著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 中沼 伸一 林 泰寛 高村 博之 二宮 致 伏田 幸夫 萱原 正都 太田 哲生
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 = The Journal of Japan Pancreas Society (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.178-184, 2013-04-25
参考文献数
13
被引用文献数
3

膵頭部癌の膵頭十二指腸切除術後消化吸収障害に対する,腸溶性高力価膵消化酵素剤パンクレリパーゼの有効性を,従来の膵消化酵素剤から本剤に切り替えた7症例で評価した.消化吸収障害は下痢の程度,体重の増減,日常生活の活動性,消化不良の症状を織り交ぜWong-Bakerのフェイススケールにあわせて,0から5までのGrade分類を新たに作成して評価した.1例で重度の下痢がみられ投与中止した.他の6例では腸溶性パンクレリパーゼへの変更によって,5例で体重増加がみられ,4例で止痢剤減量を要した.消化吸収障害Gradeは,体重増加のなかった症例,止痢剤減量ができなかった症例も含め6例全例で0または1にまで改善していた.膵頭部癌術後の消化吸収障害の改善に,腸溶性パンクレリパーゼの投与は,有用であることが示唆された.また,今回考案した臨床に即したGrade分類は,消化吸収障害の評価に有用であった.<br>
著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 藤田 秀人 林 泰寛 高村 博之 谷 卓 太田 哲生 萱原 正都 望月 健太郎 蒲田 敏文 松井 修
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.609-614, 2011

膵癌では, borderline resectableと言えども局所癌遺残のないR0が得られなければ切除の意義は低い. 膵頭部癌切除標本の検討では病理組織学的にborderline resectableとなる主要因子は"mesopancreas"への進展である. Mesopancreasへの進展範囲はMDCTによって正確に診断可能で, 主腫瘍から連続する粗大網状影, 索状影として捉えられる. R0を得るためには, MDCTで詳細に術前進展範囲診断を行った上で術式立案をすべきである. 特にmesopancreasに関連した, 膵頭神経叢~上腸間膜動脈神経叢への浸潤, 門脈系への浸潤, 上腸間膜動脈への浸潤には注意を払う必要があり, R0のためには, 上腸間膜動脈神経叢全周郭清, 門脈合併切除, 上腸間膜動脈合併切除も考慮する必要がある. 「はじめに」膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術は高難易度, 高侵襲であるが, 依然予後は不良で, 近年の抗癌剤治療の進歩に伴い, "切除"の意義が問われている.
著者
倉田 徹 中沼 伸一 林 泰寛 田島 秀浩 高村 博之 太田 哲生
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.2839-2843, 2014 (Released:2015-04-30)
参考文献数
21

症例は82歳,女性.非アルコール性脂肪肝炎,糖尿病の加療中に肝S4/8,径5cmの肝腫瘤を指摘された.術前検査ではリンパ節,遠隔転移を認めず,腹腔鏡下に胆嚢摘出術,肝右葉授動の後,小開腹下にS4+前腹側区域の肝切除術を行った.病理結果は中~低分化型肝細胞癌成分と低分化型胆管癌成分が混在する混合型肝癌であり,切除断端は陰性であった.術後第26病日に呼吸苦が出現し,低酸素血症と両肺野の広範なスリガラス陰影の出現を認めた.急性呼吸性窮迫症候群と判断し集学的治療を開始したが,42日後死亡した.死後の肺生検にて胆管癌に類似した腺管構造を有する腫瘍細胞の増殖と繊維化を認め,癌性リンパ管症と診断した.術後早期に癌性リンパ管症を発症した原因として,悪性度の高い胆管癌成分を有していたことに加え高齢や肝切離面積が比較的広範囲となり手術侵襲が増大したことにより腫瘍の形成・転移能が促進された可能性も推測された.
著者
林 泰寛 高村 博之 正司 政寿 中沼 伸一 古河 浩之 牧野 勇 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 北川 裕久 太田 哲生
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.747-751, 2014-03-31 (Released:2014-09-29)
参考文献数
9

