著者
吉田 恵美 藥師寺 佳菜子 永渕 美樹 田中 るみ 梶野 美保 藤田 君支
出版者
一般社団法人 日本糖尿病教育・看護学会
雑誌
日本糖尿病教育・看護学会誌 (ISSN:13428497)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.121-128, 2022-09-30 (Released:2022-10-27)
参考文献数
21

目的:糖尿病性腎症患者を対象に,6年間の後方視的調査を行い,チーム医療による個別的な予防指導と腎機能や血糖管理などの評価指標との関連について明らかにする.方法:腎症2期以降の患者について,診療記録を用いて個別予防指導群(介入群)と通常診療群(非介入群)で評価指標を比較し,HbA1c,eGFR,血圧を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:分析対象者は介入群224名,非介入群209名であった.ベースライン(開始時)において,HbA1cは介入群7.5(6.8-8.9)%,非介入群7.2(6.6-8.1)%で介入群の方が有意に高かったが(p<0.05),観察期間終了時,介入群では有意に改善を認めた(p<0.01).また,介入回数が多いことがHbA1cの維持・改善に有効で,eGFRはベースライン時腎症3期以降では悪化を認めた.結論:予防指導は腎症進行例では限界を示したが,血糖管理には有効であることが示唆された.
著者
宮坂 啓子 藤田 君支 田渕 康子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.58-66, 2014-03-20 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

〔目的〕認知症高齢者を介護する家族の介護肯定感とそれに影響する要因を明らかにすることを目的とする.ストレス対処能力(SOC),主観的健康感,ソーシャルサポートなどの影響要因について検討した.〔方法〕認知症高齢者を在宅で介護している主介護者に無記名の自記式質問紙調査を実施した.分析対象者は有効回答のあった188人とした.調査には介護肯定感尺度, SOC短縮版尺度, SF-8を用い,ソーシャルサポートと介護者・被介護者属性等についてたずねた.〔結果〕介護肯定感は平均値が36.5±7.9点であった.介護肯定感を従属変数とした重回帰分析の結果,介護肯定感に影響を及ぼす要因は介護者が女性(β=0.162, p=0.006), SF-8のMCSが高い(β=0.218, p=0.001), SOCが高い(β=0.133, p=0.043),「適切な介護の仕方が分かる」(β=0.410, p=0.000)ことが影響していた.これらの4変数により全体の35.7%を説明した.〔結論〕在宅で認知症高齢者を介護する家族の介護肯定感を高めるには, SOCや精神的QOLを高める支援とソーシャルサポートが重要なことが示唆された.
著者
藤田 君支 牧本 清子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_53-2_60, 2007-06-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,人工股関節患者における主観的な身体的健康状態の測定するために,Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)(日本語翻訳版)の信頼性・妥当性を検討することである.術後1年以上の220名を分析した結果,WOMAC下位項目の「痛み」項目で床効果があったが,内的整合性はWOMACの3つの下位尺度内でのCronbach's α係数が0.74~0.95で,29名の再調査によるSpearman相関係数,各項目の一致率が高く,信頼性が示された.SF-36との比較による基準関連妥当性と弁別的妥当性は認められたが,構成妥当性についてはWOMAC(英語原版)と尺度構造が異なる股関節術後患者の身体的な特徴に即した4因子構造の解釈が妥当と考える.日本人股関節術患者において,WOMAC(日本語翻訳版)の信頼性・妥当性が示され,評価指標として有用なことが示唆された.
著者
八田 勘司 堀川 悦夫 藤田 君支 佐藤 和子
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、長期療養施設における高齢者に非薬物療法としてのユーモアセラピーを用いて、心身の活性化を図り、ユーモアセラピーの効果を明らかにすることである。さらに、プログラムや実施上の留意点などを検討しモデルを開発することである。本年度は、総合保健施設の通所サービスを利用している高齢者で、調査に同意の得られた「ちんどんセラピー」介入群(18名)、非介入群(対照群)12名を分析対象とした。平日の午前中に、ちんどん屋を専業としている協力者による「ユーモアセラピー」(演奏、口上、大道芸、踊りなど30分間)を行った。介入前後に採血を行い、神経系、内分泌系、免疫系の変化を分析した。気分評価には5段階尺度を用いた。また、ちんどん屋によるユーモアセラピー中の表情・行動の変化を分析するため、同意の得られた患者6名にビデオ撮影を行った。対照群は別の日の午前中に2回採血を行い、介入群と比較検討した。その結果、介入群では、βエンドルフィン値、アドレナリン値、ノルアドレナリン値が介入前と介入後の間で有意に高値を示し、コルチゾール値は有意に低下したが、NK細胞活性は有意な差は認められなかった。対照群では、2回のそれぞれの値に有意な差はみられなかった。気分評価は実施前と実施後で快の方向に有意に変化した。プログラムの面白度では、「玉すだれ」が最も高く、踊りの場面で笑顔が多くみられた。ちんどん屋による「ユーモアセラピー」は、ちんどん太鼓やゴロス、トランペットなどの楽器で生演奏を行い、場内を練り歩くプログラムで構成されている。賑やかでリズミカルな音楽、大道芸、盆踊り等を行うことは、交感神経系を刺激して適度な緊張状態に導き、心身の活性化につながると考えられる。ちんどん屋による「ユーモアセラピー」での楽しい笑いは、高齢者の気分を高め、神経・内分泌系に影響を与えて、高齢者の健康増進に役立つ可能性が示唆された。プログラムは音楽と大道芸と踊りの三要素で構成し、楽しい雰囲気を作ることが重要である。