著者
盛永 審一郎
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-8, 2013-06

終末期において看護師は一体どう行為すべきだろうか.ケアは倫理原則に優先するのだろうか.ギリガン,ノディングス,クーゼのケアリングの概念をもとにして,考察する.
著者
村田 亜悠美 小尾 信子 中平 比沙子 宮原 龍郎 落合 宏
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-49, 2008-03

ホタテ貝殻焼成粉末(HSSP)の殺菌および殺インフルエンザウイルス作用を検討した.微細HSSP(平均粒径3.5μm:f-HSSP)の0.15%生理食塩水懸濁液に5分接触させた場合,大腸菌の生残菌数は検出限界以下であったが,緑膿菌と黄色ブドウ球菌の生残率は,それぞれ3×10-3%と2.5%であり,大腸菌に最も強く殺菌作用を示した.f-HSSP,粗製HSSP(平均粒径18.4μm:c-HSSP),酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの0.15%生理食塩水懸濁液はほぼ同じpH(12.6~12.76)を示した.しかし,これら4試薬の大腸菌に対する経時的殺菌力を比較したところ,5分接触では全ての試薬においても生残率は検出限界以下であったものの,2分より短い接触時間域でf-HSSPが他3試薬より10~1000倍強い殺菌作用を示した.さらに,f-HSSP生理食塩水懸濁液は,濃度と接触時間依存的にインフルエンザウイルスA型PR8株とB型Sing株の感染性を失活させた.しかし,f-HSSP(37℃,30分接触)は少なくともA型PR8株の赤血球凝集活性には影響を与えなかった.0.75%生理食塩水懸濁液の殺インフルエンザウイルス作用を4試薬間で比較したところ,f-HSSPは短時間接触域で,c-HSSPよりおよそ1000倍強かったが,酸化カルシウムと水酸化カルシウムよりは弱い傾向を示した.これらの結果は,f-HSSPは強い大腸菌殺菌作用に加え,殺インフルエンザウイルス作用があることを示している.いずれにしても,このように少なくともc-HSSPより強力な抗微生物作用を有するf-HSSPは,感染看護の視点からも,様々な医療器具・看護器材の有用な天然資材と思われた.興味あることは,リン酸緩衝食塩水に懸濁すると,これらの作用は100倍から1000倍に減弱することであった.この知見に加え,4試薬間の生物活性の強さの違いの研究は今後の検討課題として残った.
著者
赤江 尚子 吉井 美穂 笹原 志央里 山口 容子 澤田 陽子 金森 昌彦 西谷 美幸
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-45, 2012-06

Hand roughness is a problem for medical practitioners who frequently wash their hands.It is currently recommended that hand care preparations are provided to medical practitioners, but the effect or influence when such preparations are used together with antiseptics has not been investigated. In this study, we investigated how drying hand care preparations affect the sterilizing effect of antiseptics.Staphylococcus epidermidis (S. epidermidis) and Staphylococcus aureus (S. aureus) were used as the test strains. The trial medications used were a skin protective agent.As a result, the sterilizing effect after the hand care preparation had dried for 30 minutes was better against S. aureus than S. epidermidis. The present results showed that hand care preparations do not affect bacterial proliferation, that when using hand care preparation and antiseptics together. Moreover, the hand care preparation needs to be dried sufficiently.In the future, comparisons with the present results and further research conducted with consideration of the conditions of the hand care preparation will be needed.
著者
坂井 桂子
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-13, 2013-06

