著者
匂坂 勝之助 荒木 忠 大和田 琢二 藤川 清三
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

プラスチド イニシャル形成と低温度要求性:休眠覚醒後にプラスチド イニシャルの形成が始まるので、休眠覚醒のおこる低温度と覚醒のみられない環境条件下にポプラをおいて比較検討した実験で、休眠覚醒のみられないポプラではプラスチド イニシャルの形成は全く進行しないことがあきらかになった。プラスチド イニシャルは遊離状態で存在すること:ポプラの皮層部から遊離状態のプラスチド イニシャルを得た。プラスチド イニシャルの形成は多年生植物(樹木)で一般的にみられること:ダケカンバ、エゾニワトコ、スグリ、キタコブシ等の皮層細胞に休眠覚醒後にプラスチド イニシャルが存在することを明かにした。草木植物にプラスチド イニシャルが存在することを証明する予備的調査:ジャガイモ魂茎の形成期にアミロプラストの前駆体と思われる構造体の存在することを確かめた。この研究は現在継続中である。プラスチド イニシャル形成は各組織で同時に始まる:リンゴの花芽、葉芽及びシュートの皮層細胞でこのことを明らかにした。成熟プラスチドを経ないプラスチド イニシャルの形成:リンゴの花芽、葉芽及び皮層細胞から成熟プラスチドを経ない新しい形成過程を示す電子顕微鏡像を得た。この実験で、プラスチド イニシャルの形成に小胞体が直接関与していること及び小胞が活発に形成されてプラスチドイニシャルに融合している電顕像を得た。
著者
荒木 忠治 長谷川 美典 伊庭 慶昭
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.343-347, 2001-12-31
被引用文献数
1

セイヨウナシ,バートレット,ラ・フランス,パス・クラサン,ウインター・ネリスおよびドヴァイァン・ジュコミスの果肉成分中,糖,酸,ペクチン組成,性状別含量と組成比の違いを調査した。<BR>(1) 収穫時の全糖含量は,バートレット,ラ・フンスパス・クラサンが9-11%,ウインター・ネリス(冷蔵40日)が12%,ドヴァイアン・ジュコミス(冷蔵60日)が11%であった。<BR>(2) 主な構成糖は,全品種ともショ糖,ブドウ糖,果糖およびソルビトールで,主要糖は果糖である・収穫時の含量と比率は,バートレットとラ・フランスが6-8%(全糖の60-70%),他の3品種は8-10%で,(同81-85%)を占めた。<BR>(3) 収穫時の全遊離酸含量は,バートレットが0.3-0.4%,他の品種は0.2%台で,主要酸はバートレットのみがクエン酸で,他はリンゴ酸であった。<BR>(4) 収穫時の全ペクチン含量は,バートレットが約400mgで,既報値に比べ少なく,パス・クラサンは500-600mg,ラ・フランスは470-690mgと年次による変動が著しかった。<BR>性状別含量は,バートレットのW-Pが約70mg,ラ・フランスとパス・クラサンは90-130mg,Na-Pが310-525mgで,両画分の比率はほぼ20:70であった。<BR>H-P画分は,30-60mgで6-12%を占め,品種間差や追熟による変化少なかった。<BR>本試験は,農林水産省・大臣官房企画室の「果実等の省エネルギー地下貯蔵技術開発」調査事業の一部として行われた。
著者
後藤 明彦 荒木 忠治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.316-324, 1983
被引用文献数
1 10

サンボウカン果実のじょうのう果梗端部す上がり砂じょう及び中央部のゲル化及びす上がり砂じょうの化学組成を調べ, また, 光学顕微鏡による若干の観察を行った.<br>顕微鏡観察によると, 果梗端部す上がり砂じょうの砂じょう膜は著しく肥厚していたが, 中央部す上がり砂じょうの膜の肥厚は, それほど著しくなかった. また,PAS染色により, 砂じょう膜及び内部柔組織の細胞壁多糖類成分は, ゲル化及びす上がり砂じょうで増加していることが示された.<br>パルプ量, アルコール不溶性固形物 (AIS) 含量はす上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 細胞壁多糖類については, ゲル化及びす上がり砂じょうで, 熱水, ヘミセルロース, セルロースの各画分が健全砂じょうより高かったが, シュウ酸塩画分の増加はわずかであった.<br>果梗端部す上がり砂じょうでは, 同部健全砂じょうに比べて, 遊離酸, フラボノイド, カロチノイド, RNAの含量は低く, 結合酸, ビタミンC, 全-N, AIS-N, アミノ-Nのそれは高く, 全糖は変らなかった. 中央部ゲル化砂じょうでは, これらの成分は全て健全砂じょうより低かった. しかし, 同部す上がり砂じょうでは, AIS-N, アミノ-Nはゲル化及び健全砂じょうより高く, また, 全糖, 結合酸, フラボノイド, カノチノイド, ビタミンC及び全-Nはゲル化砂じょうよりは高かったが,健全砂じょうよりは低かった. RNAはゲル化砂じょうとほぼ同じであり, 遊離酸は低かった.<br>無機成分 (粗灰分, Ca, Mg, K, Na) については, いずれも, 果梗端部す上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 中央部ゲル化砂じょうでは, 健全砂じょうよりわずかに低かったが, す上がり砂じょうでは, ゲル化砂じょうに比べてCaが高く, Kが低かった.<br>これらの結果に基づき, サンボウカン果実砂じょうのゲル化及びす上がりの発現過程を考察した.