著者
原 聖樹 落合 弘典
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.97-101, 1980
被引用文献数
1

北アルプス姫川谷下流域および山形県最上川中流域のLuehdorfia属2種の混生地において,Luehdorfia japonica LEECHギフチョウとL.puziloi inexpecta SHELJUZHKOヒメギフチョウとの間の雑交個体が少なからず採集されている.これらはいずれも,ヒメギフチョウ♂によって形成された受胎嚢を腹端に付着させたギフチョウ♀であって,その逆の組合せ例は知られていない.一方,ハンド・ペアリングによる両種の種間雑種の第一世代の育成は,交配飼育技術が昨今長足の進歩・普及を遂げたこともあって,愛好家の間ではかなり普遍的なものになってきた.ただし,これは前記の組合せの雑交(♀はギフチョウ)に関してであって,逆の組合せ(♀はヒメギフチョウ)にはあてはまらない.もちろん,従来まったく逆の組合せのハンド・ペアリングがこころみられなかったというわけではなく,この場合,正常な産卵を見るところまでは成功している(高倉,1965,1973).けれども,その卵が孵化した例はなく,この組合せによる種間雑種は幼虫・蛹・成虫等については未知である.筆者らは,野外でギフチョウ♂によって形成された受胎嚢を付けたヒメギフチョウ♀を採集し,この母蝶に強制採卵をこころみ,種間雑種F_1の幼虫・蛹を見ることができたので,その概要を報告する.発表に当り,種々ご協力いただいた伊藤正宏・森井謙介・斉藤洋一の諸氏に謝意を表する.
著者
渡部 美佳 干場 英弘 落合 弘典 岡島 秀治
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.31-38, 2013-01-05

ハイイロマルハナバチとホンシュウハイイロマルハナバチの室内飼育を行った.成虫の頭幅は,自然巣および飼育巣のいずれも働き蜂・オス蜂ともに0.30-0.39cmの間に集中した.繭数は自然巣においても飼育巣でも巣ごとにばらつきがみられたが,大きさについてはいずれも0.70-0.89cm間に頻度が高かった.これらの結果から,飼育における体サイズの縮小化はほとんど見られなかったと考えられた.飼育下における特徴としては,第一巣室とその後の巣室で産卵・育児習性に大きな違いが見られないこと,営巣期間が他種マルハナバチと比較すると短いことが挙げられた.また,ホンシュウハイイロマルハナバチでは働き蜂数が少なくても生殖虫の生産が可能であることが明らかとなった.