医療のあり方として「できるだけ長く生命の維持をはかる」ことを重視するのは当然であるが,それと並行して「その時その時今現在を人間らしく自分らしく生活する」ことも重視されなければならない.病気を有し治療を続ける中でもどんな毎日を送っていきたいかという患者の思いが尊重され,実現できることが望ましいが,それに関わる家族の思いや医療者の考えは,それぞれの立場もあり微妙に異なることが多い.臨床においては,個々のケースを検討していくことが重要になるが,状況を整理し問題を明らかにしていくには,「倫理」的な視点が重要となる.白浜雅司は「日常診療の場において,医療を受ける患者,家族の関係者,医療者間の立場や考えの違いから生じる様々な問題に気づき,分析して,それぞれの価値観を尊重しながら,関係するものが納得できる最善の解決策を模索していくこと」が臨床倫理であるとし,個々の事例をジョンセンが提唱した4分割表を用いて倫理検討することを広めた.倫理検討の基盤となる医療の倫理としては,ビーチャム&チルドレスが「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」の4つの原則を提示している.4つの原則は医師はじめ医療者全体の共通倫理である.それらの原則の意図することを日本のことわざに例えてみれば,自律尊重=「かわいい子には旅をさせよ」「失敗は成功のもと」,善行=「長いものには巻かれろ」「老いては子に従え」,無危害=「転ばぬ先の杖」等と考えられる.このように考えると,これらの原則は,臨床の場面では4つとも同時に満たすことができない,(原則間の対立:関わるそれぞれの人の価値観が異なり,どうすればよいか意見が異なり対立・衝突している状況)ことは当然起こりうることである.また,ジレンマ:どのことも等しく重要であり, 2つ以上の選択肢のどれを選択するか判断がつかずに悩む状況も,当然ありうることである.特に看護師は,患者・家族と医療者との間をとりもったり,治療の影響で変容している生活の営みを再構築するという調整役やゲートキーパー的な役割を有することより,患者や家族,医療者の価値観のズレに気づき悩むことが多く,ジレンマを有しやすい立場にある.
著者
細田 恵莉奈 道券 夕紀子 梅村 俊彰 安田 智美
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 = The journal of the nursing society of university of Toyama (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.135-149, 2017-03

長時間同一体位におけるポジショニングの安楽性の検証を行うことを目的として,20 歳代の学生10 名を対象に,ポジショニング無しと有りそれぞれの状態で2 時間測定し,比較検討した.調査内容は,基本属性(性別,年齢,身長,体重,BMI),寝床内環境(寝床内温度,寝床内湿度),自覚症状(痛み,こわばり感・筋緊張,動かしたさ,不快感),実験終了後の感想とした.その結果、寝床内環境では,ポジショニングの有無にかかわらず,寝床内温度と寝床内湿度は時間の経過と共に上昇していた.自覚症状では,ポジショニング無しでは痛み,こわばり感・筋緊張,動かしたさの症状が多くみられ,不快感ではポジショニングの有無にかかわらず,背部,腰部,臀部,下肢に訴えが聞かれたが,ポジショニング有りの方が多かった.実験終了後の感想では,「ポジショニング有りでは痛みやこわばり感・筋緊張が少なく感じた」「ポジショニング有りでは背や足が蒸れて不快だった」といった声が聞かれた. 以上のことから,ポジショニングを行うことで同一体位による苦痛の軽減をもたらすと考えられる.一方,同一体位は体動による寝床内の温度・湿度の調整が出来ず,クッションやマットレスと身体が密着しやすいところでは蒸れが生じて不快に繋がると考えられる.
著者
齊藤 佳余子 長谷川 ともみ 永山 くに子
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-92, 2013-12

本研究は帝王切開を受けた母親が手術直後に体験したカンガルーケアをどのように受けとめたのかを明らかにすることを目的とした.反復帝王切開直後にカンガルーケアを体験した母親5名を対象とし,質的帰納的分析を行った.分析の結果,手術前は【元気な子どもを得る期待感】,帝王切開直後のカンガルーケア体験後には【自分の子どもを得たことの実感の深まり】【子どもへの愛しさの高まり】のカテゴリが抽出された.また3事例ではあるが手術前に<前回の出産に対するひきずり>があった母親はカンガルーケアを体験することにより<前回の出産体験のひきずりの埋め合わせ>が行われ,<出産に対する満足感>へとつながった.このことから帝王切開直後のカンガルーケアを母親は自分の子どもを得たことを実感できる体験と受けとめていた.また前回の出産体験にひきずりをもつ母親にとっては,喪失からの立て直しに関与する可能性が示唆された.Kangaroo care after childbirth is a technique that is widely practiced in many advanced nations. In this research, we aim to clarify the subjective experiences of women practicing kangaroo care after cesarean sections. The subjects in this study comprise five women who underwent repeated cesarean sections. The analysis was conducted using qualitative induction. We found that prior to a cesarean section, the mother hopes to obtain a fine child. It is only after the operation that the mother starts to feel increased love and affection for the child. Three of the five women had previously given birth to children with psychological damage; for these women, the need to participate in kangaroo care could be seen as a kind of compensation for the previous births. Further, these three women all underwent satisfactory deliveries. As mentioned above, it was thought as experience which can realize that the mother got her child for the kangaroo care just behind a cesarean section. Moreover, this study revealed that mothers who experienced psychological damage in previous childbirths participated in kangaroo care as form of recovery therapy brought on by the sense of loss they experienced previously.
著者
福田 正治
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-13, 2009-10

