著者
青木 香保里 藤本 尊子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.247, 2003 (Released:2004-05-25)

目的:高度化、複雑化する現代社会にあって、生活を構造的に把握する視点の有無は生活にたいする認識と実践のありようを左右する。こうした状況下にあって教育の役割は一層重要になる。本研究では、生活を構造的に把握するための枠組みの検討と整理を試みるとともに、教育における実習の現代的再構成の意義について述べる。方法:文献研究による。なお、本研究の適用対象としては学校教育における家庭科教育を主として考えるが、家政教育、生活科学教育などへの拡張も可能であると考えている。結果:私たちの生活は人間の生産的な活動を基盤に成立している。人間の生産的な活動は「労働の生活」「職業の生活」として具体化する。労働するうえで必要となるエネルギー、すなわち労働力は、主として職業の生活において必要とされ消費される。また、労働力を回復する場として主となるのが家庭生活である。生活の総体からみた家庭生活の役割は、「労働力の再生産」にあることになる。したがって、「労働力の消費」「労働力の再生産」から構成される人間の生活活動は、その両側面を職業と家庭によって構造的に枠組みされていることになる。ゆえに、よりよい生活の実現のためには、労働を「労働力の消費」と「労働力の再生産」から双方向的に分析・総合する認識と実践が不可欠である。労働の多様化に伴い「労働とは何か」が見えにくくなっている現在、生産・消費と密接不可分な関係にある労働にたいする認識形成と実践化に向けて、教育において単なるものづくりに終始しない実習を積極的に位置づける必要がある。
著者
藤本 尊子 丹羽 雅子
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.T27-T35, 1989
被引用文献数
2 4

目的 防寒用被服材料設計のための基礎資料を提供するために, ウール及びポリエステル (PET) 繊維集合体の有効熱伝導率を標準状態にて, ThermolaboII型 (KES-F7) を応用して測定した.防寒用材料は, 添毛や充填など低密度で利用されているのが特徴なので, 繊維の体積分率10%以下の領域で, 繊維配列 (熱流に対し平行又は直角), 繊維自体の熱伝導率に及ぼす影響を調べる.測定は, 試料の平面重あるいは厚さを一定にする2つの場合について実施した.又, 保温性評価の基礎となる熱コンダクタンスに占める伝導及び輻射伝熱を簡単なモデルを適用して分画する.成果 (1) PET繊維集合体の有効熱伝導率は, 繊維自体の熱伝導性の異方性を反映して, 熱流に繊維が直角に配列した場合著しく高く, 体積分率に比例して増加するが, ウールスライバーでは, 異方性は小さく, 増加も少ない.(2) 厚く, 低密度の集合体では, 輻射による熱輸送が急増する.重量が一定で厚さを変化させた場合は, 体積分率に反比例して熱の輸送率が増える.厚さが一定で体積分率が変化する場合は, 体積分率の減少とともに輻射の寄与は増大するが, その増加はゆるやかである.(3) 構成繊維が太いほど, 繊維集合体の有効熱伝導率は高い.これは, 集合体内部での繊維同志の接触面, 又, 質量当りの表面積の変化によると考えられる.