著者
藤原 隆広 中山 真義 菊地 直
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.796-804, 2002 (Released:2011-03-05)

キャベツセル成型育苗において、根鉢を乾燥させずに、地上部に適度な水ストレスを与える方法として、育苗後期にNaClを施用する方法を考案し、その実用性について検討した。NaCl処理により、根鉢の浸透ポテンシャルを低くすることで、灌水量を制限せずに育苗時の地上部水ポテンシャルを低く推移させることができた。NaCl処理によって、乾物量を減少させずに草丈と葉面積を抑制し、乾物率の高い苗を生産することができた。また、NaCl処理によって抑制された苗の葉面積は定植後1週間程度で対照区に追いつき、NaCl処理による収量の減少は認められなかった。NaCl処理によるNa含有率の増加に伴い減少したK、CaおよびMg含有率は定植後1週間程度で回復した。NaCl処理によって、クチクラ表面のワックス量が約20%増加し、定植後の苗の水分損失が抑えられた。NaCl処理開始後2日目から気孔コンダクタンスの低下、苗の蒸散量の抑制、水利用効率の向上が認められた。以上の結果、キャベツセル成型育苗における育苗後期のMaCl施用は、根鉢を乾燥させずに、苗の徒長的生育を抑制でき、乾燥ストレス耐性の付与も可能であることから、実用的な技術になりうることを明らかにした。
著者
藤原 隆広 吉岡 宏 熊倉 裕史
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.169-173, 2002 (Released:2011-03-05)

キャベツセル成型苗の育苗後期に、徒長抑制と順化を目的にNaCl処理を行う場合の処理濃度、処理開始時期および処理回数が苗質に及ぼす影響を調査した。1)NaCl濃度が高くなるほど、生育抑制効果は高く、NaCl濃度を1回処理で1.6%、5回処理で0.4%とすることで、草丈を対照区の80%程度に抑制することができた。2)5回処理区では、NaCl処理によって地上部の乾物率が高くなった。3)NaCl処理濃度が高くなるほど苗体内のNa含有率は増加した。4)NaCl処理による定植後の生育への影響は小さかった。5)苗の耐干性を評価するために断水処理を行った結果、苗の生存率は、NaCl処理によって大きく向上し、1回処理よりも5回処理で高かった。以上の結果、草丈20%減少を目的にNaCl処理を行う場合、液肥へのNaCl添加量は0.4%が好ましく、処理回数を1回とする場合は1.6%程度の濃度とすることで、0.4%を5回行った場合に準ずる苗質改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
藤原 隆広 熊倉 裕史 大田 智美 吉田 祐子 亀野 貞
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.347-352, 2005-09-15
被引用文献数
12 20

1. 京都府綾部市において, 2003年6月〜2004年5月までの1年間に毎月2〜3回の間隔で購入した市販のホウレンソウ(合計127サンプル)に含まれるL-アスコルビン酸(AsA)と硝酸塩の周年変動を調査した.2. AsA含量は, 夏期(7月〜8月)に低く冬期から春先(1月〜3月)にかけて高い傾向が認められた.また, この傾向は可食部上部(葉身側)で特に高かった.3. 硝酸塩含量は, 7月〜9月に高く, 1月〜3月に低い傾向が認められた.また, この傾向は可食部下部(葉柄側)で顕著であった.4. 生体重および葉色(SPAD値)と2つの品質成分(AsA含量と硝酸塩含量)との間に有意な相関が認められたが, これらの相関関係は外観形質から品質成分の多寡を推定するには十分ではないと判断された.