著者
虎尾 充 今田 和史
出版者
北海道立水産孵化場
雑誌
北海道立水産孵化場研究報告 (ISSN:02866536)
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-48, 2008-03

1.湖内残留型と遡河回遊型の生活史多型を持つ網走湖産ワカサギの形態形質を用いて多変量解析を行い、2群の判別を試みた。2.主成分分析により、両群の形態的差異の特徴に与える測定部位の寄与率を検討した。この結果、体長や吻端-尾鰭基底間の長さなど魚体の長さ・肥満度などのサイズに関わる形質の主成分得点が高かった。3.体長・肥満度・体高・体幅・眼径・両眼間隔・尾柄高・吻端腹鰭基点長・腹鰭尾鰭基点長の10形質を用いて線形判別分析を行った。この結果、95%程度の高い確率で湖内残留型個体と遡河回遊型個体への判別が可能であった。4.湖内残留群と遡河回遊群の形態差は、それぞれの成長過程の違いによる影響が大きいと考えられ、その要因として、動物プランクトン食性を持つ湖内残留群と動物プランクトンの他に底生甲殻類なども捕食する遡河回遊群の食性の違いが考えられた。
著者
虎尾 充
出版者
北海道立水産試験場
雑誌
北海道水産試験場研究報告 = Scientific reports of Hokkaido Fisheries Research Institutes (ISSN:21853290)
巻号頁・発行日
no.83, pp.27-36, 2013-03

1997~1999年の5~7月に網走湖内で稚魚ネットを用いてワカサギの採集を行ない,湖内分布と発育様式を検討した。採集されたワカサギは全て仔魚期(Phase A~F)の個体であった。ワカサギ仔魚は発育初期に河川流入域付近に比較的高密度に分布していたが,湖内加入後は速やかに湖内全域に分散すると考えられた。分散後の分布密度や発育段階組成は一様ではなかったが,特定の時期や水域に集中する傾向は見られなかった。仔魚密度指数は1997年級が574個体/曳網で最も高く,1998年と1999年はそれぞれ177個体/曳網と190個体/曳網でほぼ同程度であった。発育速度は1997年級群が最も低かった。
著者
虎尾 充
出版者
北海道立水産試験場
雑誌
北海道水産試験場研究報告 = Scientific reports of Hokkaido Fisheries Research Institutes (ISSN:21853290)
巻号頁・発行日
no.81, pp.131-139, 2012-03

網走湖におけるワカサギ天然魚の初期発育を形態的・生化学的な指標を用いて検討した。形態的には発育段階の移行期である全長12mm,33mm,42mm,54mmに体型の変曲点があると考えられた。RNA/DNAおよびタンパク質/DNA比の変化から,網走湖産ワカサギは仔魚期には盛んな細胞分裂が中心の増殖的成長,仔魚期から稚魚期への移行期には細胞の大きさが増大する肥大的成長,稚魚期以降は増殖・肥大的成長が中心の成長様式を持つと推定された。特に顕著な形態的・生化学的な発育段階の変化が認められた脊索屈曲期(Phase D)は食性転換が認められる時期と対応しており,形態形成・生理的な発育段階・食性移行の関連性が推測される。