festival. Participants were 114 guests (84 women and 30 men: mean age 21 years)who visited the cat cafand responded to a questionnaire. The results indicated the following. From thesample, 98 guests (86.0%) had kept a pet and 26 (26.5%) among them had kept cats. In the caf, 83 guests(72.8%) touched the cats, 75 guests (65.8%) watched the cats and 22 guests played with the cats, whereasonly 8 guests held the cats in their arms. The guests had feelings such as "cats are lovely," " felt healed bycats," " felt harmonious with cats," "cats were light," " cats were soft," "were happy with cats," and "werejoyful with cats". These feelings were indicative of relaxation. Even those who interacted with cats for thefirst time in the cat caffelt relaxed. The guests tended to want to keep pets as a result of the experienceof visiting the cat caf
著者
梶 晴美 高波 千代子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.5-14, 2012

本稿は,フィンランドのパーソナル・アシスタンス(PA)制度の制定経緯とそれに対する当事者運動のかかわり,および2008年12月に改正されたフィンランドの障害者のためのサービス及び援助法について,新PA制度の内容,特に改正による障害者,行政,ソーシャルワーカーへの影響について,2011年1月に実施した現地での聞き取り調査をもとに検討した。1987年の障害者のためのサービス及び援助法制定時も2008年の法改正にも障害者団体の運動が強く影響していると考えられた。特に,最初の法制定時は障害者団体が単体で運動していたものが,2005年以降複数の種別の異なる障害者団体がネットワークを築いたことが,2008年の法改正,PA 制度義務化への大きな原動力になったと思われる。改正法での新PA 制度は,理念として障害者の自己決定権をより強く打ち出しているものの,実際には雇用者モデル以外では自己決定権が十分保障されているとは言い難く,雇用者としての義務と責任を果たすことが難しい人への支援策も十分ではないと思われた。国民性の違いを考慮すると一概には言えないが,雇用者の義務と責任を第三者がどのように支援すれば,雇用者モデルでPA を利用できるようになるのかを検討することに意義はあるだろう。また,新PA で課せられたサービス計画の策定は,ソーシャルワーカーがゲートキーパーとなり自治体の支出をコントロールする重要な役割を負っている反面,ワーカーにとっては非常に負荷の大きい作業であり,策定後のモニタリング不足などの課題があることが示唆された。
著者
玉木 裕
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.69-81, 2009

過去3度のOECD による「生徒の学習到達度調査」(PISA)で,日本の順位は低下し続けている。このため,従来から論じられてきた学力低下問題はもとより,「学力」そのものを問いなおす気運が生まれている。もっとも,「学力」ということばは漠然としたもので,人によりその解釈がさまざまである。果たして,PISA で問われている「学力」とは,どのようなものだろうか。本小論は,これからの社会で求められる「学力」について,特にPISA の結果をふまえ,国際比較で上位国であるフィンランドの教育思想に関連させながら考察する。そして,そこから導き出された理念を音楽科教育において適用するとともに,その姿を生涯学習の視点からとらえ直し,望ましい音楽科教育のあり方を考えようとするものである。Japan has moved down the ranking list of the Programme for International Student Assessment (PISA)conducted by OECD the last three times the assessment has been administered. For that reason, a tendencyto question "academic ability" itself has arisen, as well as problems of declining academic ability, which hasbeen argued. However, because the term "academic ability" itself is ambiguous, its interpretation differsamong observers. What is "academic ability" has become an issue for the PISA.This paper presents examination of "academic ability" required for applicability to future society, based onPISA results in particular, relating to educational thought in Finland, which has attained a high ranking incrossnational comparisons. Subsequently, we intend to apply the ideas derived from that investigation.Additionally, we examine ideal music education through reconsideration of it from the perspective of lifelonglearning.
著者
飯田 昭人 野口 直美 斉藤 美香 丸岡 里香 川崎 直樹
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-65, 2014

本研究報告は,平成26年1月11日(土)に開催されたポルト市民講座『青年期の自殺予防を考える』における3名の話題提供者の文章を加筆修正して,研究報告としてまとめたものである。そもそもこの市民講座は,丸岡里香准教授が代表を務める「思春期教育グループ」と,飯田昭人が代表を務める「学生支援グループ」との共催で開催されたものである。本講座では,特に若者の自死・自死念慮にまつわる思いや背景について考えていくことを目的とし,テーマは「自殺予防」であるが,自殺を"させない"ための対策というよりも,若者年代の人間に自分自身の人生をいかにして生きてもらうか,死を選択する気持ちになってしまった若者に対して私たち大人はどうあるべきかなどを率直に考える時間にしたいと考え,企画したものである。話題提供者は,思春期教育グループより旭川東栄高校で養護教諭をされている野口直美氏に,学生支援グループからは北海道大学保健センター講師でカウンセラーをされている斉藤美香氏に,日ごろの臨床実践を語っていただいた。そして,両グループを代表して,学生支援グループの飯田昭人より,自殺問題に関する統計資料における自殺問題の特徴やいくつかの提言をしたものが本報告に収録されている。なお,当日は約50名の参加者の方々にお越しいただき,質疑応答も多く活発な議論ができたことを付言し,自殺予防活動に少しでも寄与できればと思い,改めてここに当日の市民講座でのやりとりを再現したいと考える。
著者
島津 彰
出版者
北翔大学北方圏学術情報センター
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.41-55, 2017