Empathy is a basicability to conform a relationship between patients and nurses in nursing.The empathy includes a process of feeling communication to coping to the pain of the patients. The feeling composed of a hierarchy structure of basic and cognitive components, so that the empathy may divide into two components of emotional and cognitive empathy.The emotional empathy is an automatic and unconscious process based on mirror neuron.The cognitive empathy is situation-and object-dependence in feeling communication. These suggest two different copings between acute and chronic care stage, related to emotional openness and emotional control. This paper discusses about feeling communication in emotional and cognitive empathy.
著者
坂井 桂子
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-13, 2013-06

医療のあり方として「できるだけ長く生命の維持をはかる」ことを重視するのは当然であるが,それと並行して「その時その時今現在を人間らしく自分らしく生活する」ことも重視されなければならない.病気を有し治療を続ける中でもどんな毎日を送っていきたいかという患者の思いが尊重され,実現できることが望ましいが,それに関わる家族の思いや医療者の考えは,それぞれの立場もあり微妙に異なることが多い.臨床においては,個々のケースを検討していくことが重要になるが,状況を整理し問題を明らかにしていくには,「倫理」的な視点が重要となる.白浜雅司は「日常診療の場において,医療を受ける患者,家族の関係者,医療者間の立場や考えの違いから生じる様々な問題に気づき,分析して,それぞれの価値観を尊重しながら,関係するものが納得できる最善の解決策を模索していくこと」が臨床倫理であるとし,個々の事例をジョンセンが提唱した4分割表を用いて倫理検討することを広めた.倫理検討の基盤となる医療の倫理としては,ビーチャム&チルドレスが「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」の4つの原則を提示している.4つの原則は医師はじめ医療者全体の共通倫理である.それらの原則の意図することを日本のことわざに例えてみれば,自律尊重=「かわいい子には旅をさせよ」「失敗は成功のもと」,善行=「長いものには巻かれろ」「老いては子に従え」,無危害=「転ばぬ先の杖」等と考えられる.このように考えると,これらの原則は,臨床の場面では4つとも同時に満たすことができない,(原則間の対立:関わるそれぞれの人の価値観が異なり,どうすればよいか意見が異なり対立・衝突している状況)ことは当然起こりうることである.また,ジレンマ:どのことも等しく重要であり, 2つ以上の選択肢のどれを選択するか判断がつかずに悩む状況も,当然ありうることである.特に看護師は,患者・家族と医療者との間をとりもったり,治療の影響で変容している生活の営みを再構築するという調整役やゲートキーパー的な役割を有することより,患者や家族,医療者の価値観のズレに気づき悩むことが多く,ジレンマを有しやすい立場にある.
著者
杉島 優子 上野 栄一
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.159-171, 2014-12