劇症肝炎は,その急激な病態の進行から他臓器障害を発症する例にもしばしば遭遇する。今回われわれは劇症肝炎に急性膵炎を合併した2例を経験した。2例の肝障害の内訳はB型慢性肝炎急性増悪1例,原因不明1例であった。2例ともに内科的治療が奏功せず,肝移植を予定した。劇症肝炎に対する治療に並行して膵炎に対する治療も行ったが奏功せず,肝移植を中止せざるを得なかった。劇症肝炎に対する治療は肝移植を含め,一定の成績が期待できるため,他臓器合併症の予防と治療が重要であり,急性膵炎の合併にも十分な注意を払う必要がある。劇症肝炎に合併する急性膵炎においてはB型肝炎ウイルスの関与が知られている。一方で,近年high mobility group box 1の急性膵炎の病態への関与も示唆されており,その特性を利用した治療が期待される。
著者
林 泰寛 谷 卓 清水 康一 高村 博之 萱原 正都 太田 哲生
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.1508-1511, 2009 (Released:2009-11-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は77歳,女性.高血圧にて内服加療中であった.約半年前,近医胸部CTにて右横隔膜下に直径11cm大の嚢胞性病変を指摘されるも肝嚢胞として放置されていた.今回,右側腹部から背部痛を主訴に前医を受診したところ,嚢胞性病変の増大を指摘され当科紹介となった.当院CTにて右副腎原発の嚢胞性腫瘍が強く疑われ,尿中カテコールアミン,Vanillylmandelic acid(VMA)の上昇と,131I-MIBGシンチグラフィーにて腫瘍部への集積を認めたことから褐色細胞腫と診断し,右副腎切除術を施行した.嚢胞内容は陳旧性の出血,凝血塊であった.病理組織学的には偽嚢胞を伴う褐色細胞腫であった.嚢胞性変化を伴う褐色細胞腫の報告例は本邦では自験例も含めて50例に満たず稀であり,特に右副腎原発の場合,肝由来の嚢胞性疾患との鑑別が重要であると考えられた.
著者
寺川 裕史 牧野 勇 正司 政寿 中沼 伸一 酒井 清祥 林 泰寛 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 高村 博之 二宮 致 北川 裕久 伏田 幸夫 藤村 隆 尾山 武 井上 大 小坂 一斗 蒲田 敏文 太田 哲生
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 = The Biliary tract & pancreas (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.481-485, 2014-05-01

症例は56歳, 男性. 検診にて膵頭部腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 腹部USでは膵頭部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は多彩なエコー輝度が混在するモザイク状であった. CTでは膵外に突出する境界明瞭な多房性嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁および隔壁に造影効果を認めた. MRIにおいては自由水の信号と比較してT1強調像ではより高い信号, T2強調像ではより低い信号, 拡散強調像ではより高い信号を呈しており, 粘調度や蛋白成分の高い内容物の存在が示唆された. 年齢, 性別, 画像所見およびCA19-9高値などを総合的に評価し, lymphoepithelial cyst (LEC)を第一に疑った. 他の膵嚢胞性疾患が否定できないため切除生検としての腫瘍核出術を施行し, 病理学的にLECと診断した. 詳細な画像検査に加え, 性別やCA19-9値などを総合的に評価することにより, 膵LECを疑うことが可能であると考えられた.
著者
野間 晴雄 森 隆男 高橋 誠一 木庭 元晴 伊東 理 荒武 賢一朗 岡 絵理子 永瀬 克己 朴 賛弼 中俣 均 平井 松午 山田 誠 山元 貴継 西岡 尚也 矢嶋 巌 松井 幸一 于 亜 チャン アイン トゥアン グエン ティ ハータイン チャン ティ マイ・ホア 水田 憲志 吉田 雄介 水谷 彰伸 元田 茂光 安原 美帆 堀内 千加 斎藤 鮎子 舟越 寿尚 茶谷 まりえ 林 泰寛 後藤 さとみ 海老原 翔太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東アジア世界に位置する歴史的地域としての東シナ海,日本海,黄海・渤海・中国東北地方,広義の琉球・ベトナム,朝鮮半島の5つの部分地域として,環東シナ海,環日本海沿岸域の相互の交流,衝突,融合,分立などを広義の文化交渉の実体としてとらえる。それが表象された「かたち」である建築,集落,土地システム,技術体系,信仰や儀礼,食文化等を,地理学,民俗建築学,歴史学・民俗学の学際的研究組織で,総合的かつ複眼的に研究することをめざす。いずれも,双方向の交流の実体と,その立地や分布を規定する環境的な側面が歴史生態として明らかになった。今後はこの視点を適用した論集や地域誌の刊行をめざしたい。