著者
藤本 孝子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

Zucker fattyラットを用いて、インスリン抵抗性に対する和漢薬の効果を検討した。その結果、八味地黄丸に高インスリン血症改善作用、黄連解毒湯、桂枝茯苓丸、大柴胡湯、八味地黄丸、防已黄耆湯に脂質代謝を是正する作用が認められ、これらの作用によりインスリン抵抗性に好影響を与える可能性を示唆する知見が得られた。さらに、八味地黄丸ならびに防已黄耆湯投与後の脂肪組織における遺伝子発現をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した結果、和漢薬の投与により遺伝子発現が異なっており、これらの変化がインスリン抵抗性における作用発現の相違に関与している可能性が示唆された。
著者
山元 紀世子 乗安 久晴 櫛山 因 村田 幸栄 渡邉 誠 藤本 孝子 大楠 清文
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.277-283, 2017-05-25 (Released:2017-05-31)
参考文献数
10

Streptococcus infantariusによる感染性心内膜炎(infective endocarditis; IE)が冠動脈閉塞を引き起こした一例を経験した。症例は84歳男性。4年前に大動脈弁置換術の既往があり,胸痛を主訴に救急搬送された。緊急心臓カテーテル検査において冠動脈の左前下行枝から塞栓物が吸引されたが,来院時発熱はなくIEは疑われていなかった。塞栓物は病理組織検査にて微生物感染疑いと診断されたことから,血液培養や経食道心エコー検査などIEの精査が施行された。血液培養は翌日2セットすべてのボトルが陽性となり,また経食道心エコー検査にて大動脈弁に疣腫を認めたことから,IEによる冠動脈塞栓症と診断され,抗菌薬治療が開始された。弁置換術既往などIEのハイリスク患者は,症状や臨床検査値が軽度でもIEを疑い,早期精査施行が望ましい。IEの原因菌は16S rRNA塩基配列の解析によりS. infantariusと決定された。本菌を含むbovis groupの菌種は,IEや髄膜炎,消化管悪性腫瘍など重篤な疾患との関連性が高く,正確な菌種同定が求められる。しかし,Streptococcus属菌種は,生化学的同定法では鑑別困難な場合が多いため,同定困難な場合は専門施設へ解析が依頼できるよう,日頃から体制を整えておく必要がある。