本研究ではアルツハイマー型認知症の妻を介護しながら,パーキンソン病で胃瘻造設を行った実母を介護する男性介護者のケースに着目する.この二者の介護を行う男性介護者が胃瘻管理を含め介護を前向きに取り組んでいる要因は何かを検討し,その要因を抽出することを目的とした.本研究では面接調査方法を用い,半構造化インタビューによりデータ収集を行った.その後,「KHCoder」を使用し内容分析を行った.今回は共起ネットワーク分析と対応分析により質的データを可視化した.結果,①介護と死を自分も含めた人間の通る道としての受容.②被介護者への感謝の思いや経済的基盤の安定.③制度の利用に加え,医療従事者との関わりの多さ.④被介護者の状態が落ち着いていること.⑤自分の殻に閉じこもらず,自ら他者に働きかけていく介護者の特性.以上5要因が抽出できた.これらの結果から,医療者には介護者が孤立しない配慮が必要である.
著者
松浦 純平 喜田 加奈子 上野 栄一
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.9-18, 2012-03

The purpose of this research to clarify the cause of delirium appearance of disease factors which is supposed by veteran nurses working at the surgery ward of head and neck.A total of five nurses was interviewed.The semi-structured interview that contains seven cross method was performed to examine the cause of delirium appearance of the disease factors. The interviews were translated transcripts using the content analysis of K. Krippendorff.As a result, the following categories were generalized by content analysis; "individual characteristic", "the long rest", "aged", "insomnia", "male" "solitude". Seven cross method showed that the strongest delirium appearance of the disease factors was seven factors as follows, "insomnia", "advanced age", "long operation", "anxiety before the operative". Seven cross method showed that the strongest delirium appearance of the disease factors was seven factors as follows, "insomnia", "individual characteristic", "aged", "long operation", "amount of bleeding during the operation", "the effect of sleeping drug" "anxiety before the operative". Categories included in both the content analysis and seven cross method showed four categories of "aged", "insomnia", "individual characteristic".It was suggested that it is very important to perform the nursing practice of the delirium after operation.本研究の目的は,頭頸部外科病棟に勤務する経験豊富な看護師が考える術後せん妄発症要因は何かを明らかにして,臨床での術後せん妄発症患者に対する看護実践への示唆を得ることである.対象は,A大学医学部附属病院頭頸部外科病棟に勤務する頭頸部外科勤務経験5年以上の看護師5名とした.術後せん妄発症要因について半構成的面接を実施,結果はK.Krippendorffの内容分析手法およびセブン・クロス法にて分析した.内容分析の結果から【性格特性】,【理解力不足】,【長期安静】,【高齢】,【不眠】,【男性】,【独居】の7つのカテゴリーが生成された.セブン・クロス法の結果から,優先順位が高い順に【不眠】,【性格特性】,【高齢】,【長時間手術】,【術中出血量】,【眠剤の影響】,【術前不安】の7つのカテゴリーが生成された.内容分析とセブン・クロス法の両方に含まれていたのは,【高齢】,【不眠】,【個人特性】の3つのカテゴリーであった.この結果から今後の術後せん妄看護についての示唆を得た.
著者
片田 裕子 八塚 美樹
出版者
富山大学
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.65-72, 2007-03

米国を中心に患者の尊重,医療事故の減少のため臨床実習のまえにマネキンや人体の部分モデルを使い実習を行うシミュレーション教育が行われている.このことは看護の領域でも必要と考え米国でも先進的なシミュレーション教育システムをもつボストンとピッツバーグの施設を視察した.両施設とも医師主体の施設で,前者はハーバード大学医学部,後者はピッツバーグ大学医学部の教育機関であり,運営資金は,授業料,交付金や寄付で賄われていた.両施設に共通したシミュレーション教育の理念は1. Desutination(目的意識の明確化),2. Teachable movement(実践による教育),3. Motivation(動機づけ),4. Team work(チームワークの重視),5. Challenger(挑戦者の気持ち)を持たせることとなっていた.また6.教育者はよりよいFacilitator(導く者)になるよう努力する必要がある.今日,日本においてシミュレーション教育を看護領域で教育課程の一部として取り入れている研究はほとんどなく,定期的な評価のもと専門の施設での教育方法も確立していない状況である.過去10年の文献検討によっても専門教育として確立されているものはなかった.新人教育,医療事故の軽減,患者の尊重が強く求められている現状をふまえると今回,米国の医師のシミュレーション教育の先進的施設を訪問し看護の領域での必要性を強く感じた.