著者
伏田 享平 飯田 元
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_61-1_74, 2012-01-26 (Released:2012-03-26)

ソフトウェア開発プロセスのモデリング(ソフトウェア開発に関する諸作業の実施に関する約束事等を明示的に記述すること)は,プロセス実行中の定量的なプロジェクト管理や,CMMI等に代表される定性的プロセス評価の枠組みにとって,とても重要である.本稿ではソフトウェアプロセスに関する最新の研究動向を踏まえつつ,ソフトウェアプロセスのモデリングと,プロジェクト管理やプロセス改善への応用について解説する.また,ライフサイクルプロセスやプロセスの評価・改善に関連する主要な標準規格や参照モデルについても紹介する.
著者
角田 雅照 戸田 航史 伏田 享平 亀井 靖高 ナガッパン メイヤッパン 鵜林 尚靖
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_129-2_143, 2014

本研究では,上流工程の活動実績に基づく工数見積もりに着目し,その見積もり精度を定量的に評価する.具体的には,上流工程での実績工数を説明変数とする開発総工数見積もりモデルを作成し,ソフトウェア規模に基づく工数見積もりモデルと精度を比較する.さらに,実績工数とソフトウェア規模の両方を説明変数とした場合のモデルとも比較する.実験ではISBSGデータセットを用い,計画工程と要求分析工程を上流工程とみなしてモデルを構築した.実験の結果,計画・要求分析の合計工数とソフトウェア規模の両方を説明変数として用いることにより,見積もり精度が最も改善する(<I>BRE</I>(Balanced Relative Error)平均値が148.4%から75.4%に改善する)ことがわかった.
著者
伏田 享平
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

過去に実施された開発プロセスの再利用による開発プロセス記述の支援を目指して研究を実施し,下記の成果を得た.(1)開発プロセスの品質を定量的に表す尺度として,作業の並列性,複雑性に着目したプロセスメトリクスを考案した.(2)(1)で考案したプロセスメトリクスを,実際の開発プロジェクトのデータを対象に抽出し,計測可能であることを確認した.(3)プロセスメトリクスとプログラムの複雑度メトリクスを利用して,実際のソフトウェア開発プロジェクトを対象に定量的なプロセスの品質評価を実施した.その結果,プロセスメトリクスを用いて作業が複雑となるプロセスを特定することが可能となった.
著者
山本 智基 伏田 享平 滝本 雅之
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.148-156, 2018-08-29

IT システム開発プロジェクトにおいて類似するプロジェクトの情報を参照する機会は多い.開発,管理に従事する要員は,これらの情報を用いてプロジェクトの計画作成や IT システムの設計,実装を行う.一方で,プロジェクトの類似性を判断する観点は明らかになっていない.そのため類似プロジェクトの選定作業は属人的になっている.本稿では IT システム開発において,類似プロジェクトの選定,参照を支援する仕組みを提案する.まず,どのような観点に着目してプロジェクトの類似性を判断しているかを明らかにするため,実務者を対象にアンケート調査を実施した.調査の結果,利用シーンにより重要視される観点に一定の傾向があることを確認した.次に調査結果をもとに,プロジェクトの類似性を定量的に表す指標を定義した.この指標は類似プロジェクトを利用するシーンに応じて,類似性を判断する観点の重要度を考慮できる.最後に,提案する指標を用いて類似プロジェクトを検索する Web システムを構築した.この Web システムを用いることで,熟練者でなくても利用シーンに応じて容易に類似プロジェクトを検索,参照することが可能となる.
著者
角田 雅照 伏田 享平 亀井 靖高 中村 匡秀 三井 康平 後藤 慶多 松本 健一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.874-881, 2011-12-15 (Released:2012-02-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本稿では,時空間情報(位置,移動時間,移動距離)と動作に基づく認証方法を提案する.ユーザは時空間情報で定義された特定の認証点において,特定の動作を行うことにより認証に成功する.ただし,時空間情報を認証に用いる場合,認証に時間が掛かり,やり直しが容易ではないため,正しいユーザが認証に失敗する確率を抑える必要がある.そこで,認証行為の部分的な誤りを許容する,部分一致認証を提案する.また,時空間文字を用いて安全性の評価方法を定式化するとともに,提案手法が安全性において有効であることを実験により示す.実験により提案方法の安全性を評価した結果,本人拒否率は0.233%,他人受入率は0.010%となった.
著者
伏田 享平 渡辺 絢子 今井 二郎 山中 啓之 藤貫 美佐 戸村 元久
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.57-62, 2015-08-31

ITシステム開発においてプロジェクトが失敗する原因の一つとして,計画時やプロジェクトの早期に開発対象システムの仕様を十分に把握できていなかったことが挙げられる.開発対象の規模に応じた十分なプロジェクト体制を構築できていない場合,開発要員がシステム全体の仕様を十分把握することができず,結果としてプロジェクトの問題化につながる可能性がある.本稿では開発計画時の規模とプロジェクト体制に着目する.開発要員1 人あたりが把握すべきシステムの規模を「仕様把握規模」と定義し,この規模とプロジェクトの成否との関係を定量的に分析した.分析にあたっては,要件定義工程での体制と開発規模との関係に着目した.分析の結果,仕様把握規模が50KS/人以上であったプロジェクトは失敗する可能性があることがわかった.仕様把握規模を導入することで,開発体制の観点からプロジェクト計画の妥当性をチェックできる可能性がある.
著者
井ノ口 伸人 大杉 直樹 伏田 享平 渡辺 絢子 吉野 順 藤貫 美佐 渡辺 真太郎 戸村 元久 木谷 強
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.637-648, 2015-02-15

