著者
藤原 正光 番場 梨彩
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.113-125, 2014-12-01

幼児期に嫌いであった食物の種類とその理由及びその克服時期と方法を,大学生の幼児期の回想法による調査を行った.同時に,家庭と保育所・幼稚園での食事指導の違いを調査した.結果の分析に際し,性差を考慮した.調査対象者は大学生166名(男性58名,女性108名)であった。主な結果は次の通りである.1)幼児期に嫌いな食べ物は,レバー,セロリ,ピーマン,なす,にんじん等であり,その理由は,味,食感,におい等であった.2)克服時期は、中学時代が最も多くその後減少していたが,女性は男性に比べ大学生になってから克服率が有意に増加していた.3)克服方法は,「食べてみたら美味しかった」「調理法の工夫」「食べる機会の増加」「家族の影響」などが上位を占めていた.幼児期に受けた食育を家庭と保育所・幼稚園を比較しながら検討した.因子分析の結果,いずれの質問項目にも「注意及び指導」と「食べさせる工夫」の因子が抽出された.4)家庭での食育指導の方が有意に高い平均値であり,男児に「注意及び指導」が有意に高く,「食べさせる工夫」については,家庭と保健所・幼稚園の間にも性差にも有意差は示されなかった.
著者
藤原 正光 仙崎 武
出版者
日本キャリア教育学会
雑誌
キャリア教育研究 (ISSN:13433768)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-5, 1985
被引用文献数
1

本研究は、教職志望の学生が、いつ頃、どのような動機に基づいて教育学部への入学を決定し、どのような教職観を築き上げていったのかをできるだけ構造的にとらえようと試みた。調査対象は、文教大学初等教育課程に在籍する945名の学生であった。得られた結果を概略すると以下の通りである。大学への進学・教育学部への入学決定時期について、大学への進学は、半数以上が小・中学校の段階で意識決定しているが、教育学部への進学決定は、高校入学以降が7割以上を占めている。しかし、女子の方が小・中学校という早い時期に進路決定している割合が高いことは注目すべきであろう。教育学部への志望動機は、「子どもが好き」、「能力・性格に合っている」といった従来の研究結果と類似するが認められた。この結果は、教職への理解が一歩進んだ実践的な特性を重視する方向に変化してきていると解釈することができよう。教師としての資質は、得られた資料を因子分析後、直交バリマックス回転した結果、"子どもを把捉する能力″、"研究・研修能力″、"教育実践能力"と呼ぶべき3つの因子が検出された。"子どもを把握する能力"は、子どもとの対応関係における能力や態度を測っている項目であり、全体として眺めると最も重視されている教師の資質であった。ついで、授業の展開や教材研究や研修を意味する"研究・研修能力"が重視され、教育をとりまく現実的な問題を処理する"教育実践能力"は相対的に低い評価であった。しかし、学年が進むにつれて、"研究・研修能力"や"教育実践能力"が重視される傾向が高まっていることは注目に値されよう。これらの結果は、同一項目で現職教員の意識を調査した福島大学(1981)の結果とほぼ類似するものであり、学生たちがかなり早い時期から現職教員と似た意識構造を形成しているものと考えられるが新しい検討は今後の課題である。ものであったが、女子の方が、「給与の安定」、「親に勧められて」といった理由が多く認められた。森(1984)の知見から考察すると、教職志望動機は全体として眺めると内面的価値に基づくものであるが、この傾向は、男子の方がより高いといえよう。望ましい教師の特性は、「子どもと遊ぶのが好き」、「根気強く・努力家」、「冷静で公平な判断」、「指導力」を高く評価する傾向がうかがわれた。また、学年が進むにつれて「研究熱心」の特性は高く評価され、「子どもと遊ぶのが好き」の特性は低くなる傾向
著者
藤原 正光 番場 梨彩
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 = Annual report of the Faculty of Education, Bunkyo University (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.48, pp.113-125, 2014

幼児期に嫌いであった食物の種類とその理由及びその克服時期と方法を,大学生の幼児期の回想法による調査を行った.同時に,家庭と保育所・幼稚園での食事指導の違いを調査した.結果の分析に際し,性差を考慮した.調査対象者は大学生166名(男性58名,女性108名)であった。主な結果は次の通りである.1)幼児期に嫌いな食べ物は,レバー,セロリ,ピーマン,なす,にんじん等であり,その理由は,味,食感,におい等であった.2)克服時期は、中学時代が最も多くその後減少していたが,女性は男性に比べ大学生になってから克服率が有意に増加していた.3)克服方法は,「食べてみたら美味しかった」「調理法の工夫」「食べる機会の増加」「家族の影響」などが上位を占めていた.幼児期に受けた食育を家庭と保育所・幼稚園を比較しながら検討した.因子分析の結果,いずれの質問項目にも「注意及び指導」と「食べさせる工夫」の因子が抽出された.4)家庭での食育指導の方が有意に高い平均値であり,男児に「注意及び指導」が有意に高く,「食べさせる工夫」については,家庭と保健所・幼稚園の間にも性差にも有意差は示されなかった.
著者
藤原 正光
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.131-138, 1996-12

'96年9月1日から16日にわたり,アメリカ・メリーランド州チャールス郡の教育研修旅行に学生引率の責任者として随行した.本稿は,そこで得られたさまざまな情報の中から,教育制度の改善の一つの試みとして取り組まれているMSPAP(Maryland School Performance Assessment Program)について紹介することを主な目的とした.チャールズ郡の教育委員会は,教育の改善を目指し過去10年近くにわたり越谷市を含む日本への教育使節団の派遣を行い,また,一年間の現職教員の研修生の派遣など,日本の教育の優れた点を取り入れようと積極的な努力を続けてきた.MSPAPによる教育改革の試みは,その一つの成果として位置づけることもできる.メリーランド州のチャールズ郡は,ワシントンD.C.の近郊に位置し,長い間農場経営者と多くの知的労働者のベッドタウンとしての役割を亨受してきた.しかし,近年低所得者層の流入の渦に巻き込まれている.それにともない,生活環境と教育環境の変化も進みつつある.MSPAPは,このように変化しつつある教育環境を州や学校の側から立て直そうとする教育改善の試みであり,学校運営への州からの査定や介入といった日本では考えられない強い側面も持っている.中央集権的すぎる,一人一人の教師の自由に教育をする権利を奪っている,画一的なその場限りの教育に陥る可能性があるといった批判もある.本稿では,MSPAPの真の意味を理解するために,メリーランドの公立小学校・中学校の保護者向けに配布されている小冊子をそのまま翻訳し,今後のアメリカ教育研究の出発点としたい.