著者
村田 亜悠美 小尾 信子 中平 比沙子 宮原 龍郎 落合 宏
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-49, 2008-03

ホタテ貝殻焼成粉末(HSSP)の殺菌および殺インフルエンザウイルス作用を検討した.微細HSSP(平均粒径3.5μm:f-HSSP)の0.15%生理食塩水懸濁液に5分接触させた場合,大腸菌の生残菌数は検出限界以下であったが,緑膿菌と黄色ブドウ球菌の生残率は,それぞれ3×10-3%と2.5%であり,大腸菌に最も強く殺菌作用を示した.f-HSSP,粗製HSSP(平均粒径18.4μm:c-HSSP),酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの0.15%生理食塩水懸濁液はほぼ同じpH(12.6~12.76)を示した.しかし,これら4試薬の大腸菌に対する経時的殺菌力を比較したところ,5分接触では全ての試薬においても生残率は検出限界以下であったものの,2分より短い接触時間域でf-HSSPが他3試薬より10~1000倍強い殺菌作用を示した.さらに,f-HSSP生理食塩水懸濁液は,濃度と接触時間依存的にインフルエンザウイルスA型PR8株とB型Sing株の感染性を失活させた.しかし,f-HSSP(37℃,30分接触)は少なくともA型PR8株の赤血球凝集活性には影響を与えなかった.0.75%生理食塩水懸濁液の殺インフルエンザウイルス作用を4試薬間で比較したところ,f-HSSPは短時間接触域で,c-HSSPよりおよそ1000倍強かったが,酸化カルシウムと水酸化カルシウムよりは弱い傾向を示した.これらの結果は,f-HSSPは強い大腸菌殺菌作用に加え,殺インフルエンザウイルス作用があることを示している.いずれにしても,このように少なくともc-HSSPより強力な抗微生物作用を有するf-HSSPは,感染看護の視点からも,様々な医療器具・看護器材の有用な天然資材と思われた.興味あることは,リン酸緩衝食塩水に懸濁すると,これらの作用は100倍から1000倍に減弱することであった.この知見に加え,4試薬間の生物活性の強さの違いの研究は今後の検討課題として残った.
著者
田中 愛子 関 太輔 落合 宏 田澤 賢次
出版者
富山医科薬科大学看護学会
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
no.2, pp.49-58, 1999-03

消毒剤の皮膚刺激性を成人30名の前腕の皮膚を用いて検討した.臨床で繁用される消毒剤の調査結果をもとに, ポビドンヨード製剤(PVP-1), 日局消毒用エタノール(EtOH), グルコン酸クロルヘキシジン製剤(CHG), およびチオ硫酸ナトリウム製剤(STS)を選択し, 対照群として生理的食塩水(SCI)を用いた.消毒剤塗布部に加え無処理の皮膚において, 単回及び一週間の連続使用後の皮膚表面のpH, 角質水分量, 経表皮水分喪失量, 皮表皮脂量の生理機能の変化を多角的に検討し, 皮膚刺激の調査も加えた.健康な皮膚の表面はpH5.5~7.0であり, 今回使用した消毒剤のうちPVP-I, CHGの塗布部では低値を示し, STSの塗布部では高値を示していたが, pHはいずれにおいても生理的中性範囲内に留まり, 消毒剤の刺激に対する皮膚の緩衝作用が有効に働いていた.肉眼的皮膚刺激, 皮表皮脂量は, どの薬剤も有意差は認められなかったが, 消毒剤一週間連続使用後のPVP-I, EtOH, CHG塗布部においては, 角質水分量が低値を示し, 皮膚刺激が長期にわたると角質水分保持能が低下する可能性が示唆された.
著者
石金 恵子 境 美代子 村藤 頼子 広上 真里子 杉政 美雪 北川 洋子 吉田 郁子 中川 輝昭 田内 克典 水島 豊 落合 宏
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.177-180, 1997-11-28 (Released:2010-07-21)
参考文献数
10

病室内のカーテンの細菌汚染状態を知り, カーテンの適正交換頻度を知る目的で, 10病室 (一般病室4, MRSA隔離室6) のカーテンに付着している細菌をバイオエアーチエッカーを用い1週間隔で5回調査した.その結果, 下記の成績が得られた.1) 4週間を通じてカーテンの付着菌数の累積的増加は認められなかった.2) 分離菌ではブドウ球菌がもっとも多く, ついでグラム陽性桿菌, 真菌の順であった.3) MRSA隔離室のほうが一般病室より多くの菌数が検出された.4) MRSA隔離室6室のうち2室で濃厚なMRSA汚染が認められた.5) 消毒用エタノール噴霧はいずれの細菌の除菌にも有効であった.以上より, カーテンの交換頻度はMRSA隔離室では患者の退室ごとに, また一般病室では肉眼的汚れに応じ, 年3-4回定期的に交換するのが適当ではないかと考えられた.