- 著者
-
岩佐 一
吉田 祐子
鈴鴨 よしみ
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.3, pp.151-160, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
- 参考文献数
- 38
目的 食生活は,生物・心理・社会・文化的存在としての人の満足感と密接に結びついており,食生活に関する満足度の評価には多面的な尺度が必要である。本研究では,日本全国に居住する地域高齢者を対象とした標本調査を行い,鈴鴨他(2001)の「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版における計量心理学的特性を検討した。まず,①18項目版の因子構造の確認を行い,その結果をもとに,②短縮版を作成した。次いで,18項目版・短縮版における,③信頼性,④性差ならびに年齢差,⑤妥当性の検証を行った。方法 日本全国に在住する地域高齢者(60~84歳)1,200人を無作為抽出して郵送調査を行い,849人から回答を得た(参加割合70.8%)。このうち,「食事関連QOL尺度」18項目に欠損の無い者780人(男性367人,女性413人)を分析の対象とした。「食事関連QOL尺度」(5件法,18項目),外部基準変数(主観的幸福感,食満足感,食欲,食事の制限,咀嚼,共食の回数,惣菜・インスタント食品の利用頻度,食に関する情報収集,食品摂取多様性),基本属性(居住形態,教育歴,経済状態自己評価,有償労働,健康度自己評価,生活機能,生活習慣病,飲酒,喫煙)を分析に用いた。結果 確証的因子分析を行ったところ,適合度は許容範囲であり,先行研究で報告された4因子解が再現された(『Ⅰ食事の楽しみ』,『Ⅱ食事の充足感』,『Ⅲ食事環境』,『Ⅳ食の多様性』)。8項目を選出し短縮版を作成した。「食事関連QOL尺度」得点(18項目),各下位尺度得点(因子Ⅰ~Ⅳ),短縮版得点(8項目)におけるα係数はそれぞれ,0.94,0.86,0.89,0.77,0.72,0.90であった。「食事関連QOL尺度」得点,各下位尺度得点,短縮版得点をそれぞれ従属変数として2要因分散分析(性別:2水準,年齢:5水準)を行ったところ,すべての変数において,女性のほうが男性よりも得点が高かった。一方,年齢差は認められなかった。総菜の利用頻度において有意な相関は認められなかったほかは,外部基準変数との間に概ね中等度以上の相関が認められた。結論 地域高齢者を対象として,「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版の信頼性・妥当性を確認した。今後は,健康アウトカムを外部基準として「食事関連QOL尺度」の関連要因,予測妥当性の検証を行うことが課題である。