著者
下田 和孝 内藤 一明 中島 美由紀 佐々木 義隆 三坂 尚行 今田 和史
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.926-932, 2003-11-15
被引用文献数
2 9

個体標識したサクラマスのスモルトを北海道南部の海域に放流し漁獲による回収結果をもとに放流時のスモルトサイズと回収率および瞬間成長係数との関係を求めた。回収率はスモルトサイズと正の相関を示し,大型のスモルトほど生残率が高いことが示された。一方,スモルトサイズは瞬間成長係数とは負の相関を示し,大型のスモルトほど成長率が低いことが示された。これらの結果から,スモルトサイズの大型化は回帰率の向上には寄与するものの,漁獲サイズの大型化には繋がらないと考えられた。
著者
虎尾 充 今田 和史
出版者
北海道立水産孵化場
雑誌
北海道立水産孵化場研究報告 (ISSN:02866536)
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-48, 2008-03

1.湖内残留型と遡河回遊型の生活史多型を持つ網走湖産ワカサギの形態形質を用いて多変量解析を行い、2群の判別を試みた。2.主成分分析により、両群の形態的差異の特徴に与える測定部位の寄与率を検討した。この結果、体長や吻端-尾鰭基底間の長さなど魚体の長さ・肥満度などのサイズに関わる形質の主成分得点が高かった。3.体長・肥満度・体高・体幅・眼径・両眼間隔・尾柄高・吻端腹鰭基点長・腹鰭尾鰭基点長の10形質を用いて線形判別分析を行った。この結果、95%程度の高い確率で湖内残留型個体と遡河回遊型個体への判別が可能であった。4.湖内残留群と遡河回遊群の形態差は、それぞれの成長過程の違いによる影響が大きいと考えられ、その要因として、動物プランクトン食性を持つ湖内残留群と動物プランクトンの他に底生甲殻類なども捕食する遡河回遊群の食性の違いが考えられた。
著者
佐々木 義隆 水野 伸也 今田 和史 吉田 豊 守山 義昭 足立 伸次
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.211-219, 2008-06-20
参考文献数
16
被引用文献数
2

2003年6月9日から9月10日にかけて天塩川水系のヤマトシジミを採取し軟体部および生殖巣指数の変化を調べるとともに、生殖巣の組織像から成熟時期の推定を行った。また、人工産卵誘発条件として最適な水温および塩分条件、並びに成熟時期と産出卵から着底稚貝までの生産性の関係について検討した。その結果、天塩川では雌雄ともに軟体部および生殖巣指数は6月上旬に低く7月上旬にかけて上昇し、その後短期間に急激に減少した。生殖巣の組織像は6月上旬から下旬にかけて成長期を示し、7月上旬には成熟期から放出期に移行していた。このことから軟体部指数および生殖巣指数の急激な減少は成熟卵および精子の放出によるものと推測された。また、供試貝を水温条件20〜30℃に保った塩分0〜10psuの水に移行し産卵数から最適な水温および塩分条件を検討した結果、水温25℃、塩分5psuの条件で最も多くの産卵がみられた。この条件を用いて7月7日〜8月5日にかけて5回人工産卵誘発を行ったところ、7月9日に人工産卵を行った群において雌親個体あたりの産卵数が最も多く、また10日後における着底稚貝までの生残率が最も高かった。天塩川水系産ヤマトシジミにおいて人工種苗生産に適した時期は極めて限られた期間であり、成熟時期の把握が極めて重要であることが示唆された。