著者
根石 純子 岡上 準 山本 多恵 平松 範行 石井 義孝 成清 卓二 野島 美久
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.267-271, 2003-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20

ヒトにおけるアセトアミノフェンの中毒量は5gとされており, 重症の肝障害を引き起こす. 正常の代謝経路であるグルクロン酸抱合および硫酸抱合の許容範囲を超えた場合, N-アセチル-p-キノネミンが生成され, 細胞内の蛋白や核酸と結合し, 小葉中心性肝細胞壊死, 腎尿細管細胞壊死, DICをきたす. 5g以下であっても肝障害を引き起こすこともあり, アレルギー性の機序の関連も考えられている. 今回われわれが経験した2症例と, 1995年以降の国内報告例をまとめ, 報告する.【症例1】 24歳女性. 自殺目的で市販の感冒薬を内服. アセトアミノフェン含有量29.7g, 血中濃度は入院時 (推定8時間後) 91.8μg/mLであった. 血液吸着療法施行. また, 肝不全, 腎不全, 脳浮腫を起こし, 血漿交換, 血液透析施行したが, 死亡した. 【症例2】 34歳女性. 夫婦喧嘩で激昂し, 市販の感冒薬を内服し, すぐに来院. アセトアミノフェン含有量6g, 入院時血中濃度は69.4μg/mLであった. 血液吸着療法施行. とくに臓器障害をきたすことなく退院することができた.【結論】 上記2例において, 血液吸着療法施行後は,血中アセトアミノフェン濃度が著明に低下した. アセトアミノフエン中毒に対し, 血液吸着療法が効果的であると考えられた.
著者
村田 弥栄子 山本 多恵 大場 郁子 中道 崇 中山 恵輔 太田 一成 宮澤 恵実子 清元 秀泰 上野 誠司 大友 浩志 佐藤 博 伊藤 貞嘉 宮崎 真理子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.357-362, 2012-04-28 (Released:2012-05-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

2011年3月11日に発生した東日本大震災では,宮城県の広い範囲,特に東部沿岸地域は津波による市街地の流失,電気,上水の供給停止,通信の途絶など,大きな被害を受け,災害拠点病院への救急患者集中,通院手段の確保困難,生活環境の悪化が生じ,被災地外での支援透析を要した.災害支援透析において,被害が大きい依頼側に,通常の臨時透析と同レベルの情報提供を求めることは,災害支援の基本概念に沿わない.また,支援側は,業務増大の中で初診の多数の透析患者の診療を行わなければならないが,過酷な環境から避難してきた透析患者への対応は,平時とは異なる視点が必要となる.そこで,われわれは震災後に多人数の入院支援透析を行うにあたり,災害時透析入院クリニカルパスを作成し使用した.クリニカルパスの運用によって,避難患者の容態把握を共通化,標準化することが可能で,二次避難先への引継ぎにも利用した.過去に例をみない大災害であったが,このクリニカルパスの活用は災害時入院支援透析における診療に有用であったので,ここに報告する.
著者
大崎 雄介 樺山 繁 山本 多恵 宮崎 真理子 中山 昌明
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.429-438, 2020 (Released:2020-08-28)
参考文献数
32

【背景・目的】2018年の厚生労働省・腎疾患対策の主目標に透析患者を含む慢性腎臓病患者のquality of life (QOL) 向上が掲げられたが, 具体的なQOL内容やその評価法は示されていない. そこで, 本邦の研究実態を確認するために, 透析患者QOLに係る研究内容について文献的調査を行った. 【方法】医中誌にて血液透析, QOL, 生活の質のキーワードで過去10年間の検索を行った. 該当489件のうちQOL研究77論文の内容を確認した. 【結果】QOL研究対象は包括的 (53件) と症状特異的 (疲労感, 掻痒感, 睡眠障害, 消化器症状, 心理等) なものが含まれ, 評価尺度は前者で8種類, 後者で42種類の尺度が単独あるいは複合で使用されていた. 【結論】本邦の透析患者QOL研究対象は広く, また研究目的に沿ってさまざまな評価尺度が使用されていた. 今後, 研究間の結果比較のために使用尺度の標準化が必要と考えられる.
著者
宮崎 真理子 山本 多恵 渡邊 順子 藤倉 恵美 吉田 舞 秋保 真穂 良知 弘務 福士 太郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.62-64, 2018

<p>東北大学病院の血液浄化療法部は病院の中央特殊診療部門に属し, 腎臓学, 透析医学, 泌尿器科学をサブスペシャリティとする医師が, 全診療科の血液浄化療法に横断的に関わっている. 診療科の入院患者を対象に透析装置12台, 持続血液濾過透析10台の規模で, 直接の担当医ではないため, 緊急呼び出しは少ない. 結果的に女性医師が育児中も継続可能な環境を提供できる. しかし, 臓器別診療科が高度医療を実践する中で, 血液浄化療法のプロフェッショナルとして認知されるためには, 集中治療医学, 急性血液浄化, アフェレシスなどの領域の知識をもち, 各科の難治性疾患病態, 治療内容を理解し, 適切なタイミングで最適の血液浄化療法はいかなるものかを判断するなど, 常に研鑽が必要である. 「直面する現実の制約を理解する職場」 である必要はあるが, 「女性が働きやすい職場」 で満足することなく, ダイバーシティーを推進する先進的組織を目指す取り組みを考える.</p>
著者
藤倉 恵美 秋保 真穂 中道 崇 山本 多恵 佐藤 博 宮崎 真理子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.407-411, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
6

輸血を拒否する患者に医療を行う際には, 救命を第一義とする医学の基本理念に反する判断を迫られることがある. 待機治療において患者本人の自己決定による輸血拒否や治療拒否は認められるべきであるが, 生命に危険が及ぶような緊急時の対応については医学的, 倫理的, 法的に議論が残る. このような重大な判断を行う際には個人の価値観だけでなく, 組織としての方針を決定しておくことが必要である. 今回われわれは輸血を拒否する慢性腎不全患者に緊急血液透析導入を行った. 病院のリスクマネジメントを展開するうえで, 患者の信仰上の価値観が治療方針に影響を及ぼすことの重大性を示した症例であった.