著者
藤倉 恵美 大内 雄太 宮崎 真理子 伊藤 貞嘉
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.705-712, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
28
被引用文献数
1

わが国では終末期医療に関するガイドラインが次々と発表され, いずれも患者本人の意思決定を尊重する内容になっている. 透析患者も同様に自らの意思を尊重され穏やかな最期を過ごすことが望ましい. われわれは狭義の終末期とはいえない状況で患者本人が維持透析中止を決断した症例を想定し「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」に沿って意思決定を行う過程と結果を検証した. その結果, 患者がその病状や治療に関して十分に検討, 理解したうえで, ほかから強制されることなく意思決定しており, その判断に倫理的妥当性があれば, 治療中止は患者の自己決定権の行使として容認されるべきと考えた. ただし意思決定プロセスは慎重に検証されなければならず, 加えて緩和医療に関する教育やコンサルテーション体制, 事後のグリーフケアを総合的に整える必要がある. 医療者が法的に免責される保証がないことにも十分注意すべきである.
著者
宮崎 真理子 山本 多恵 渡邊 順子 藤倉 恵美 吉田 舞 秋保 真穂 良知 弘務 福士 太郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.62-64, 2018

<p>東北大学病院の血液浄化療法部は病院の中央特殊診療部門に属し, 腎臓学, 透析医学, 泌尿器科学をサブスペシャリティとする医師が, 全診療科の血液浄化療法に横断的に関わっている. 診療科の入院患者を対象に透析装置12台, 持続血液濾過透析10台の規模で, 直接の担当医ではないため, 緊急呼び出しは少ない. 結果的に女性医師が育児中も継続可能な環境を提供できる. しかし, 臓器別診療科が高度医療を実践する中で, 血液浄化療法のプロフェッショナルとして認知されるためには, 集中治療医学, 急性血液浄化, アフェレシスなどの領域の知識をもち, 各科の難治性疾患病態, 治療内容を理解し, 適切なタイミングで最適の血液浄化療法はいかなるものかを判断するなど, 常に研鑽が必要である. 「直面する現実の制約を理解する職場」 である必要はあるが, 「女性が働きやすい職場」 で満足することなく, ダイバーシティーを推進する先進的組織を目指す取り組みを考える.</p>
著者
藤倉 恵美 秋保 真穂 中道 崇 山本 多恵 佐藤 博 宮崎 真理子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.407-411, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
6

輸血を拒否する患者に医療を行う際には, 救命を第一義とする医学の基本理念に反する判断を迫られることがある. 待機治療において患者本人の自己決定による輸血拒否や治療拒否は認められるべきであるが, 生命に危険が及ぶような緊急時の対応については医学的, 倫理的, 法的に議論が残る. このような重大な判断を行う際には個人の価値観だけでなく, 組織としての方針を決定しておくことが必要である. 今回われわれは輸血を拒否する慢性腎不全患者に緊急血液透析導入を行った. 病院のリスクマネジメントを展開するうえで, 患者の信仰上の価値観が治療方針に影響を及ぼすことの重大性を示した症例であった.