著者
伏田 享平 渡辺 絢子 今井 二郎 山中 啓之 藤貫 美佐 戸村 元久
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.57-62, 2015-08-31

ITシステム開発においてプロジェクトが失敗する原因の一つとして,計画時やプロジェクトの早期に開発対象システムの仕様を十分に把握できていなかったことが挙げられる.開発対象の規模に応じた十分なプロジェクト体制を構築できていない場合,開発要員がシステム全体の仕様を十分把握することができず,結果としてプロジェクトの問題化につながる可能性がある.本稿では開発計画時の規模とプロジェクト体制に着目する.開発要員1 人あたりが把握すべきシステムの規模を「仕様把握規模」と定義し,この規模とプロジェクトの成否との関係を定量的に分析した.分析にあたっては,要件定義工程での体制と開発規模との関係に着目した.分析の結果,仕様把握規模が50KS/人以上であったプロジェクトは失敗する可能性があることがわかった.仕様把握規模を導入することで,開発体制の観点からプロジェクト計画の妥当性をチェックできる可能性がある.
著者
井ノ口 伸人 大杉 直樹 伏田 享平 渡辺 絢子 吉野 順 藤貫 美佐 渡辺 真太郎 戸村 元久 木谷 強
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.637-648, 2015-02-15

本稿では,アプリケーションソフトウェアを稼働させるための土台であるシステム基盤構築の工数見積りモデルの継続的な改善と普及展開について述べる.アプリケーションソフトウェア開発の工数見積りモデルについては多くの研究で有効性が報告されているが,企業のITシステム開発実務で広く利用されているとはいいにくい.システム基盤構築については工数見積りモデルの研究は少なく,利用事例も多くない.本稿では,NTTデータにおけるシステム基盤構築工数見積りモデルの継続的な改善と利用範囲の拡大について事例を報告する.規模を表すパラメータ8種類,基盤構築の難易度や能力を表すパラメータ12種類を,プロジェクトマネージャからアンケート調査でデータを収集した.重回帰分析で予測モデルを作成し,社内,国内グループ会社へ普及展開を行った.2008年度2つの部署のプロジェクト10件のデータから作成した見積りモデルを文書化して当該部署に提供していた取り組みは,2012年度20の部署から収集したデータ43件から作成した予測モデルをWebアプリケーションに組み込んで全国内グループ会社へ提供するに至った.2008年度に0.31であったモデルの相対誤差中央値は,2012年度に0.34に多少悪化した.一方,見積りモデル作成に利用したデータに基づき,2008年度はサーバ台数が3~15台の小規模システムのみを適用可能プロジェクトとしていたが,2012年度にサーバ台数3~70台の中大規模システムまで適用可能範囲を拡大した.2008年度5名であったモデルの年間利用者数は,2012年度には479名まで増加した.This paper reports continuous improvement and deployment of a series of effort estimation models for system platform development. Many studies have reported the effectiveness of effort estimation models; however few of them have used in companies' practical system development. This paper reports an example of deployment of a series of estimation models in NTT DATA Corporation with continuous improvement. In order to derive the model, we first collected 8 metrics for sizing and 12 metrics for measuring difficulty and team capability by a questionnaire for 10 project managers. We then derived the statistical model by regression analysis with the collected data. Although median of relative error of the model was 0.31 in 2008, it had been a little degraded to 0.34 in 2012; on the other hand, its applicability had been largely expanded from small-scale system development consisting of 3 to 15 servers, to medium- or large-scale system development consisting of 3 to 70 servers. While we first only provided the documented model to 5 practitioners in 1 company section, now we had developed a web application with the estimation model. This web application was used by 5 users only in 2008; but it had been grown up to 479 users in 2012.
著者
井ノ口 伸人 大杉 直樹 伏田 享平 渡辺 絢子 吉野 順 藤貫 美佐 渡辺 真太郎 戸村 元久 木谷 強
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.637-648, 2015-02-15

本稿では,アプリケーションソフトウェアを稼働させるための土台であるシステム基盤構築の工数見積りモデルの継続的な改善と普及展開について述べる.アプリケーションソフトウェア開発の工数見積りモデルについては多くの研究で有効性が報告されているが,企業のITシステム開発実務で広く利用されているとはいいにくい.システム基盤構築については工数見積りモデルの研究は少なく,利用事例も多くない.本稿では,NTTデータにおけるシステム基盤構築工数見積りモデルの継続的な改善と利用範囲の拡大について事例を報告する.規模を表すパラメータ8種類,基盤構築の難易度や能力を表すパラメータ12種類を,プロジェクトマネージャからアンケート調査でデータを収集した.重回帰分析で予測モデルを作成し,社内,国内グループ会社へ普及展開を行った.2008年度2つの部署のプロジェクト10件のデータから作成した見積りモデルを文書化して当該部署に提供していた取り組みは,2012年度20の部署から収集したデータ43件から作成した予測モデルをWebアプリケーションに組み込んで全国内グループ会社へ提供するに至った.2008年度に0.31であったモデルの相対誤差中央値は,2012年度に0.34に多少悪化した.一方,見積りモデル作成に利用したデータに基づき,2008年度はサーバ台数が3~15台の小規模システムのみを適用可能プロジェクトとしていたが,2012年度にサーバ台数3~70台の中大規模システムまで適用可能範囲を拡大した.2008年度5名であったモデルの年間利用者数は,2012年度には479名まで増加した.
著者
藤貫 美佐 西尾 敏郎 端山 毅
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.3-6, 2006-08

ソフトウェア開発プロジェクトにおいて,生産性等に関する過去の実績データを計画策定に用いる際に留意すべき事項を整理した.一般にこのようなデータはばらつきが大きく,平均値や中央値でその特徴を簡略には表していると解釈することには危険が伴う.全社スタッフとしての著者らの日ごろの活動から,実用的な観点でプロジェクトにおける生産性データ活用を促進するアプローチについて議論した.