著者
朴 堯星 袰岩 晶 茶山 秀一
出版者
科学技術政策研究所 第1調査研究グループ
巻号頁・発行日
2012-09-10 (Released:2012-09-10)

本稿は、我が国における博士課程修了者等のうち、人文・社会科学分野を専攻していた博士課程修了者等の基本属性と進路動向を分析したものである。その主な特徴は、大学教員として就職する者の割合が約45%(専任およびその他を含む)と理系の19.7%に比べて高いことである。一方、博士課程修了直後にポストドクターとなった者のうちポストドクターの職に留まる者は博士課程修了から時間が経つにつれて減少し、5 年後には人文科学の場合15.1%、社会科学の場合9.3%になり、博士課程修了5 年後に専任の大学教員になった者はそれぞれ56.6%、74.4%まで増えている。これはポストドクターから専任の大学教員になるというアカデミックなキャリアパスが開かれていることを示している。ただし博士課程修了直後に大学の非常勤職等に就いた者は、博士課程修了から5 年後にもそれぞれ65.7%、46.1%が非常勤職等に留まっている。
著者
袰岩 晶
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.180-195, 2001-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
17

本稿は, M.ホルクハイマーの批判理論における理論概念を明らかにすることによって, 社会理論の「存在被拘束性」と「再帰性」によって生じる問題に答える試みである.理論の存在被拘束性とは, 社会理論が理論主体の社会的立場に制約されていることを意味し, 逆に, 再帰性は, 理論がその理論対象である社会に影響を与えていることを意味している.社会理論がみずからの存在被拘束性と再帰性とを認めた場合, 理論はみずからの絶対性, すなわち普遍妥当性を主張できなくなる.ホルクハイマーは, 絶対性を求める理論を「伝統的理論」と呼んで批判する.一方, かれの主張する批判理論においては存在被拘束性と再帰性の概念を受け入れることで, 理論の作業そのものが一般的な社会的活動の一部分, つまり「理論的実践」であると捉えられ, その理論的実践の社会的機能によって社会理論の意味が判断される.ホルクハイマーにしたがうならば, 伝統的理論は, 個人と社会を物象化し, 支配を維持する機能を有しており, それに対して, 批判理論は, 解放をめざす実践として機能する.存在被拘束性と再帰性の概念を受け入れた社会理論の可能性がホルクハイマーによって示されるのである.