日本においてキリスト教の禁教が解かれた直後の明治期に,一農村に成立したハリスト正教会(ギリシャ正教,ロシア正教との呼称もある)の歴史を社会的な事象の中で俯瞰する。教会創立の根底には深い信仰がある事は言うまでもないが,キリスト教への理解が十分でない明治初期に,因習の残る農村地帯で教会の基盤を作り,幾多の困難を乗越えて発展を遂げ,特に日露戦争時には敵国の宗教と思われていた逆境を逆手にとって,日露戦争の俘虜への信仰慰安事業に参加し,俘虜への国際法を遵守する中で,日本の近代化の一翼を担い日本の結んだ不平等条約解消への役割を果たした正教会の活動を検証する。この検証は異なる宗教・文化に対して自国中心主義が勢いを増している世界にあって,マイノリティの立場の人々の自国の発展への寄与を顧みる時,多様性が実は豊かさを保障するものである事に気づく。同時に他宗教・他文化に属する人々が取り組んでいる事象の本質を冷静に見つめる事の大切さを示唆する。
著者
今野 洋子 尾形 良子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-10, 2009

本研究は,大学生が関わる動物介在教育(Animal Assisted Education,以下AAEと表記する)実践として,大学祭において実施した「猫カフェ」における体験が,来場者の気分に及ぼす影響を分析することを目的とした。大学祭における猫カフェに訪れた計114名(男性30名・女性84名,平均年齢21.0±6.83歳)を対象に質問紙調査を実施し,以下の諸点を把握した。1.来場者の86.0%に動物の飼育経験(26.5%に猫の飼育経験)があり,動物に興味関心のある者が猫カフェに訪れた。2.猫カフェでの体験は,「触った」(72,8%),「見た」(65.8%)が多く,「一緒に遊んだ」(19.3%)や「抱っこした」(7.0%)は少なく,「抱っこした」者には,猫の飼育経験を持つ者が多かった。3.来場者の感想の「かわいかった」(71.1%)から猫の愛らしさ,「癒された」(63.2%),「和んだ」(60.5%)等からリラクセーション効果,「ふわふわしていた」(50.9%)「やわらかかった」(44.7%)等からのリラクセーションに結びつく触感,「楽しかった」(34.2%)「うれしかった」(30.7%)から喜びが得られた。4.猫を「触った」「抱っこした」「一緒に遊んだ」者は,直接的な触感の心地よさやリラクセーション効果が得られたが,猫を「見た」だけでも,リラクセーション効果が得られた。5.「猫カフェ」という場で初めて出会った猫に対して,来場者はリラクセーション効果を得,喜びを感じていた。6.猫カフェで過ごしたことによって,動物を飼いたいと思う者が増加した。これらの結果から,「猫カフェ」滞在型AAEは,初めて会う猫であっても,来場者の気分に影響を及ぼし,リラクセーション効果につながること,および動物飼育に対する興味関心が高まることが示された。
著者
佐々木 浩子 木下 教子 高橋 光彦 志渡 晃一
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-16, 2013

大学生の睡眠の質と生活習慣及び精神的健康との関連を明らかにすることを目的として,北海道及び東北の大学生に「生活習慣と精神的健康状態に関する調査」を実施し,男女差及び睡眠障害の有無による比較及び検討を行った。 その結果,男子に比較して,女子では起床時刻が早く,食事の規則性などが良好で,喫煙や飲酒の習慣のある者や運動習慣のある者の割合が低いものの,ストレスの自覚の割合が高く,睡眠時間が短いなど男女の生活習慣に有意な差があることが明らかとなった。しかし,睡眠の質の評価としたPSQI-J の総得点および総得点により群分けした睡眠障害の有無の割合では男女差は認められなかった。 睡眠障害の有無による比較結果から,睡眠に関して問題をもつ者は,定期的運動習慣のある者の割合が低く,喫煙習慣のある者の割合が高く,遅い就床時刻,短い睡眠時間,長い入眠時間で,食生活に対する意識も低いなど,生活習慣においても良好な状態になく,同時に精神的な問題も抱えていることが示唆された。また,睡眠に関する問題は男女差なく,大学生の多くが共通して抱えている問題であることが明らかとなり,睡眠と生活のリズムに関する教育の必要性があるとの結論を得た。
著者
尾形 良子 今野 洋子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.101-108, 2009

本研究は北海道における特別養護老人ホームでの動物介在活動の実施状況や評価および未実施の施設の認識を把握することを目的とした。研究の結果明らかになったことは以下の点である。・道内の特別養護老人ホームの中で22施設において動物介在活動を実施している。・すべての実施施設で動物介在活動の効果があると回答されていた。
著者
大宮司 信
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.35-40, 2015

関西にある円応教を対象とし,教祖が体験した神がかりがどのように継承され,どのように変容していったかを,「修法」という同教団の宗教儀礼を通して検討した。