著者
福井 幸太郎 菊川 茂 飯田 肇 後藤 優介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100277, 2015 (Released:2015-04-13)

はじめに 「新湯」は立山カルデラの底にある熱水をたたえる池で現在の立山の火山活動の中心である地獄谷の南3.5 kmに位置する。かつてのマグマ水蒸気爆発でできた小規模な火口湖で直径は30 m、水深は5.6 m、表層の水温は65~70℃である。池中央にある複数の噴出口から熱水が湧出し続けているため常に満水で、熱水は北側の切れ口から溢れだし、立山カルデラ内を東西に流れる湯川に流れ込む。 近年、噴気や地熱活動が活発化している地獄谷周辺と異なり、新湯では水位や水温に全く変化がみられなかった。ところが2014年春先から突如激しい水位や水温の変動を起こすようになった。本発表では2014年6月中旬~10月末に発生した水位と水温変動について報告する。 方法 ・水位の変化を明らかにするため池の岸にインターバルカメラを設置して30分間間隔で湖面を連続撮影した。観測期間は2014年6月11日~10月29日である。 ・水温の変化を明らかにするために水深30 cmと水深2 mに自記温度計を用いて10分間隔で水温の連続観測を実施した。観測期間は2014年6月15日~10月29日である。 結果 ・インターバルカメラの画像の分析から、2014年6月11日~10月29日に新湯は合計11回干上がったり満水になったりを繰り返していたことが分かった(図1)。満水の熱水は噴出口に吸い込まれて1日で完全に排水し、干上がった状態が3~4日続いた後、噴出口から熱水が湧き出して4~5日で再び満水の状態に戻った。したがって、2014年春先から新湯は熱水をたたえる池から間欠泉に変化したといえる。 ・2014年6月15日~10月29日までの満水時の新湯の水温は平均で74℃であった(図2)。2006年10月22日~2007年8月9日の新湯の水温(水深30 cm)は平均64℃で(図2)、平均水温は10℃も上昇した。
著者
福井 幸太郎 菊川 茂 飯田 肇 後藤 優介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

はじめに<br>&nbsp;2014年5~6月,立山カルデラの温泉の池「新湯」で湯枯れが発生し湖底が干上がった.6月13日なると温泉が再び湧出して水位が上昇,6月15日にはもとの温泉の池にもどった.新湯が一時的に干上がることは数十年前から富山県内の山岳関係者の間で指摘されていた.しかし,写真などの記録は無く,現地で確認できたのは今回が初である.本発表では,湯枯れの発生と温泉の再湧出による水位回復の経過について報告する.<br><br>新湯について<br>新湯は立山カルデラ内を流れる湯川左岸に位置する直径約30 m,水深約5 mの円形の火口湖.もともと冷水の池であったが1858(安政5)年の安政飛越地震(M7.3~7.6)の際の激しい揺れによって熱水が湧き出したとの伝承がある.現在も約70℃の湯が湧出している.希少な玉滴石(魚卵状蛋白石=オパール)の産出地で2013年10月17日に国の天然記念物に指定された. <br><br>湯枯れと温泉再湧出の経過<br>・2014年4月15日:立山砂防事務所撮影の航空写真から新湯では温泉が湧出しており水位も平年通りであることを確認.<br>・5月13日:博物館撮影の航空写真から新湯が干上がっていることを確認.<u>このため,新湯は</u><u>4</u><u>月</u><u>15</u><u>日~</u><u>5</u><u>月</u><u>13</u><u>日の間に干上がったと考えられる.<br></u><u></u>・6月11日:<u>現地にて新湯が完全に干上がっていることを確認(図</u><u>1a</u><u>).</u>池の最深部(水深約5 m)に直径1 m程の凹みが3つあり活発に湯気を噴き上げていたが温泉の湧出はなかった.<br>・6月13日:立山砂防事務所より新湯で再び温泉湧出がはじまったとの連絡が入る.<br>・6月15日:現地にて池の最深部付近から温泉が湧出しており水位が元のレベルまで回復していることを確認(図1b).水位は<u>6</u><u>月</u><u>13</u><u>日~</u><u>15</u><u>日の</u><u>3</u><u>日間程で元のレベルで回復したといえる.</u>湯温は池の切れ口付近で72.6℃と干上がる前と同程度だった.<br><br>謝辞<br>今回の調査は国土交通省立山砂防事務所の協力・支援によって実現しました.お礼申し上げます.
著者
福井 幸太郎 菊川 茂 飯田 肇 後藤 優介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.77, 2014 (Released:2014-10-01)

