著者
蛯名 純一 三上 かつら
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1_2, pp.1-9, 2019-12-31 (Released:2021-05-14)
参考文献数
14

青森県下北半島において,2017/2018年の冬から春にかけて,2タイプの声をもつイスカが一つの林に同居していた.片方は通年生息し,繁殖もしている下北個体群のイスカ,もう片方は越冬に訪れた繁殖地不明のイスカである.在来集団については2006年以降標識調査を行っており,計測値を蓄積してきた.今回越冬集団と在来集団について計測値を比較したところ,翼長,尾長,ふしょ長は両者で重複が大きかったが,嘴峰長と体重は偏りがみられた.判別分析でも嘴峰長と体重が寄与しており,在来集団は相対的に嘴が短く体重が軽い,越冬集団は嘴が長く体重が重いという特徴があった.嘴峰長の違いはおそらく繁殖地で多く利用している餌資源の違いを反映しているだろう.越冬集団の重い体重は渡り前に体重を増加させていたためかもしれない.
著者
高橋 雅雄 磯貝 和秀 古山 隆 宮 彰男 蛯名 純一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A65-A71, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
26

2014-2015年冬期と2015-2016年冬期に,関東地方の都市部と農村部の計32か所の湿性草原でオオセッカの生息調査を行ない,13か所で計94個体を確認した.そのうち4か所は都市部に位置し,住宅地等で囲まれて孤立した環境だった.また3か所では耕作放棄田で,別の3か所では自然生態観察公園で生息が確認され,これらの環境も越冬地として利用されることが確かめられた。さらに,オオセッカは多様なタイプのヨシ原環境で確認され,従来考えられていた以上に多様な植生環境を利用する可能性が示唆された.
著者
蛯名 純一 三上 かつら 仲村 昇
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-47, 2015

<p>We investigated the structure and materials of two nests of the Common Crossbill <i>Loxia curvirostra</i> collected in Shimokita Peninsula, Aomori Prefecture, Japan. The nest bowl was constructed of pine twigs with bark, shredded bark, wood-chips, other twigs, chemical fiber yarns, staple fibers, grasses, pine needles, feathers, rhizomorphs, animal hairs and fishing line. These materials were utilized in different manner in the exterior and interior nest bowl. Pine twigs with bark were used only for the most exterior portion, whereas the middle and interior parts consisted mainly of shredded bark of <i>Cryptomeria japonica</i>. Harder objects, such as twigs, wood chips and flexible fishing line, used for the middle part, served as a framework to produce a space between fibers and strings, creating a spongy layer of air. The area around the interior nest bowl was composed of thinner bark strings than the middle and outer nest bowl. Chemical fiber yarn, feathers and animal hairs were also found around the interior bowl.</p>
著者
高橋 雅雄 蛯名 純一 宮 彰男 磯貝 和秀 古山 隆 高田 哲良 堀越 雅晴 大江 千尋 叶内 拓哉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.109-116, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

シマクイナCoturnicops exquisitusの越冬生態を明らかにするため,2014-2015年・2015-2016年・2016-2017年の3冬季に,関東地方の65か所の湿性草原で,夏季の音声を用いて生息確認を実施した.その結果,18か所で延べ98個体のシマクイナを確認した.生息確認地は7地域に大別され,耕作放棄地と河川敷が特に利用されていた.また,耕作放棄地で確認個体数が多い傾向があった.さらに,シマクイナは中層ヨシ環境で主に確認され,この植生環境が本種の生息に重要であることが示唆された.