著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 藤田 秀人 林 泰寛 高村 博之 谷 卓 太田 哲生 萱原 正都 望月 健太郎 蒲田 敏文 松井 修
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.609-614, 2011

膵癌では, borderline resectableと言えども局所癌遺残のないR0が得られなければ切除の意義は低い. 膵頭部癌切除標本の検討では病理組織学的にborderline resectableとなる主要因子は"mesopancreas"への進展である. Mesopancreasへの進展範囲はMDCTによって正確に診断可能で, 主腫瘍から連続する粗大網状影, 索状影として捉えられる. R0を得るためには, MDCTで詳細に術前進展範囲診断を行った上で術式立案をすべきである. 特にmesopancreasに関連した, 膵頭神経叢~上腸間膜動脈神経叢への浸潤, 門脈系への浸潤, 上腸間膜動脈への浸潤には注意を払う必要があり, R0のためには, 上腸間膜動脈神経叢全周郭清, 門脈合併切除, 上腸間膜動脈合併切除も考慮する必要がある. 「はじめに」膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術は高難易度, 高侵襲であるが, 依然予後は不良で, 近年の抗癌剤治療の進歩に伴い, "切除"の意義が問われている.
著者
鯵坂 秀之 坂東 悦郎 安居 利晃 藤田 秀人 加治 正英 木村 寛伸 前田 基一 薮下 和久 小西 孝司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.189-193, 2002-02-01
参考文献数
11
被引用文献数
3

1995年4月〜2000年9月の虫垂炎手術390例中, 虫垂切除術(以下虫切)の既往のある4例(1.0%)を経験した.内訳は(1)53歳男性(44歳時虫切), (2)42歳女性(8歳時虫切), (3)52歳女性(22歳時虫切), (4)58歳男性(40歳時虫切)である.全例右下腹部痛で発症し, 初診時保存的加療で経過観察されていた.手術適応決定には全例CTが用いられ, 術前診断は症例(2)の遺残虫垂炎以外回盲部膿瘍であった.発症から手術までは症例(1)から順に1か月, 3日, 10日, 17日で, 全例回盲部切除術が施行された.切除標本の病理検索にて虫垂切除術の遺残虫垂炎と診断された.虫垂切除術の既往のある急性腹症に遭遇した場合遺残虫垂炎も鑑別診断にあげるべきであるが, その確定診断は炎症が虫垂に限局している時点では困難である.初回虫垂切除術で遺残虫垂をなくし遺残虫垂炎を予防することが重要であると考える.