はじめに 2014年5~6月,立山カルデラの温泉の池「新湯」で湯枯れが発生し湖底が干上がった.6月13日なると温泉が再び湧出して水位が上昇,6月15日にはもとの温泉の池にもどった.新湯が一時的に干上がることは数十年前から富山県内の山岳関係者の間で指摘されていた.しかし,写真などの記録は無く,現地で確認できたのは今回が初である.本発表では,湯枯れの発生と温泉の再湧出による水位回復の経過について報告する.新湯について新湯は立山カルデラ内を流れる湯川左岸に位置する直径約30 m,水深約5 mの円形の火口湖.もともと冷水の池であったが1858(安政5)年の安政飛越地震(M7.3~7.6)の際の激しい揺れによって熱水が湧き出したとの伝承がある.現在も約70℃の湯が湧出している.希少な玉滴石(魚卵状蛋白石=オパール)の産出地で2013年10月17日に国の天然記念物に指定された. 湯枯れと温泉再湧出の経過・2014年4月15日:立山砂防事務所撮影の航空写真から新湯では温泉が湧出しており水位も平年通りであることを確認.・5月13日:博物館撮影の航空写真から新湯が干上がっていることを確認.このため,新湯は4月15日~5月13日の間に干上がったと考えられる.・6月11日:現地にて新湯が完全に干上がっていることを確認(図1a).池の最深部(水深約5 m)に直径1 m程の凹みが3つあり活発に湯気を噴き上げていたが温泉の湧出はなかった.・6月13日:立山砂防事務所より新湯で再び温泉湧出がはじまったとの連絡が入る.・6月15日:現地にて池の最深部付近から温泉が湧出しており水位が元のレベルまで回復していることを確認(図1b).水位は6月13日~15日の3日間程で元のレベルで回復したといえる.湯温は池の切れ口付近で72.6℃と干上がる前と同程度だった.謝辞今回の調査は国土交通省立山砂防事務所の協力・支援によって実現しました.お礼申し上げます.

1 0 0 0 OA 立山火山

著者
中野 俊 奥野 充 菊川 茂
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.Supplement, pp.S37-S48, 2010 (Released:2012-01-26)
参考文献数
58
被引用文献数
1 4

立山火山は20数万年前に活動を始めた複合火山である.現在,北東端の地獄谷で活発に噴気活動が続く.火山噴出物の分布域から見ると地域的には弥陀ヶ原地域と五色ヶ原地域に大別され,両者の間を浸食カルデラの立山カルデラが隔てる.カルデラ内では1858年飛越地震により山体崩壊が発生し,その未固結堆積物は日常的に崩壊が著しく,土砂流出を防ぐための大規模な砂防工事が明治時代以来盛んに行われている.日本地質学会主催による立山火山あるいは立山カルデラに関する見学旅行は,近年だけでも1966年,1990年,2001年に実施されている.今回は,交通の便がよい弥陀ヶ原地域を巡って火砕流・溶岩流・テフラ層の観察を行なう.特に称名滝火砕流堆積物のさまざまな岩相,また,水蒸気爆発による完新世テフラを観察する.カルデラ縁の展望台からは,カルデラ及び五色ヶ原地域の噴出物を遠望する.