本稿では,アプリケーションソフトウェアを稼働させるための土台であるシステム基盤構築の工数見積りモデルの継続的な改善と普及展開について述べる.アプリケーションソフトウェア開発の工数見積りモデルについては多くの研究で有効性が報告されているが,企業のITシステム開発実務で広く利用されているとはいいにくい.システム基盤構築については工数見積りモデルの研究は少なく,利用事例も多くない.本稿では,NTTデータにおけるシステム基盤構築工数見積りモデルの継続的な改善と利用範囲の拡大について事例を報告する.規模を表すパラメータ8種類,基盤構築の難易度や能力を表すパラメータ12種類を,プロジェクトマネージャからアンケート調査でデータを収集した.重回帰分析で予測モデルを作成し,社内,国内グループ会社へ普及展開を行った.2008年度2つの部署のプロジェクト10件のデータから作成した見積りモデルを文書化して当該部署に提供していた取り組みは,2012年度20の部署から収集したデータ43件から作成した予測モデルをWebアプリケーションに組み込んで全国内グループ会社へ提供するに至った.2008年度に0.31であったモデルの相対誤差中央値は,2012年度に0.34に多少悪化した.一方,見積りモデル作成に利用したデータに基づき,2008年度はサーバ台数が3~15台の小規模システムのみを適用可能プロジェクトとしていたが,2012年度にサーバ台数3~70台の中大規模システムまで適用可能範囲を拡大した.2008年度5名であったモデルの年間利用者数は,2012年度には479名まで増加した.This paper reports continuous improvement and deployment of a series of effort estimation models for system platform development. Many studies have reported the effectiveness of effort estimation models; however few of them have used in companies' practical system development. This paper reports an example of deployment of a series of estimation models in NTT DATA Corporation with continuous improvement. In order to derive the model, we first collected 8 metrics for sizing and 12 metrics for measuring difficulty and team capability by a questionnaire for 10 project managers. We then derived the statistical model by regression analysis with the collected data. Although median of relative error of the model was 0.31 in 2008, it had been a little degraded to 0.34 in 2012; on the other hand, its applicability had been largely expanded from small-scale system development consisting of 3 to 15 servers, to medium- or large-scale system development consisting of 3 to 70 servers. While we first only provided the documented model to 5 practitioners in 1 company section, now we had developed a web application with the estimation model. This web application was used by 5 users only in 2008; but it had been grown up to 479 users in 2012.
著者
井ノ口 伸人 大杉 直樹 伏田 享平 渡辺 絢子 吉野 順 藤貫 美佐 渡辺 真太郎 戸村 元久 木谷 強
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.637-648, 2015-02-15

本稿では,アプリケーションソフトウェアを稼働させるための土台であるシステム基盤構築の工数見積りモデルの継続的な改善と普及展開について述べる.アプリケーションソフトウェア開発の工数見積りモデルについては多くの研究で有効性が報告されているが,企業のITシステム開発実務で広く利用されているとはいいにくい.システム基盤構築については工数見積りモデルの研究は少なく,利用事例も多くない.本稿では,NTTデータにおけるシステム基盤構築工数見積りモデルの継続的な改善と利用範囲の拡大について事例を報告する.規模を表すパラメータ8種類,基盤構築の難易度や能力を表すパラメータ12種類を,プロジェクトマネージャからアンケート調査でデータを収集した.重回帰分析で予測モデルを作成し,社内,国内グループ会社へ普及展開を行った.2008年度2つの部署のプロジェクト10件のデータから作成した見積りモデルを文書化して当該部署に提供していた取り組みは,2012年度20の部署から収集したデータ43件から作成した予測モデルをWebアプリケーションに組み込んで全国内グループ会社へ提供するに至った.2008年度に0.31であったモデルの相対誤差中央値は,2012年度に0.34に多少悪化した.一方,見積りモデル作成に利用したデータに基づき,2008年度はサーバ台数が3~15台の小規模システムのみを適用可能プロジェクトとしていたが,2012年度にサーバ台数3~70台の中大規模システムまで適用可能範囲を拡大した.2008年度5名であったモデルの年間利用者数は,2012年度には479名まで増加した.
著者
角田 雅照 戸田 航史 伏田 享平 亀井 靖高 ナガッパン メイヤッパン 鵜林 尚靖
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_129-2_143, 2014-04-24 (Released:2014-05-22)

本研究では,上流工程の活動実績に基づく工数見積もりに着目し,その見積もり精度を定量的に評価する.具体的には,上流工程での実績工数を説明変数とする開発総工数見積もりモデルを作成し,ソフトウェア規模に基づく工数見積もりモデルと精度を比較する.さらに,実績工数とソフトウェア規模の両方を説明変数とした場合のモデルとも比較する.実験ではISBSGデータセットを用い,計画工程と要求分析工程を上流工程とみなしてモデルを構築した.実験の結果,計画・要求分析の合計工数とソフトウェア規模の両方を説明変数として用いることにより,見積もり精度が最も改善する(BRE(Balanced Relative Error)平均値が148.4%から75.4%に改善する)ことがわかった.