- 著者
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章 開訓
大野 勝利
葛野 浩
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.345-351, 1988-12-25
蛇の心臓の解剖学的位置と,これにともなう腹鱗の相対的位置を確認したうえで,誘導電極の位置を設定し,心電図を誘導記録した。本研究に用いた誘導法は操作が比較的簡便で,かつ記録した心電図の各波形は明晰であった。そこで得られた資料をもとに心電図学的に各種の分析を試みた結果,爬虫類蛇科の心臓の系統発生学的な研究および生理学的な検討に有意義な方法であると結論した。1.調律:P波は全例で認められた。したがって,正常な心機能を有する蛇の心臓は洞性調律である。洞性P波はIIIおよびaVFを除く各誘導で陽性を示した。また,陰性および二相性P波は総ての誘導で認められた。2.心拍数:安静状態下の心拍数は32〜46/分で,その平均値は40.5±4.1/分であった。3.電気軸:P波の平均電気軸は-30°〜-166°にあって,その平均値は-89.4°±54.7°であった。QRS波の平均電気軸は60°〜82°にあって,その平均値は72.4°±8.6°であった。したがって,両者の電気軸は相反する方向を指向している。4.P波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は60±8.0msecである。振幅は陽性成分ではaVRで106.0±34.4μV,陰性成分ではIIで114.3±24.8μVと比較的優勢に導出された。5.P-R間隔:その平均値は394±6.9msecであった。6. QRS波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は151±17.8msecである。振幅はQ波はaVRで,R波はI,II,IIIおよびaVFで優勢である。S波はaVRおよびaVLを除く各誘導で導出されるが,いずれも小さい。形態はaVRおよびaLVでは総てQr型を示し,II,IIIおよびaVFでは総てRs型を示した。また,IでRsおよびR型を示した。7.Q-T間隔:その平均値は926±17.3msecであった。8.T波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は114±21.3msecである。振幅は陽性波ではII,IIIおよびaVFで,陰性波はaVRおよびaVLで優勢に導出される。形態はII,IIIおよびaVFでは総て陽性型,aVRおよびaVLでは総て陰性型を示す。Iは主として陽性型を示すが,陰性を示すものもある。9.R-R間隔:その平均値は1466±36.8msecであった。